「…お前最近彼氏できたんだって?」
吉沢の言葉にの身体が一瞬こわばった。
「はぁ…まぁ…」
吉沢に腕を掴まれたまま、なんとか、約1人分吉沢と間を空けて座りなおす。
「誰だよ」
詰め寄る吉沢。
「えっあの…はは」
別に隠すつもりはないが、あまりにすごい剣幕な吉沢から身体を離す。
の頭の中で警鐘が鳴り響く。
少しでも吉沢から身体を離そうと身体をそらす。
「何してんだ?」
海堂がゆらりと2人の背後――のドアから現れた。
吉沢に掴まれたの腕を見て目つきを鋭くする。
「あっ海堂先輩」
嬉しそうに海堂の顔を見上げる。
反対に吉沢の顔は見る見るうちに不機嫌になっていく。
「人のもん手出してんじゃねぇよ」
ふしゅ〜と息を吐き出す海堂。
ほんのりとアルコールの匂いがした。
『もしかして先輩、酔ってる?』
そう思って改めて海堂の顔を見るとその目はかなり据わっている…気がする。
『お酒、飲むようなタイプではないと思ってたんだけど』
そんなことを思いつつ、はじっと海堂の顔を見上げる。
大きく見開かれた吉沢の目が次第に険しくなっていく。
「人のもんって…だったらテメーのもんだって証拠があるのかよっ」
吉沢はの腕を掴む手に力を入れ、はその傷みに顔をゆがめた。
それを見た海堂の目がかっと開く。
海堂は強引に吉沢からの腰に腕を回し、自分の方へと引き寄せた。
の体が一瞬ふわっと宙に浮いた。
海堂はそのまま自分の腕の中に抱え込む。
結果、は後ろから海堂に抱え込まれた形となった。
「な、ななななっ」
いつもの海堂とは違うその行動にパニック状態の。
「証拠、見せてやるよ」
海堂の低い呟き。
「痛ッ」
突然首下に痛みを感じ、は小さく悲鳴を上げた。
「ひゃッ」
痛みの後にそれとは違った暖かいものが首元にふれ、は先ほどとは違った悲鳴を上げた。
かぁぁぁっとの顔が赤く染まった。
海堂は一際赤く染まった首元を吉沢に見せ付けるように、の顔を上げさせる。
「…俺のだ」
の耳元で低い声で海堂が言った。
「もっと見てぇのか?」
海堂の唇は次第に下がっていく。
「か、海堂先輩…?」
かすかに震えるの声。
の顔がどんどん赤くなり、目を見開いて呆然とこちらを見ているの吉沢の姿が、涙で次第にゆがんでく。
「ふぇ…」
はぎゅっと目を閉じた。
海堂の手がの服のボタンへと手が伸びる。
バシッ。
「…まだまだ、だね」
その声と同時にを包んでいた腕の力がふっと抜けた。
の身体が支えをなくし、すとん、と椅子の上に落ちる。
「おいおい、もうちっと穏便なやり方ってのはできないのかよ」
が涙目で後ろを振り返ると、ドアの傍にラケットを片手に肩をすくめる越前と苦笑いをしている桃城の姿。
を捕らえていた手で頭をおさえている海堂は後ろを不機嫌そうに睨みつけている。
海堂の足元にはテニスボールが転がっていた。
「こんなトコで盛ってんじゃねぇよ。おい、大丈夫か?…って泣いてんじゃねぇか」
桃城はがしがしっと頭をかき大きくため息をついた。
「貸し1つな」
そういうと桃城は海堂とには触れずに、吉沢の肩を掴み越前を連れ、部屋の外に出る。
「あと30分で時間切れだからな、責任もって泣き止ませとけよ。他の奴はこの部屋に来ないようにしといてやっから」
そう海堂に言い残して。
パタン、とドアが閉まる。
後には肩をかすかに震わせると、切なげな表情の海堂。
海堂はの横に腰を下ろすと、今度は優しく手を伸ばすと、の頭を撫でた。
「それじゃ〜…お開きとするか」
カラオケから出ると辺りはすっかり暗くなっていた。
桃城の声でみな散り散りに散っていく。
「先輩、大丈夫ですか?」
は心配そうに海堂を見上げる。
「あぁ…」
まだアルコールが残っているのか、それとも先ほどの越前の放ったボールのダメージのせいか、海堂はどこかぼんやりしている様子だ。
