『お疲れ様でした!』



ようやく部活を終える。

まだ日が長いとは言っても、いえにつく頃にはあたりは暗くなっているだろうと思い はハンドタオルを口元に当てて小さくため息をついた。



「ちょっと、さん」

何故かテンションの上がっている部員に入り口付近を指差され、 は視線をそちらへと向ける。



「跡部っ!」

まだ部員の残るテニスコート。

とっくに終わった女テニのコートの横に1人の男が立っていた。



「ほら、早く行きなって。片付け変わってあげるからさ」

肩を軽くポンっと叩かれる。



「あ、ありがとう」

去り際に軽く頭を下げる

彼に向かって走っていく時に視線の片隅にひらひらと手を振っている彼女の姿が映った。



「跡部」

コートの隅から隅に駆け抜けたので、少々息がきれる



「どうしたの?何かあった?」

普段こんな所にくる事が無い跡部がいる事を疑問に思い尋ねる

が跡部の元に行く事はしょっちゅうだが、跡部から の元に来ると言う事はまずない。



一度だけ、関東大会を終えたあの日。



その時だけ跡部の方から、部活に出ていた の元に来た。

普段とは違う跡部の行動が を不安にさせる。



また何かあったのだろうか?



と。



「…おせぇ」

小さく呟かれた跡部の言葉。



「え?」

よく聞き取れず聞き返す



「おせぇんだよ」

明らかに不満だ、という風の跡部。



「この俺を待たせるだなんていい度胸してんじゃねぇか」

"あぁん?"と言う口癖を口にして跡部は の顔を覗き込むように見る。



「あ、ごめん」

跡部の"あぁん?"を聞くともうすでに謝る事が条件反射となってしまっている はおとなしく謝罪の言葉を口にする。

しかし、大して動じる様子は無い。



「本当に悪いと思ってんのかよ…まぁいい。とっとと着替えてこい」

しっしと を追い払う仕草をする跡部。



「え?」

戸惑う



「…もう遅いしな…俺様が送っていってやろうって言ってんだ。ありがたく思え」

一瞬口篭った様な感じもしたが、後半はいつもの様に戻ってフンッとふんぞり返る跡部。

今までにない跡部の言葉に大きく目を見開く



「…嫌ならいいんだぜ?」

に背を向け歩き始める跡部。



「待ってっ!」

慌てて呼び止める

歩き出した跡部がぴたっと歩みを止める。



「すぐ着替えてくるから、すぐ。だから待っててね」

はそう言うと部室へとまた駆けて行った。



「早くしろよ」

は背中越しに跡部の声を聞いた。

は更衣室に駆け込むと急いで着替え始めた。

周りの部員たちがあの後跡部と何を話していたのか気になってチラチラと の方を見ているのが分かっていたが、いまの はそれどころではなかった。

急いで着替終えた だったがふとその手が止まった。















1年前の男女合同合宿の時、跡部に告白をした。



入部したテニス部。



いつも隣のコートで一際綺麗なファームでボールを打つ跡部を目で追う様になって。

それから、自分の好きという感情に気付くまで時間はかからなかった。

告白した時も…好きとかそんな感情は分からないと言われて、ダメなんだって思ってた。



でも後に続いたのは跡部らしい。



「とりあえず、俺の傍にいろよ。いつも傍にいるなら考えてやらないこともないぞ」

って、いかにも俺様的答え。



にはそれで十分だった。

一緒に居られるだけで…。



…でも、次第にそれだけでは満足できない自分も出てきている?

