「好きな子にはちゃんと好きって言ってあげなくちゃ」
不二に言われた言葉を桃城は頭の中で反芻する。
今日こそは…
そう思うのだが、いざ彼女を目の前にすると出てくるのはいつもの悪ふざけのような言葉ばかり。
相変わらず…彼女に好きだとは言えずじまいだ。
どうしたら彼女にきちんと好きといえるのか。
桃城にとって今抱えている最も大きな課題。
「どうしたもんかなぁ〜」
頬杖をついて空を見上げる桃城。
「…あ、そうか、そうだよな」
何か、考えが思い浮かんだようでふっと笑みをこぼす桃城。
彼らしい、いつもの笑顔。
桃城はそのまま桃城は彼女の教室へと向かった。
「越前いるか?」
彼女の教室。
しかし、呼び出したのは彼女ではなく、彼女と同じクラスの後輩だった。
「何スか、桃先輩」
面倒臭そうに越前が桃城の元にやってくる。
「いいからちょっと来い」
「ちょ、何なんスか」
桃城は越前を引きずるようにして部室へと連れて行った。
「越前協力してくれ」
桃城は越前の肩をガシッと掴み詰め寄る。
「嫌ッス」
桃城の態度に何やら嫌な予感がして用件を聞く前に越前はキッパリとそう言った。
「そんな事言わずにさ、な、越前。今度なんかおごるし…」
そんな越前の態度にちょっと怯みつつも言葉を続ける桃城。
「嫌ッス」
再びキッパリとそう言う越前。
「…」
桃城引きつった笑顔。
「…」
越前無表情。
「…先輩の言う事はきけぇ〜っ!!」
桃城が越前を締め上げた。
「ぐっ苦しいっス、よ。桃先輩…」
桃城の腕の中で暴れる越前。
「協力、するよな越前」
桃城がにっと意味ありげに笑った。
「…します、すればいいんでしょ」
絞り出すような越前の声。
「んん〜何だってぇ?エチゼン君?」
桃城はなおも越前を締め上げる。
「協力させてくださいっものすごく桃先輩に協力したいっスっ」
越前はやけになって叫んだ。
ようやく越前を解放する桃城。
「…馬鹿力」
ぼそっと呟く越前。
「…何か言ったか?」
指をポキポキと鳴らす桃城。
「…何でもないッス」
越前は桃城から視線を逸らしつつ小さい声でそう言った。
「で、何を協力しろって言うんすか?」
覚悟を決めるために大きくため息をついてから、桃城の方を向き直る越前。
「…あのな、」
さっきとはうって変わって桃城は真剣に越前に向かい、ちょいちょいっと越前に耳を貸すように示した。
越前は素直に耳を桃城の方に向ける。
「……」
小さい声で桃城がなにやら越前に耳打ちをする。
「は?」
桃城の言葉にハトが豆鉄砲をくらった様子の越前。
「頼む越前」
両手を合わせて越前を拝むような仕草をする桃城。
ずさっと越前は桃城から後ずさる。
「嫌ッす。そんなん付き合いきれないっスよ」
その場を去ろうとする越前。
「そう言うなよ、越前。頼む。な、この通りだって」
深々と越前の頭をたれる桃城。
「…何で俺なんすか」
不貞腐れたように越前は桃城を睨みつける。
「お前しかいねぇんだって…お前身長的にもちょうどいいしさ。教室に俺が1人でいたり他のクラスの奴といたら不自然だろ?」
そういって桃城は身長を確認するように越前の頭をぽんぽんと叩く。
「やっぱ、俺嫌っス」
身長の事を持ち出され、ムッとして越前は桃城に背を向けようとする。
「越前っ」
がしっと越前の腕を掴む桃城。
すがるような桃城の目。
越前はそれを見て深く大きなため息を1つ。
「頼む。俺、ちゃんと言いたいんだ。でも、なかなか、な…」
いつになく弱気な笑顔を越前に向ける桃城。
そんな桃城を見て越前は大きく息を吐き出した。
「…仕方ないっスね」
越前はすっかり諦めモード。
「…1回だけっスよ」
ぼそっと付け加えられる言葉。
「サンキュ越前。恩にきるぜ」
桃城は満面の笑みを越前に送った。
「じゃ、じゃいくぞ」
緊張した面持ちの桃城。
「…っス」
やや視線を空し気味の越前。
2人がいるのは人気のない放課後の教室。
窓から差し込む赤い光。
その中に浮かぶ2つのシルエット。
2つはお互いを見詰め合う。
ゆっくりとその2つの影の距離が縮まっていく。
大きな影が小さな影を自分の腕の中へと引き寄せた。
2つの影が完全に1つになる。
「…俺はお前が…お前が好きなんだ」
低く呟かれた言葉。
小さな影は大きな影を見上げる。
2つの影の視線が絡み合う。
大きな影はよりいっそう腕に力を込めた。
バタン。
何かが床に落下する音を聞いて2人は音が下方をバッと振り返った。
「…何、やってるんですか?桃先輩」
そこに立っていたのは彼女。
驚きに目が見開かれている。
「…桃先輩」
再び桃城の名前を呼ぶ彼女。
その声は微かに震えていた。
彼女の姿を確認し、2つの影――桃城と越前の顔の血の気がさぁぁっと引いていった。
慌ててバッと離れる2人。
「こ、これはっ!これはな…」
慌ててとりなそうとする桃城。
彼女に向かって恐る恐る手を伸ばす。
彼女はその手を避けるようにずさっと後ずさった。
「…最低」
小さく呟かれたその言葉に桃城はどうして言いのか分からずその手を差し伸べたまま固まっている。
「…桃先輩、私の事好きでも何でもなかったんじゃないですか」
彼女はもう一歩桃城から離れた。
きっと桃城を睨みつける。
「もう、桃先輩なんか知らないっ」
そしてそのまま桃城に背を向けると全速力でその場から駆けさって行った。
「ご、誤解だって…」
桃城は何とも言えない顔でその背中を見送る。
越前は無言で桃城の肩をポンっと叩いた。
(Fin.)
反省文
いかがだったでしょうか?
さてはて問題勃発。
越前で練習。
他のキャラでも考えたのですが、彼が一番の適役だろう…仲のよさ身長などを考えた結果…と言う事になりこうなりました。
続編書くかどうかは未定です。
気が向いたら…もしくはご意見いただけたらというところでしょうか…。
読んでいただきありがとうございました。
感想等いただけると嬉しいです。
20030921
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