悪友から晴れて恋人になって1ヶ月が経った。

付き合い始めて1ヶ月。

だが、海堂は相変わらずで、練習優先で恋人らしい事は何一つ…。

相変わらず2人は悪友のままのようで。



だが、1ヶ月と言う区切りを期にそれを変えたいと は思っていた。

練習を優先するのは、仕方がなく、我慢するとしても、せめて今の自分が海堂にとって悪友ではなく、ちゃんと彼女であるという自信がほしかったから、 海堂の部活が休みの日を見計らって は海堂を映画に誘った。

自主練をしたいという海堂を何とか説き伏せ、2人は映画館へ向けて足を運んでいた。



「でさ…アレ?」

隣りを歩いていた海堂が不意に道をそれる。

道端にしゃがみ込んだ海堂を見て はこれ見よがしと言う感じに大きくため息をついた。

『またか…』

はうんざりという表情を浮かべる。



しかし、海堂はそんな に気付き様子もなく、道端で見つけた子猫に夢中だ。

普段は絶対見せない笑顔を惜しげもなく子猫に向けている。

自分をほっといて、子猫に夢中と言うこの状況は恨めしいが、いつもは見れない海堂を見て、時計の時間を確認し、少しならいいか、と は、並木のイチョウの幹に寄りかかった。



5分経過。



海堂、子猫を抱いて喉下を撫でるのに夢中。

子猫は嬉しそうにゴロゴロと鳴いている。

はそれを呆れたように後ろから見ている。



15分経過。



海堂、どこから取り出したのかネコじゃらしを子猫の目の前で左右に振っている。

子猫はネコじゃらしを熱心に目で追い、時々捕まえようと手を出している。



30分経過。



海堂、子猫と…。



「だー、もう、いい加減にしてよっ。いつまでそうしてんの?もう映画始まっちゃってるし」

そう叫ぶ

「あ?」

そう言って海堂はようやく の方を振り返った。



「あ?じゃなくてっ」

ぷぅっと頬を膨らませる



「…お前、何でここにいるんだ?」

そう言って、不思議そうに を見上げる海堂。



プチンッ。



何かが切れる音がした。

と、ほぼ同時に。



げし。



は海堂の背中に向かって力一杯蹴りを食らわした。



「何すんだ、テメェ」

怒りに燃えて立ち上がる海堂。

海堂よりほんの少しだが背が低い を見下ろす感じになる。

「…」

「…」

無言のまま2人は睨み合う。



ふっと が視線を落とした。

海堂はいまだ無言のままそれを見下ろしている。



「…海堂は、別にあたしといなくたっていいんだもんね」

「…」

の呟きの意図がつかめず海堂は黙ってそれを聞いている。



「一緒にいたいっていうのも、何かしようって言うのも、いつもあたしばっかりじゃん」

「…」

「…一緒にいるって言うよりも、あたしが勝手に海堂の周りうろちょろしてる感じだよね、いつも」

「…おい」

「そんなに…」

海堂の声を遮って の口からもれた小さな声。



「あ?」

海堂は後半聞き取れず、聞き返した。



きっと、海堂を睨みつける

「そんなに猫が好きなら猫と付き合ってろっ。もう、お前なんか知るかっ」

そう言い捨てると は駆け去って行った。



「お、おい…」

海堂が呼び止めようとした時には、時すでに遅く、 の姿ははるか遠くに小さくなっていた。

海堂は何が起こったか分からず、ただ呆然と が走り去った方を眺めていた。



「何をやってるんだ、海堂」

突然後ろから怒鳴られる。

普段優しいその声は、怒鳴っていると言うのにあまり迫力は無い。

だが、宥められる様なその声で叱られると、親に諭される子どものような気分にさせられ、怒りのままに怒鳴り散らされるよりも居心地が悪かったりする。



海堂は恐る恐る声のした方を振り返る。

「…大石先輩…と、何で他の先輩達もいるんすかっ」

その声から大石がいることは分かったが、振り向いた先にいたのは大石だけではなかった。

大石の後ろには、乾、菊丸、不二の姿があった。



「2人が歩いてるのみかけてさぁ、そしたら乾が海堂と ちゃんがデートだって言うから付いて来たんだよん」

にゃははんとお気楽そうに笑みを浮かべる菊丸。

「なっ!?」

海堂は乾の方を睨みつける。



「おかげでいいデータが取れたよ…だがな、動物好きは結構だが、彼女をほっといてと言うのは感心しないな」

くいっと眼鏡の位置を直しつつそう言う乾。

「早く、彼女追いかけた方がいいと思うよ、海堂」

にっこりと微笑む不二。

その笑顔に言い知れぬプレッシャーを感じる海堂。



「ほら、早く、早く」

菊丸が海堂の背中を軽く押した。

海堂は意味も分からず、先輩たちの言う通りが消えていった方へ駆け出した。



「行ったね…」

笑顔を崩さず不二がそう言う。

「でも、ちゃんと追いつくかなぁ」

大石は海堂が走っていった方を心配そうに見ている。



「大丈夫だ。海堂の運動能力から考えるに さんには10分以内に逢える筈だ」

乾はそう言って口元にだけふっと笑みを漏らした。

「やれやれ、世話がやけるよね、うちの後輩達は、さ」

いつもの調子で言った菊丸の言葉に4人はお互い顔を見合わせて微笑んだ。





(Fin.)










反省文

海堂夢いかがだったでしょうか?
海堂はネコとか見たらきっとデート中でもそっちにフラフラッと行きそうだな、と思い書いて見ました。
現実にこういう男は存在します。
彼女と一緒だろうがなんだろうが動物を見るとフラッと…。
彼もきっといつか誰かに宥められる事でしょう…。
ってか、誰か彼女のために宥めてやってくれって感じですが。
さてはて、ではまたお会いいたしましょう。
2003.8.某日










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