「いっくよー」

「あっ」



夏が終わる前、しまわれる前にと雪とその友達はビーチボールを使ってバレーをしていた。

それまでは楽しく遊んでいたのだが、雪が打ったボールが風に流されてしまった。

ボールはそのまま大きな家の柵を越えていったしまった。



「どうしようちゃん…」

泣きそうな顔で言う友達。

そんな友達の顔を見て、も困ったという顔をしたが、すぐに何かを決心したように両手を胸の前できゅっと握り締めた。



「大丈夫。あたし取ってくるから」

「えっでも…」

「ちょっとそこで待っててねぇ〜」

「待って、ちゃん。駄目だよぉ」

止めるのも聞かずには柵の下をくぐって家の中へと入って行った。



「どこにいちゃったのかなぁ…」

はキョロキョロと辺りを見回しあちこち探したがなかなか見つからない。

それどころか沢山木が生えた森のような庭はには広すぎて、どちらから来たのか分からなくなってしまった。



「どうしよう…」

あちこち歩き回って、は次第に心細くなってきた。

と、突然茂みの向こうで何やら音が聞こえた。

びくっとの体が大きく震えた。



はおそるおそる、ゆっくりと茂みに近づき向こう側をのぞいた。

そこには小さな背中があった。

自分と同じくらいの年齢の子がしゃがみこんでいる。

…どうやら泣いているらしい。



「どうしたの?どこか痛いの?」

は茂みを抜けて、その子に声をかけた。

顔をうずめたままその子は左右に首を振った。



「じゃ、どうしたの?」

はその子の顔を覗き込むようにしゃがみこんだ。

肩がかすかに震えている。



「よぉし、よしよし」

は自分が泣いた時にお父さんがやってくれるようにその子の頭を撫でた。

突然感じた頭への感触に驚いたのだろうか、顔をうずめていたその子が顔をあげ、の方を見た。

は撫でていたその手を慌てて引っ込めた。

その目のふちが赤く染まっていた。



はにっこりとわらうと、再びその子の頭へと手を伸ばし、その子の頭をなでた。

今度はその子もじっとしている。

されるがまま不思議そうにの方を見ていた。



「一緒に遊ぼう」

がそう言うとその子は一瞬と惑ったような顔をしたが、すぐに満面の笑みを顔いっぱいに浮かべた。















「起きたか?」

机に向かっていたのだが、の気配を察したのか、跡部が後ろを振り向いた。



跡部と一緒に勉強をしていて、いつの間にか寝てしまったらしい。

昨夜遅くまで起きてたからなぁ〜などと考える

机に向かっていたはずがいつの間にかベッドに横になっていた。



「…うん」

いまだぼぉっとした頭で頷く

その後じぃ〜っと跡部の顔を見るめる。



「何だ?」

怪訝そうな顔をする跡部。



「昔は可愛かったのになぁ〜と思って…」

小さくため息をつく



「何言いてんだ?」

むっと不機嫌そうになる跡部。



「…どこで育て方間違ったのかなぁ〜と思って…あたしが転校する時とか"ちゃん行っちゃ嫌だぁ〜"とか言って泣いてくれたのに…数年たった戻ってきたらすっかり俺様化してるんだもんなぁ」

