だりぃ〜。
長々とした祝辞の言葉。
密集した人口密度。
心地よい小春日の午後。
ただ座っているだけってのは結構苦痛。
じっとしている事に耐え切れず俺は首を回した。
壇上に上っていく少女の後ろ姿。
凛としたその姿に
眠気が吹き飛ばされた。
あの時から
俺の目は彼女を追う。
一番窓側の列の前から三番目。
何やら難しい顔をして書類とにらめっこの彼女。
このクラスのクラス委員。
彼女が見ている書類というのはおそらく先日集めた文化祭についての生徒会のアンケートだろう。
「わかんないなぁ〜」
真面目で堅物と評される彼女。
そんな彼女を見て小さく呟く越前。
眼鏡の位置を直しつつ眉間にしわを寄せて何やら書き込んで。
休み時間だというのに休むという雰囲気でもなく。
周囲の騒ぎなど気にとめている暇もないというような彼女。
彼女は作業し終えた様で書類を整えると数を数え始めた。
「ま、いいんだけどね、どうでも…」
誰に言う訳でもなくそう言って、越前は席を立った。
「桃。」
「ん、あ、何だよ」
突然目の前に現れた友人の顔に驚いて椅子から落ちそうになる桃城。
「またぼぉ〜っとして。…あ〜、もしかして愛しの彼女のことでも考えてたんだろう?」
茶化す友人の言葉に桃城の顔が赤く染まる。
「な、何言ってんだっ」
そう言って桃城は友人から顔を背ける。
必死に平静を保とうとしているが、桃城は耳まで真っ赤だ。
そんな桃城を見てニヤニヤと笑う友人たち。
「でもよぉ、いまだ話し掛けることもできてねぇんだろ?…桃ってもっと積極的に行くタイプだと思ってたんだがなぁ〜」
やれやれと言うように首を振る友人。
「…できっかよ、んな事」
不貞腐れたように言う桃城。
「このまんまじゃ、ずっと片想いのままだぞ。いいのか?それでっ」
ずいっと桃城に詰め寄る友人。
「いい訳ねぇけど仕方ねぇだろっ」
やけにやったように立ち上がり叫ぶ桃城。
周囲がいきなり叫んだ桃城に視線を向ける。
桃城はそれにはっと気付いて、咳払いをすると椅子に腰を下ろした。
「「馬鹿」」
そんな桃城の行動に口をそろえる友人達。
「…」
桃城は無言で友人たちを睨みつける。
「そんな目するならせめて彼女に自分の存在くらい知ってもらえよな」
「部活の後輩に彼女の様子聞いて満足してるようじゃ健全な男とはいえないだろ」
「お前ら〜」
怒りにわなわなと震える桃城。
「すいません…あっ」
越前が教室のドアからひょいっと顔を出した。
それを見て友人2人は顔を見合わせ越前の方に大きく頷いた。
越前はそれを見て軽く会釈をするとその場から去っていった。
「で、だ。」
再び桃城に視線を移す2人。
「そんな奥手な桃城君のために俺たちが協力してあげよう」
友人たちはにっこりと微笑むと桃城の腕を取り、桃城を強引に引っ張って歩き出す。
「おい、お前ら、何考えてんだっ。止めろぉ〜」
桃城は必死にその場に留まろうとしたが、友人2人に両脇から抱えられて後ろ向きに歩かされているのでは、流石の桃城も耐え切れず、そのまま教室から連れ出されてしまった。
教室と特別教室を繋ぐ渡り廊下。
「駄目だって」
計画の一部(?)を聞かされた桃城は焦ったようにそう言った。
「いいからいいから」
桃城の肩をぽんと叩き、友人がニヤニヤと意味ありげに笑みを浮かべている。
「おいっ」
そんな友人に心底困ったという顔を向ける桃城。
「こんくらいしなきゃ駄目だろう。出会いはインパクトだよ、インパクト。でないと覚えてもらえねぇぞ」
にしししっと意味ありげに笑う友人。
「…お前ら、ただ面白がってるだけだろ?」
恨めしげに友人たちを睨む桃城。
「そんな事ねぇよ、なぁ?」
「そうそう。大切な友人がストーカーもどきになる前に救ってやろうっていう美しい友情じゃねぇか」
「後輩使ってその日の彼女の様子聞き出すだなんて、もうすでにストーカーだけどな」
「全くそんな事に後輩使うなよなぁ。情けねぇ〜」
楽しそうに笑う友人達。
「うるせぇ」
そんな友人に怒鳴り返す桃城。
「まったまた。あ、きた…」
桃城の心臓が跳ね上がる。
