「うわれ?」
はきょろきょろと周りを見渡す。
試合会場である四季の森運動公園まではバスですんなり来れたものの、にとってはその先が長かった。
テニスコートを探し、公園内をさまよう。
「うぅ〜ん…ここ、さっきも通ったよねぇ…」
ポリポロと人差し指で頬をかく。
「あ〜…もしかして、いや、もしかしなくても…」
ぼそっと呟く。
「迷った?」
またか、と小さくため息をついて、は携帯を取り出し時間を確認する。
「ん〜…試合直前に、電話するわけにはいかないよねぇ、流石に。…あ〜、試合まであと10分かぁ。もう試合間に合わないかもねぇ〜…。ごめん、桃ちゃん。もとい、スミマセン、桃城先輩」
は携帯に手を合わせる。
「もう少し、探してみよ…」
小さくため息をつき、は携帯をバックにしまうと再び歩き出した。
「あれ〜?じゃん」
少し高めの声。
ばっと後ろを振り向く。
「あっ…」
「よぉっ久しぶり」
大きく手を上げる神尾。
その横にはいつものポーカーフェイスの伊武。
の顔がみるみるうちに明るくなっていく。
「神尾さん、伊武さん、お久しぶりです」
2人に駆け寄る。
その顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「ははそうしてりゃ、一応女に見えるじゃん」
「…それ何気にひどいです。神尾さん」
Tシャツにジーンズ…はいつもと同じだが。いつもお団子にまとめられ帽子に隠されている髪はおろされ、肩より少し長い髪は風になびいている。
「…相変わらず無駄に大きいね、君は…見下ろされるのって気分悪いんだよね。見下されてる感じ。何かむかつくよね」
「…」
ぼやく伊武に冷や汗をたらし、引きつった笑みを浮かべる。
必死で相手は先輩だっと自分に言い聞かせる。
「…相変わらず無駄に元気だし」
「はい。それだけが取柄ですから」
最後にボソッと付け加えられた言葉には何とか笑顔で、できうる限り明るく答える。
「…別に褒めてないんだけどね」
「うっ…お2人とも、相変わらずですね」
ははっと乾いた笑いをこぼす。
「お前もな」
「…だいたいさぁ、たった数日で変わってても嫌だよね」
3人笑いあう。
「ん、で、なんでお前、こんなところにいるんだ?」
神尾が人懐っこい笑顔でに尋ねる。
「あっ応援に。神尾さんも伊武さんも大会に出場するんですよね?応援しますから。頑張ってください」
にっこりと笑う。
「…でも僕らもう試合終えちゃったんだけどね」
ふぅっと小さくため息をつく伊武。
「えぇっ。そうなんですかっ!?」
ショックを受ける。
さっき一試合終えてきたんだよね〜とぼやく伊武の言葉を聞いて、泣きそうな顔で神尾に確認を求める。
「あ、あぁ〜…でも勝ったから次の試合もあるし、…次は応援してくれよ。な」
コレでも飲んで元気出せ、と神尾は持っていたスポーツドリンクをに渡した。
「…すみません…ありがとうございます」
神尾や伊武の試合を見逃したことがよほどショックらしく落ち込む。
「…行くよ」
歩き出す伊武。
「えっ」
「おい深司」
慌ててその後を追いかける2人。
「行くんでしょ、テニスコート。…大体君のことだから迷ってコートが分からず彷徨ってたんだろうね。案内してあげようって言うのに何ぼぅっとしてるわけ?同じ学校でもない君を案内してあげようなんて本当、俺って親切だよね。あぁお礼言ってくれてもかまわないよ。当然のことをしてるだけだけど」
「ありがとうございます。伊武さん」
ブツブツと言い出した伊武には慌ててお礼を言う。
スタスタと早足だった伊武の歩調がほんの少し遅くなり、神尾とは追いついた。
3人は並んで歩き出す。
「あっあの、杏ちゃんは…?」
普段彼らと一緒の彼女の名を出す。
「あぁ。来てるぜ」
嬉しそうに答える神尾。
「…君ってさ、二言目には杏ちゃんだよね」
やれやれ、と肩をすくめる伊武。
「だって伊武さんと神尾さんには1週間くらい前に会いましたけど杏ちゃんとは10日近く会えてないんですよ」
ぷぅっと頬を膨らませる。
神尾はそれを見てぷっと吹き出した。
「本当、お前って杏ちゃんびいきだよな」
「だって杏ちゃん素敵じゃないですか」
面白そうに笑う神尾には力説する。
「ん、だよね」
あれ…?
神尾の目がとても優しく見えた。
が瞬きをしているうちに神尾の表情はいつものものに戻っていた。
見間違いだったのかな…?
はもう一度神尾に視線を向ける。
「ん?どうしたんだ?」
変な奴だな、と笑う神尾。
やはりいつもと変わらない。
内心首を傾げる。
「…何してんの?行くよ」
数歩先を歩いていた伊武の声がかかった。
「ほら、ぼけっとしてんなよ、行こうぜ」
神尾に軽く背中を押され、は歩調を早めた。
20040303
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