「うわぁ〜っ一杯いますねぇ〜」
試合会場となっているテニスコートに着くとは声を漏らした。
「まぁ、ここらへんの学校が一気に集まるからな」
「そんな大きな大会なんですか?」
「おいおい…」
驚いたように大きく目を見開いたに神尾は苦笑し、伊武は無言
で小さく肩をすくめた。
「まぁ、な…えっと…そうだっバスケで言うIH予選って感じだな
」
「へぇ〜」
それは中学じゃなく高校ですけどねぇと内心思いつつ、神尾の言葉
にようやくこの場がどのようなものであるか理解し、はもう一
度コートの方を向き直る。
大会の重要性がわかると先ほどより周りが輝いて見える。
「すごい大会なんですねぇ」
フェンスの向こうで行われている試合のボールを目で追う。
「…で、これからどうするの?俺達行くけど」
目の前の試合に夢中になるに伊武は呆れたように声をかける。
「あっそうですねぇ…もうちょっとこの試合見てから友達探そうと
思います」
「…友達?」
ほんの少し怪訝そうな顔をする伊武。
「えぇ。友達、と言うか幼馴染…かな」
「へぇ〜…ソイツってテニス部なのか?」
「はい」
「…別に俺たちを応援に来たってわけじゃないんだね」
「もちろん伊武さんや神尾さんも応援しますよっ」
ぼそっと呟かれた伊武の言葉にわたわたっと慌てる。
「…じゃ。2試合後Cコートだからね」
スタスタと歩き出す伊武。
「え?伊武、さん?」
何のことか分からず訊きかえす。
伊武は足を止め、振り返った。
「見に来るんでしょ?試合…せっかく教えてあげてるのに。本当鈍
いって言うか…」
「あ、あぁ〜っ伊武さん応援しますから頑張ってくださいね」
ブツブツとぼやきだした伊武を見て、慌ててとりなそうとする
。
「…別に君が来なくても勝つけどね」
ふっと視線をそらし、ぽつりと言う伊武。
「…で、ですよねぇ〜」
固まる。
隣りで神尾は肩を震わせている。
が無言で神尾を睨みつけると、神尾は何とか笑いを納めぽんっ
との肩を叩いた。
「まぁ、適当に試合見てりゃ時間なんてすぐ過ぎるさ。それに杏ち
ゃんにお前が来てること伝えといてやるからさ」
そしたらきっとお前と一緒に試合観戦してくれるさ、という神尾の
言葉にの目がきらきらと輝きだす。
「あっ友達いるならその子と試合見るか?」
「いえ、たぶん試合出てるんで」
「そっか。じゃ言っといてやるよ」
「はい。お願いします」
「あっれぇ〜じゃん」
名前を呼ばれ、は振り返った。
神尾と伊武も同じように振り返る。
そこには見慣れない男子が3人こちらを見ていた。
そのうち2人は見慣れた運動服を着ていたので同じ学校の人間だ、
とにはわかった。
1人派手なシャツを着た少年が言葉を続ける。
「何やってんだよぉ〜、お前。こんなところで」
「堀尾君知ってる子?」
彼の横にいた少年がそう尋ねると派手なシャツを着た――堀尾、と
呼ばれた少年はまあな、と返事をした。
「…誰?」
少年を指差し、伊武が尋ねる。
「…さぁ?」
は少し間をおいて小さく首をかしげた。
「おいおい、隣のクラスの堀尾だよ。体育一緒じゃんか」
ガクッと肩を落とす堀尾の後ろで他の2人は苦笑いを浮かべていた
。
「あ〜…」
そう言えば、どこかで見たような気も、しなくない。
は堀尾から気まずげに視線をそらした。
「そっか。ごめん。堀尾君。そうそう、隣のクラスの堀尾君だよね
…」
「…絶対分かってないよね」
ごまかすように引きつった笑みを浮かべるの後ろで伊武が小さ
く呟いた。
ピシッと空気が凍る。
「そ、そんなことないですよ」
ひきつった笑みを浮かべ訂正する。
「…嘘、バレバレだぜ」
神尾の言葉にピシッと再び固まる。
「じゃ俺達行くから」
そう言って荷物を持ち直す伊武。
「えっ?」
「えって俺達試合あるし、そろそろ部活で集まってる頃だし…いつ
までも一緒にいられるとか思ってたわけ?自己中心的っていうか、
人の都合って考えないのかな」
ブツブツとぼやきだす伊武。
の横で1年Sが固まる。
「あ〜もう、すみませんでした、ご迷惑をおかけしました。テニス
コートまで連れて生きてくださってありがとうございましたっ」
半分やけになりながら言う。
「…ほんとに感謝してるわけ?誠意が見えないよ」
「うぅ…」
涼しげな表情の伊武とそんな伊武に恨めしげに視線を向ける。
「あ〜…、同じ学校の奴に会えたんならもう安心だろ。行こうぜ、
深司」
不毛な話を遮るように神尾は2人の間に割って入る。
「Cコートだから。忘れないでよね…忘れそうだな。忘れるよね。
俺たちのことなんでどうせどうでもいいんだろうし。って言うか、
ぼぉっとしてそうだし、後で笑ってすみません、忘れてましたとは
言いそうだよね」
スタスタと歩き出しながらブツブツという伊武。
「わ、忘れませんってば」
はその背中に向かって叫んだ。
神尾は苦笑いを浮かべている。
「ん、じゃ応援に来いよな」
そう言って軽く手を振り伊武の後を追って走っていった。
「訳わかんねぇな、お前の知り合いって…」
の横で堀尾が小さな声でボソッと呟いた。
(fin)
20040507
■戻■