これでいいって思ってたハズなのに…。

最近、 は無性に跡部の気持ちが知りたくて…欲しくてたまらなくなっていた。





はフゥっと小さくため息をつく。

そしてはっとしたように今すべき事を思い出して、慌てて荷物を鞄に押し込むと部室から飛び出して行った。





一方跡部。



「早くしろよ」

駆けて行く にそう叫んでコートのフェンスの所に跡部は身体を預けた。





アイツと… と付き合い始めて約1年。



2年の合宿中呼び出されて、アイツから…。

そのときは好きとか分からねぇと言った。

正直、他人に興味ねぇし、どうでもよかったんだ。

所詮、人は離れていくものだ。



親だろうと、何だろうと。



けど、必至なアイツを見ていたら…もしかしたらこいつならと思ったんだ。

いろんなトコ遊び行って、何にでも頑張るアイツ見てて…。



気が付いたら、ちゃんと好きになってた。

この気持ちが¨好き¨って事か。

悪いもんじゃねぇかもな、こういうのも…って。

まだ、ちゃんと伝えた事ねぇけど…。



忍足に言ったらあの野郎思いっきりこの俺様を怒鳴りつけやがった。

「お前アホか?女にはちゃんと言葉にしたらなぁっ!男ならバシッと一発言ったれやっ!不安になるやろ、彼女」

忍足の言葉を思い出し、跡部は小さくため息をついた。

あの時は頭にきて思わず忍足の足を蹴飛ばしたが、…今改めて考えると妙に納得してしまう自分がいる。















「…そう言うもんなのか…?」

「何が?」

いつの間にか声に出てしまっていたらしい。

声がした方をバッと向く跡部。



「げっ!?てめぇいつからそこに!?」

跡部の横にはいつの間にやってきたのか の姿があった。



「今着たばかりだけど…ど、どうしたの?」

らしからぬ跡部の大声にたじろぐ



「な、なんでもねぇ!ホラ、行くぞっ」

跡部は追求される前に歩き出した。



「あっ待ってよ…!」

は慌ててその後を追った。





暗い帰り道。

所々にある外灯が桜を照らしていた。



「は〜…」

大きくため息をつく



「何ため息ついてんだよ」

「今日も部活ハードだったなぁと思って」

「ちっあんなんでハード何て言ってりゃ世話ねぇな」

フンッと鼻を鳴らす跡部。



「うん!…ねぇ、跡部」

意を決し、は跡部に声をかけた。



「あ?」

「…何か、あった?」

「…別に何もねぇよ」

「…そう」

そこで会話が途切れた。





「…今日はありがとう」

もう少しで の家につこうと言う所で の方がようやく言葉を発した。



「な、何だよ急に」

「…送ってくれて」

「あ、あぁ…」

歯切れの悪い2人の会話。



「…ごめんね」

ぽつりと発せられた の言葉。



「…おい」

やや後ろを歩いていた の方を振り返ろうとした瞬間、跡部は暖かい感触を背中に感じた。



「…ごめん。ちょっとだけ。すこしだけでいいから」

かすれるような の声。



「…」

跡部は の腕を振り解こうとはせず、そのまま大人しくしていると、背中から回された腕と、押しつけられた頭の重みが強くなった。

跡部はぐいっと腕を引き寄せて を自分の方へと向けた。

そのまま跡部は を腕の中へと収める。



「…俺は、ちゃんと、お前のこと好きだからな」

途切れ途切れだが、耳元でそう囁かれて は跡部の胸に顔をうずめたまま目を見開いた。



「…チッ」

舌打ちする音と伝わってくる心臓の音。

はふっと笑みをこぼした。





(Fin.)















反省文

跡部夢いかがだったでしょうか ?
この前に1つ書き終えたのですがあまりにアダルティーになってしまいましたので書き直しました。
結果、跡部様であって跡部様であらず…という感じになってしまいました。
跡部様は家庭が色々複雑と言うのが私の中のイメージです。
故にあんな俺様になってしまったのでは無いかと思うのですよ。
…ごめんなさい、妄想です。
跡部様の回想場面の押したりの台詞の関西弁は私のイメージです。
正確なものではありません。
なんちゃって関西弁です。
間違っているかと思いますが、あくまでイメージなので…。
読んでいただきありがとうございました。
感想なぞいただけると嬉しいです。

2003.9.6










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