「あはははははっ。おかしー。絶対みんな勘違いしてるよ」

誰もいない屋上に着くと、彼女はせきを切ったように笑い出した。



「…」

神尾は苦虫を潰したような顔をしている。

ひとしきり笑って満足したのか、ひーひー言いながら彼女は少しずつ呼吸を整えた。



「で、今度は何の嫌がらせだよ?

彼女が言葉を発することができるくらいになったのを見極めた神尾が口を開く。

温和な彼らしからぬとげを含んだ声。



「嫌がらせだなんて人聞き悪いなぁ。テニスのみの寂しい青春を送るアキラ君にオネエサンがせめて華を添えてあげようっていう演出だったのにぃ」

コレで私達は噂の2人だ、とくすくすと笑いながらが言う。



「余計なお世話だ。お前となんか願い下げ」

「そうだよね、やっぱ杏チャンくらい可愛い子の方がいいよねぇ〜」

ニヤリと笑みを浮かべる



「…」

ん?と怪訝そうな顔をする神尾。



「可愛いよねぇ〜杏ちゃん」

「ってなんで杏ちゃんの事知ってるんだよ!?」

と面識のないはずの少女の名に神尾は動揺をあらわにする。



「あんまり可愛いから転校してきてすぐにナンパしたの」

一緒にお茶しちゃったぁ〜いいでしょ、と語尾にハートか音符を飛び交わせているような調子で言う。

憮然とする神尾を見てまた笑いがこみ上げてきたらしくは再び笑い始める。



「で、何だよ」

問いただしたいことはたくさんあったが、このまま彼女のペースに巻き込まれてはダメだ、とやや険しい顔を作り本題に戻す神尾。



「ごめんごめん」

「笑いながら謝っても全然謝ってるように受け取れねぇよ」

神尾の目が段々険しくなってくるのを見ては慌てて口をつむぐ。



しかし、箸が転がっても面白いお年頃。

笑い始めたら止まらない。

への字になった口がかすかに震えている。

神尾は大きくため息をついた。



「アキラ君、ごめんって」

許せ、と両手を顔の前で合わせる

神尾はやれやれというように軽く肩をすくめた。



「今度杏ちゃんとデートするときはちゃんと神尾君っていい奴だよって言っといてあげるから」

「んなことするなっ!」

懲りないに神尾が怒鳴る。

それを見てはふっと笑みをこぼした後、先ほどとは違い真剣な顔になって神尾を見る。



「ま、アキラ君で遊ぶのはその辺にして、本題行こうか」

急に変わったの態度に戸惑いつつも、神尾は口を閉じる。



「この前の話、受けたげる」

「えっ?」

何のことかと聞き返す神尾。



「ミクスドの話。私受けたげるよ」



「本当か!?」

神尾はがしっとの両肩をつかむ。

は神尾の力にほんの少し顔をゆがめたが、の手を振り払うことなくそのまま言葉を続ける。



「私、アキラ君に冗談は言うけど嘘はつかないよ」

神尾の顔をまっすぐに見つける





「正直誘ってくれて嬉しかった。こんな機会でもなきゃ、きっとこの先もあの場所に立てないと思うし」

は俯き神尾の制服のすそをきゅっとつかむ。



「…」

「…しばらく本格的にテニスなんてやってないから、どこまでできるかわかんないけどやれる限りのことはやるから」

神尾はから肩から右手を離し、頭の上にもって行きぽんぽんと軽く撫でる。



「あぁ。頑張ろうな」

神尾が優しくに微笑む。



「…ん」

が頭をこつんと神尾の肩に頭を乗せた





ガチャ。





「「あっ…」」

神尾もドアの向こうにいた人物もその場でぴたっと固まる。



のおでこは神尾の肩に。

神尾の右手はの頭に。

屋上のドアの向こうには

顔を赤らめた石田と呆然と口を開いている桜井。



「「…」」

神尾の肩に顔をうずめている以外はしばしお互い顔を見合わせて固まる。



「…何してんだ?」

ぽつり、と最初に言葉を発したのは桜井。



「なっ」

慌ててから離れるようとする神尾。





しかし





「神尾君っ」

神尾が離れるより早くがぎゅっと神尾に抱きつく。



「な、なななな何すんだ!?」

慌てる神尾。



「分かってるくせに」

はしがみついたまま神尾を見上げにっこりと微笑む。

神尾の背中に回った腕の力が強くなる。



っお前ッ!」

「…邪魔しちゃ悪いから」

扉を閉める石田。



「誤解だぁぁ!!」





ガチャン。






神尾の叫び空しく、扉は閉じられた。

後には呆然と立ち尽くす神尾と笑い転げるの姿。



「あははははは」

堰を切ったように笑い出す



「…〜」

きっとをにらむ神尾の視線に気づき慌てて笑いを治めた。

だが、完全には抑え切れないのか口元が微妙にゆがんでいる。



「…」

そんなを無言に睨みつける神尾。



「ごめんごめん」

「…本気で謝ってるようには見えないよ」

「ごめんって…そんなことより早くタチバナ君に知らせたら?無事3人目のミクスド見つかりましたって。きっとタチバナ君、アキラ君のこと褒めてくれるわよ」

大きくため息をつく神尾に慌ててとりなす

橘という言葉にぱっと反応する神尾。



「なかなか見つからなくて橘さんも元気ないって言ってたじゃない。朗報を早く教えてあげなさい。あっ今日練習前に迎えに来てくれる?初めてでちょっと心細いから」

「あぁ分かった…ありがとう

笑顔で駆け去る神尾をはひらひらと手を振って見送った。

その口元にはにやり、と怪しげな笑みが浮かんでいた。















放課後。





「橘さ〜ん」

コートに神尾の声が響く。



「あっ」

ネットを張る石田が小さく声を漏らした。

その声に神尾が顔を上げる。



「どうした?石田…ってあぁ!!」

桜井がコートに入ってきた神尾、と連れ立って現れた人物を指差して叫んだ。



「橘さん」

そんな2人を気にすることなく橘に駆け寄る神尾。



「さっき話した3人目連れてきました」

「…あぁ」

神尾の言葉に振り向く橘。



「お前…」

「よろしく、タチバナ君」

にっこり笑う彼女。



「アレ?知り合いですか?橘さん」

小首をかしげる神尾。

にやっと笑みを浮かべる



「秘密…でもアキラ君がヤキモチ焼くような間柄じゃないわよ」

そう言っては神尾に後ろから抱きつく。



「うわっ!?!?!?」

「!?」



驚く面々を尻目には満足そうな笑みを浮かべた。



「…人前でイチャつくのって見てて暑苦しくてウザイよね」

ぼそっと呟かれた伊武の言葉。



「なっ!?深司」

後ろから聞こえた伊武の声に反応し顔だけ振り返る神尾。



「…はいはい杏ちゃんのことは俺に任せてお幸せにね、神尾」

スタスタと表情を変えずに横を通っていく伊武。



「誤解だっコイツは単なる従姉弟だ〜!!」

「え〜っオネエサンこんなにアキラ君のこと可愛いと思ってるのに〜」

神尾の悲痛な叫びとの茶化すような声。

他は呆然とその光景を眺めるしかなかった。





(Fin)










反省文

いかがだったでしょうか?
2.クセモノ アラワルのサイドストーリー(?)です。
ただ管理人が神尾氏をいじめてみたかっただけです。
それだけのために書いたようなお話。
神尾氏はとっても可愛いと思うのです。

200402










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