思いっきり桃城の身体を押した。
「よせって、うわっ」
仲間に押されて桃城がバランスを崩し、そこに走ってきた人物にぶつかる。
「キャッ」
小さい悲鳴をあげ、桃城にぶつかられた人物はバランスを崩し持っていた書類をあたりにぶちまけた。
ひらひらと白い紙が宙を舞う。
「ってぇ、オイ、大丈夫か」
そう言いながら立ち上がり一緒に倒れた少女の方を向く桃城。
「あ、はい」
彼女も上体を起こす。
が、何やらはっとしたようにあたりを探し始める。
「どうした?」
そんな彼女の行動に桃城が尋ねる。
「あの…眼鏡」
桃城の方を見上げ小さな声でそう言う彼女。
「えっ?」
彼女の声が聞き取れず、桃城が少女の方に桃城が近づく。
グシャッ。
「あ」
「あ」
先ほどまで騒がしかった廊下がシーンと静まり返る。
一緒に悪ふざけをしていた仲間たちも無言のままその光景を見守っている。
恐る恐るどけられたその足の下にはやや盛り上がったアンケート用紙。
その用紙をそっとどけてみると、そこにはフレームが曲がりレンズがややかけてしまった眼鏡が1つ。
そしてそのまま固まる。
「おい、桃、とりあえず謝った方がいいんじゃないのか」
呆然と立ち尽くしている桃城の耳元で仲間の一人が囁いた。
「あ、あぁ…えっと…悪い。その、眼鏡」
なんとも居心地の悪い雰囲気だ。
「あ、いえ…」
彼女はさほど気にする様子もなく回りにある用紙から少しずつ集め始める。
慌ててそれを手伝い始める桃城とその友人。
「ありがとうございました」
桃城たちが集めた用紙を受け取り彼女はぺこっと頭を下げ桃城たちに背を向けてまた駆け出す。
「お前ら…」
桃城が友人たちを睨みつけようと友人たちの方をむいた瞬間。
ゴツンッ。
なんとも痛々しい音。
音がした方を振り返る桃城。
そこには先程の少女が頭を抑えてうずくまっていた。
かすかに肩が震えている。
どうやら書類の数を確認しながら走っていたため壁にぶつかったらしい。
「おい、大丈夫か!?」
慌てて彼女に駆け寄る桃城。
「…あ、はい」
ははっと恥ずかしげに苦笑する彼女。
「生徒会室だな」
桃城は彼女の手から書類を取る。
「あっ…」
「このまんまじゃ危なっかしくていけねぇよ」
そう言って桃城はふっと笑みをこぼした。
「でもっ…」
「眼鏡、割っちまったしこれくらいさせてくれよ、な」
にっこりと笑顔を彼女に向ける桃城。
「…はぁ、じゃ、お願いします」
彼女もにっこりと桃城に微笑んだ。
「…眼鏡が割れちまったのは予想外だけど…」
「結果オーライ?」
2人の背中を見て友人2人は呟いた。
(Fin.)
反省文
ごめんなさいベタベタにありがちなネタですね…スランプの極地。
ごめんなさい。
今回の話は桃かなり献身的にヒロインに愛を捧げてます。
中学生くらいって友人の恋愛を面白がって応援する傾向ありませんか?
わ〜っと周りが盛り上げて…周りが先走りして…。
悪友な彼らは100%2人が上手く行けばいいと思っているわけではなく、80%は面白ければよかったのでしょう…20%位は上手くいって欲しいと思っていたでしょうが…。
そんな雰囲気を出したかったのですがどうでしょうね…。
越前が桃城の気持ちを知ってたのはきっと毎日彼女の事を毎日桃城にしつこく気かれたからではないでしょうか?
そんな面倒な状態を終わらせるためにもこの計画に加担したのかもしれません。
桃城は恋愛に対しては奥手だと思うんですよねぇ…でも一度腹を決めてしまえば一転して積極的になったりするのではないでしょうか?
男気溢れるいい男ですから。
この後眼鏡を理由に一緒に下校に誘うと言うのも考えていたのですが、そこまで強引に推し進めるのもどうだろう…とおもいここで終わっときました。
腹を決めたと言っても前半とのギャップがありすぎてしまいますから…。
読んでいただきありがとうございました。
感想等いただけると嬉しいです。
20030920
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