やれやれと言うように肩を竦める



「別にお前に育てられたわけじゃねぇし、そんな昔の事持ち出すんじゃねぇよ。人間成長すりゃ変わるに決まってんだろ?お前だってあの時のままってわけじゃねぇだろうが」

「そりゃそうだけど…」

明らかに跡部の機嫌を損ねてしまったと感じたは話題を切り替えようと跡部の服に目を移す。



「まだ制服着たままだったんだ…。あたしが寝てる間に着替えればよかったのに」

制服姿の跡部にはそう言った。



「いいんだよ、別に」

憮然と偉そうに言う跡部。



「別にって…制服ってかたっくるしいっていつも言ってるじゃん。遠慮いらないからさ、着替えてきなよ」

跡部が遠慮などするはずもないと思いつつ、はそう言った。



「客が気てるのに自分だけ着替えるなんて事はしねぇんだよ」

ふんっと鼻を鳴らす跡部。



「…跡部らしくない。そんな人を気遣ったような言葉」

つい正直な意見が出てしまったらしい。



「てめぇは俺のことなんだと思ってんだ」

また機嫌を損ねてしまったようだが、もう引けない。



「俺様、跡部様」

キッパリと言い放つ



「…とにかくいいんだよ。お前が制服なのに、俺が着替えてたらなんか変だろうが」

跡部は一瞬はとが豆鉄砲を食らったような顔をしたが、眉間にしわを寄せた。



「そう?」

内心冷や汗を書きつつ、表向きは全く気にしていないという風を装う



「…ちっ」

舌打ちをすると、跡部はに背を向けてしまった。

跡部が机に向かった後、は再びベッドへと倒れこんだ。

大きなベッド。

思いっきり手足を伸ばしてもまだゆとりがある。

大の字になって天井をしばらく眺めていたが、はくるっと身体を返し、寝転んで頬杖をついて跡部の後ろ姿へと視線を移した。



「…」

黙ったまま、ただ跡部の背中へと視線を注ぐ。

もうすでには勉強する気など失せていた。

一緒に勉強しないのであれば、静かにしていないと、いつも彼は「あぁん?」と喧嘩をうるように睨んでくるから。



気兼ねなく跡部の元へ来れる様になって2ヶ月ちょっと。

跡部はそんな事気にする様子も無く机に向かったままでこちらに顔を向けるなんて事はないが。

それでもただ、こうしてここにいられることが嬉しくてはベットのシーツを剥がし、ぐるぐると巻きついた。



昔は起きて、遊んで、いつも一緒だったというのに。

距離を置いてしまった数年間は思っていた以上に彼を変えてしまったらしい。

今の彼は知らないことだらけだ。

きっと隠れている事はまだまだあるだろう。

最近知る事ができた事の1つとして彼にも彼の時間があるという事。



跡部はいつ声をかけても「部活だ」とか「忙しい」と言うから毎日毎日部活尽くしだと思い込んでいた。

だが、いくら強豪、厳しい部活といっても中学生がそんなに部活尽くしになるはずも無く、ちゃんと部活がない日というのが存在したのだ。



例えば、今日のように部活が無くちゃんと勉学に励む時間とか。

1人机に向かい始めたふと跡部が振り返り、びくっとして固まった。



「お前、ずいぶん静かだな」

人を斜め上から見下ろすような態度。



「静かにしてるっかないじゃん。跡部勉強してんから」

昔はほんと、可愛かったのに…と身欄がましく思いつつ跡部を睨みつける



「そのうち続かなくなると思った」

御丁寧にその後、お前が静かなのは不気味だ、と付け加える跡部。



「だってうるさくしたら追い出すって言うし」

段々小さくなるの声。



「そうだな。追い出す口実がなくて困る」

意地の悪い笑みを浮かべる跡部。

どうやら先ほど子どもの頃の話を出した仕返しがしたいらしい。



「私のこと邪魔にするわけ?」

「お前がいると集中できないだろ?」

跡部は椅子から立ち上がり、が寝転がってる横に座る。

急に近くにこられて、の心臓は跳ね上がった。



「静かにしてても後ろに気配がするからな」

上から挑戦的な目を向ける跡部。



「気配まで消せっていうの?」

この後の跡部の行動を察しての体が固く緊張する。



「…もういい。やはり一人でないと勉強なんかできるわけないしな」

跡部はそのままうしろにばたんと倒れる。

の横に跡部の顔が近づく。

跡部はの上に覆い被さるようにしてのあごに手を置き、何度もキスして、それからすごく熱くて長いキスをした。

は跡部のするがままにさせておく。



とろけそう、毒のように身体を蝕んでいく。

跡部は醒めた目でこっちを見上げてる。

急に跡部は身体を起こしてをベッドに組み伏した。



「俺に美技に酔いな」

低く耳元でそう囁かれた。






すごい脱力感でベッドに転がったまま、さっきの快感を反芻しながら天井を見つめる。

ふと見るとなんと跡部はもう服を着ていた。



「なんでそうクールなのかな…跡部は」

「お前のように隙だらけではやっていけねぇんだよ」

「いいんじゃん別に。今ここには跡部とあたしだけなんだから…」



のその言葉を聞いて跡部はふっと笑みをこぼして、軽く触れるだけのキスをした。





(Fin.)










反省文

いかがだったでしょうか…?
笹間にしては珍しいアダルティを匂わせるものとなりました。
恐るべし跡部。
あのセクシーな声とほくろは伊達ではありません…。
子どもの頃可愛かったのになぁ〜みたいな幼馴染みとの話にするはずが…。
跡部フェロモンに毒されました。
「美技に酔いな」と言わせたいと思ったばっかりに…
跡部マジックです。
これ、乗せるの3日ほど悩みましたが結局乗せちゃいましたよ…。
個人的には不特定多数の方が読まれるので…友人もこのHP知ってるのもいるし…あまりアダルティーなのは控えたいと思っているのですが…。
うぅ〜む…
実は直接表現あったのですが…削りました。
せめてもの…うぅ…
読んでいただきありがとうございました。
苦情は受け付けませんが、感想くださると嬉しいです。

2003.9.6










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