心地よい日差しが差し込むある冬の日。
氷帝学園男子テニス部部室。
奥のソファーにふんぞり返っている跡部。
窓際ベンチで日光を受けながら惰眠を貪る芥川。
ロッカー横の壁に身体を預けたたずむ滝。
部室の中心にある机に座っている日向。
その横の椅子に座り机に頬杖をつくのは忍足。
日向・忍足とは机をはさんだ反対側に背もたれを前に椅子にまたがるように座り、鳳にコントロールについて説教…もとい指導をする宍戸。
彼らが引退する前と同じ、彼らの位置。
そんな中、机に向かい書類をまとめる元男子テニス部マネージャー・。
「お〜い、鳳お茶〜」
「えっあっはい」
日向の注文に紅茶をいれる鳳。
「鳳君、そんなことしなくてもいいわよ」
これ見よがしに大きくため息をつく。
「…アンタ達引退した身でこんなトコで何やってんのよ。宍戸…は一応後輩指導してるみたいだけど、他邪魔」
地の底からわきだつような低い声ではそこにいる元部員達を睨みつける。
引退したくせにいつまでここでのさばってるのよ、とブツブツ文句を言いながら部員名簿をまとめていく。
「お前だって引退した身だろ?何でこんなトコにいんだよ」
口元に笑みを浮かべ跡部が尋ねる。
「…」
跡部の言葉に俯きふるふると震えだす。
はちらっと一度跡部に視線を向けた後、そこにいる面々とはかかわらず淡々と着替えをしている人物を思いっきり睨みつける。
「日吉、がどうかしたのか?」
の険しい視線の先をたどったあと日向が訊ねる。
はその言葉にキッと日向に鋭い視線を向ける。
日向はひくっと口元を引きつらせ、少しでもその目から遠のこうと後ろに身体をそらした。
バンッと机を叩く。
「そこの新馬鹿部長がマネージャー全部辞めさせやがったのよっ」
ビシッと左手で日吉を指差し、右手で日向の胸元をつかむ。
「どうしてこの部はこう馬鹿部長ばっかなのよぉぉっ」
「…オイッ」
眉間にしわを寄せる跡部。
跡部を気にすることなく叫びつつける。
「馬鹿部長のおかげで監督に私だけ引退延ばせって言われッちゃったのよ〜っ!」
「うをっ!!」
怒りのままに日向の身体を前後に揺さぶる。
「あの榊監督に呼び出されて直接、よ。直接言い渡されたのよ。私に断ることが可能だと思う。あの榊監督に言われたらアンタ断れるっねぇ!?」
「落ち着け…。怒りの矛先向けるんは岳人とちゃうやろ」
の剣幕に押されつつも恐る恐るながらなだめる忍足。
忍足の言葉にはフーッと威嚇する猫のように怒りをあらわにしたまま日向を解放する。
「どうどう」
「忍足っ私は馬かっ」
ぎゃいぎゃいと騒ぎ出す忍足・日向・。
「で、お前なんでそんなことしたんだ?」
滝が横での喧騒を気に留める様子なく静かに日吉に尋ねる。
「仕事の効率が悪すぎたんで」
日吉は悪びれる様子もなく涼しげな顔で着替えを続ける。
「ふ〜ん。なら、仕方がないよね」
滝は静かに頷き興味なさげに視線を窓の外へと向けた。
「まだまだ甘いな。有能なマネージャーをつけるのも部長の力量だぞ」
ふんっと鼻を鳴らす跡部。
「…そう言や、1年の時野球部のマネージャーやってたを無理矢理引き抜いたのって跡部だったよな」
それまで黙っていた宍戸が口を開いた。
「えぇっ!?先輩って野球部のマネージャーだったんですか!?」
驚きの声を上げる鳳。
「そうよ…なのに、この馬鹿部長がッ」
今度はびしっと跡部を指差した後、余裕たっぷりの跡部の笑みを目にしてうわぁぁん、と机につっぷす。
「…無理矢理って何したんですか?」
戸惑いながら宍戸に尋ねる鳳。
「あ、あぁ…」
居心地悪そうに視線をそらす宍戸。
にやり、と笑う跡部。
「引き抜いたなんて穏やかなもんじゃないわよ」
は疲れたようにため息をつき肩を落とした。
「…毎日毎日、取り巻きの女子を引き連れて部活前にやってきて跡部コールさせて、部員の士気下げまくってね」
「…」
「部員の彼女たちもどういうわけか跡部シンパにされていって…」
「…」
「当時の部長に泣いてテニス部に行ってくれって言われたのよ」
ふぅ〜…と遠い目をする。
「…そ、そうだったんですか」
鳳はもはや引きつった笑みを浮かべるほかできることはなかった。
「うちの部は大所帯だからな、それなりに仕事できる奴がいねぇと練習に集中できねぇだろ?」
はっはっはと笑う跡部には諦めたように大きくため息をつき再び部員名簿の整理を始めた。
20040216
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