授業終了と同時に、2つの影が教室から飛び出した。
2つの影は横一線に並んで生徒達がまだ出てきていない無人の廊下を走り抜け、階段を一気に駆け下りた。
目的地の最後の角でほんの少し小柄な方が前に出る。
だが、まだ差という差はあいていない。
腕の長さ、リーチを考えるとまだ勝負は決まっていない。
お互い目的のものに向かって両方の影が手を伸ばし…。
「Getッ!!おばちゃん、はいお金」
「だー、ちくしょう」
少女が1つパンを高々と掲げ、少年はその場に座り込んだ。
少女は笑顔で売店のおばちゃんにお金を渡した。
「あいよ。いつものヤキソバパン、ありがとね。早いねぇお姉ちゃん。…はい、これお釣りね。兄ちゃん、今日は負けだね。しっかりしなよ…さて、じゃ今日は一体何にする?」
おばちゃんはそれをなれた光景であるように少女にお釣りを渡し、その場にしゃがみこんでいる少年に声をかけた。
「今日はあたしの勝ち。これで30勝25敗。あたしの方が5勝リードだね、約束通り今度ビックパフェおごってよね、桃」
少女は少年の前でヤキソバパンを振る。
「分かったよ。勝負は勝負だしなっ!!」
そう言って悔しそうに少女を見上げたのは、校内でも運動能力に定評のある男子テニス部所属の桃城武。
「ふっふっふ。楽しみぃ」
そう言ってにやっと笑い桃城を見下ろす本日の戦いも制した少女は彼のクラスメイトであり、陸上部に所属する 。
「チクショーッ」
桃城は悔しそうに頭を抱える。
「へへっ。早く選らばないと他のもとられるよ、桃」
はそう言ってゾクゾクと集まってくる生徒達を指差した。
「おっといけねぇ…えーと…」
パンを選び始めた桃城を尻目に は教室へと戻っていった。
青学名物となりつつある昼休みのヤキソバパン争奪戦。
本日の勝者、 。
「おっかえりぃ。どうだった?」
が教室に戻るといつもお昼を一緒に食べる友達そう言われ、はヤキソバパンを見せる。
「おぉ、おめでとう」
パチパチと拍手。
「ありがとう」
拍手のお礼を言って は席に付いてヤキソバパンにかぶりつく。
そんな を見て苦笑する友人一同。
「流石の桃も2連敗か…やっぱ怪我ひどいのかな?」
そう言った1人を周りにいた友人達は慌てた抑え込む。
「え?」
は聞き返す。
「馬鹿っ」
「えっ…あ…ごめん、つい口が滑って…」
「…」
「あ〜 。桃に口止めされててさ、、優しいから絶対手加減するだろうからって、真剣勝負だから言われて…」
「…」
「「…ごめん」」
「…別に。勝ちは勝ちだし」
無理矢理笑顔を作る 。
「… 」
は再びヤキソバパンを口へと入れた。
放課後。
「ふぅ…?」
競技会前と言う事でセットメニューを終えた者からぞれぞれ部活終了。
もようやくそれを終えて、水道へと向かった。
顔を洗い、タオルで水滴をふき取る。
「よぅ、調子はどうだ?」
上方から声をかけられた。
はタオルを顔に当てたまま声がした方を見上げる。
「よぉ」
そこには渡り廊下の窓からこちらを見下ろしている人影。
「桃…」
にっと笑顔を向けているクラスメイトの姿。
「あんた、部活は?」
練習熱心な桃城がこの時間、そんな所にいる事を疑問に思い は桃城に尋ねた。
「あ?あぁ俺はもう終わりだ」
「…ふぅん」
誤魔化すように浮かべられた桃城の笑みに はそれ以上突っ込めなくなる。
「…」
「…」
お互いがお互いを見ているが会話が続かなくなる。
「じゃ…」
の方がそんな雰囲気を破るように声をだして、タオルを持ってグランドの方へ戻っていこうとする。
「…なぁ、お前の方は後どれくらいで終わるんだ?」
去り際、桃城がに声をかけた。
「もう終わり…片付け手伝ってこうと思ってるけど」
は桃城の方を振り返っていった。
「そっか。じゃチャリ置き場で待ってるから」
「はぁ!?」