「本当に大丈夫かよ、ついてってやろうか?」
いつもの冷やかした笑みではなく、本気で心配そうな顔で桃城が海堂に尋ねる。
「…」
海堂は無言で桃城を一瞥しただけだった。
「あっ大丈夫ですよ、私一緒に行きますし」
越前君、待ってますよと桃城の自転車の横にいる越前を指差し、笑って言う。
「そっか?じゃ頼むな」
桃城はそう言ってに笑った後、ぐいっと海堂の肩を引き寄せ耳元で囁いた。
「…くれぐれも送り狼なんてことはすんなよ」
海堂の目がかっと開き、桃城に拳を繰り出したが、桃城はそれをひらりとさけ、にやりと笑みを浮かべた。
「じゃ、、気をつけろよ〜」
ひらひらとに手を振り、桃城は越前の方へ軽やかな足取りで去っていった。
「大丈夫ですか?」
は桃城に手を振り見送った後、再び心配そうに海堂を見上げる。
「あぁ…」
海堂の応えにはふっと微笑んだ。
「じゃ、行きましょうか?」
「あぁ…」
は1歩を踏み出した。
しかし、海堂はその場から動かない。
「先輩?」
は不思議そうに海堂を振り返った。
海堂は目を細め、の首筋――先ほど自分のつけた赤い痕に触れる。
「痛ェ、よな…?」
小さな呟き。
伸ばした手でそのままをそっと引き寄せた。
先ほどとは違う優しい仕草。
「せ、先輩!?」
慌てるにかまわず、海堂は自分の中にの小さな身体を収めた。
ふわっとアルコールの独特なにおいがまだ海堂からしているのに気づいては
『まだ、酔ってるの、かな』
と、どこか冷静に考える。
海堂は甘えるように頬をの頭に摺り寄せる。
「…先輩、もしかしてまだ酔ってたりします?」
恐る恐る尋ねるに海堂は、
「酔ってねぇ…」
と不機嫌そうに返し、腕に力を入れた。
「でも…」
「お前は、俺のもんだからな」
反論しようとしたの言葉は海堂の言葉によってさえぎられた。
「他の奴に気安く触らせたりすんじゃねぇ…」
「せ、先輩…?」
突然何を言い出すのか、と戸惑う。
「…俺のもん、だろ?」
の目の前には真剣に見返してくる海堂の目。
「…はい」
小さな声で返事をしては、熱をもちだした顔を海堂の胸に隠した。
内心、『照れ屋な先輩がこんなこと言うなんてやっぱり酔ってるんだなぁ〜』なんて思いながら。
(fin.)
反省文
いかがだったでしょうか?
未成年の飲酒は法律で禁止されております。
当然カラオケBOXで未成年のお酒の注文を受け付けられることも――笹間はカラオケBOXで働いた経験ないので何とも言えませんが――ない、と思います。
お題のマムシの牙は…マムシの牙…毒…海堂に毒された彼女…。
もしくは、海堂の牙にとらわれた彼女…。
それがダメなら海堂が彼女に噛み付いた辺りで牙という…ごめんなさい。
こじつけですねぇ〜。
ただ酔うと人が変わる海堂が書きたかっただけ。
『俺のもん、だろ?』
と照れ屋な彼にダメ押しされたかっただけです。
酒が入るとやたら甘えたがりになる某氏を参考にしました。
あくまで参考…甘くなるはずだったし…これ。
普段はまともで見た目怖いのにお酒はいるとかなりの甘えん坊さん。
酔って彼女に擦り寄る姿は身体が大きくても猫系ね。
でも流石にこんなくさい台詞は言わない、とオイラは信じてるよ、うん。
今回の悪役…オリキャラ吉沢…。
こんな嫌な役を青学の誰かにしたくなかったので…。
最初、桃城にしようか、荒井にしようか、とも思ったのですが、あまりな役にオリキャラにしてみました…。
結果、終盤書けました。
だってテニプリキャラにこんな役させたくなかったんですよぉ〜。
読んでいただきありがとうございました。
感想などいただけると嬉しいです。
20040220
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