「早く来いよっ」
「ちょっと、桃!?」
桃城は言いたい事だけ行った窓から消えた。
後に残されたは呆然と立ち尽くしていた。
「遅ぇぞ、 」
マイチャリの前に仁王立ちしている桃城。
「ごめん…って何なの一体!?」
「つべこべ言ってないで。ほら、行くぞ。後ろ乗れ」
の疑問に答えず自転車にまたがる桃城。
「…」
戸惑う。
「乗れって」
「あっうん」
桃城に強く言われ、は桃城の肩を持ち自転車の後ろに立ち乗りする。
「ど、どこに行くの」
「あ?いいからいいから」
突然猛スピードで自転車を漕ぎ出す桃城。
「うわっ」
慌てたバランスを取り直す 。
桃城はそんな を背中に感じつつ豪快に笑った。
某ファミレス。
「…」
の目の前には高々と盛り付けられた巨大なパフェが置かれている。
「ほら、味わって食えよ」
目の前には満面の笑みを浮かべて頬づえをついている桃城。
「…」
はスプーンを手に取ろうとしない。
怪訝な顔をする桃城。
「どうした?食えよ」
「…」
「おい、 ?」
「…アレ無効」
絞り出すような声で は行った。
「はぁ?何言ってんだよ、お前」
「あんた、怪我してんでしょ?だから…」
「…知って!?…でも勝負は勝負。負けは負けだろ?」
「…」
やはり はスプーンを取ろうとしない。
「「…」」
睨み合う2人。
「あー分かった分かった。今回だけな…」
桃城はスプーンを1本とってパフェをすくうとそれにかぶりついた。
それをみて もようやく笑顔になってスプーンを取った。
「うまい、やっぱうまいよな、コレ」
「本当。あっ桃アイス取りすぎ」
「早い者勝ち」
ふふんと笑ってアイスを頬張る桃城。
そんな桃城を見てはふっと笑みをこぼした。
「やっぱ好きだな」
フフッと無邪気に笑みをこぼしながら、スプーンを指揮棒のように振りながらは言う。
「えっ!?」
の言葉の意図が読み取れず桃城は目を見開く。
頬がやや赤い。
「やっぱおいしいものって1人で食べるよりこうして誰かと食べる方が好き。楽しい」
そう言ってはクリームをすくいぱくっと頬張った。
「あっ…だ、だよなぁ〜」
そう言って大声で笑い、桃城はふっと肩の力を落とした。
「だぁぁ」
チャイムと同時に教室を飛び出し、売店に飛び込む2人。
伸ばされた手の1つがパンをもぎ取る。
「はっはっはぁ。今日は俺の勝ちだな」
豪快に笑う少年。
「だー、馬鹿桃!」
悔しそうに少年を見上げ、悪態をつく少女。
「誰が馬鹿だっ!誰がっ!!負け惜しみ言うんじゃねぇっ馬鹿」
「馬鹿って言うほうが馬鹿だ。馬鹿桃っ」
「…てめぇ〜やんのか、コラ!?」
「受けてたぁーつ」
「やるならよそでやっとくれ…まぁその間にパンなくなっちまうだろうけどね」
「「…」」
おばちゃんの言葉にぴたっと固まり2人はそれぞれどれにしようかと選び始める。
彼らのいる周りには続々と続々生徒たちが集まってくる。
彼らの勝負はまだまだ続く。
(Fin.)
反省文
桃城夢いかがだったでしょうか?
あれもこれもと欲張った結果、こうなりました。
ヒロインはパワフル…だったのでしょうか?
桃城にパン争奪戦で勝つくらいですからパワフル…いや、パワフルと言うよりも…何でしょう…う〜ん…ごめんなさい。
修行します。
桃城は誰とでも仲良くできるのですが気になる女の子だと照れてしまって名前呼べないんじゃないかと思うんですよね。
意識しすぎちゃうと言うか…。
好きな相手に程素直になれないそれが桃城のイメージです。
なので桃城ヒロインを苗字でしか読んでません。
意外に照れ屋さんなんですよ、彼はきっと。
読んでくださりありがとうございました。
またお会いいたしましょう。
2003.8.某日
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