夏。
今年は冷夏である、と言われるが、日中照りつける太陽はやはり熱い。
昼過ぎになるとじわじわと肌が焼けるのがわかる、そんな暑さ。
コートを走り回る部員達はもちろんだが、そんな部員たちの練習に付き合うマネージャー達も汗びっしょりになる。
「お前ら、グランド10周だ」
気を抜いていた部員に手塚の叱咤が飛ぶ。
問題児の多いテニス部員たちに手塚が眉間にしわを刻み罰則を言い渡す。
青学テニス部のいつもの光景だ。
「次、レギュラーはコートに入れ」
いつものように次々と練習メニューがこなされていく。
そんな中、 は、ふっと目眩を覚えてその場に座り込んだ。
白いもやがかかったような視界をはっきりさせようと は頭を左右に振るが効果はない。
「どうした?」
そばにいた手塚がそう声をかけたが、 にはその声は聞き取れていないらしい。
「 さん、具合悪いみたいだね」
事態を察した河村が心配そうに2人の元に駆け寄った。
「暑さにやられたのかな?…なあ手塚、彼女どこか日陰で休んでいた方がいいんじゃないか?」
河村は心配そうに の顔を覗き込み、それから手塚の方を見上げた。
「そうだな。とは言うものの1人で行くのは無理そうだな。河村、連れて行ってやれ」
表情を変えずに、手塚が言う。
「うん、分かった。 さん立てる?」
そう言って河村は、 の腕を取った。
しかし、 は全身から力が抜け切っている様子で立ち上がれない。
河村はそんな を見て困った、と言う表情をしたが、次の瞬間には、すぐになにやら決心した表情になった。
そして、
「ごめん、 さんっ!」
そう言って、 を軽々と抱き上げた。
「えっ」
急に体が軽くなったことに戸惑う 。
頭がぼんやりとしているため、何が起こっているのか、いまいち理解できていない様子だ。
「ひゅー、タカさんやるぅ〜」
コートから菊丸らしき声が聞こえる。
「…」
その言葉に真っ赤になる河村。
菊丸の言葉によって何となく自分の置かれている状況を察し、うっすらと閉じていた目を開く 。
そして、ふと自分の姿を省みる。
そこでようやく、自分の置かれている状態をはっきりと把握し、慌てる。
「な、タ、タカさん先輩!?お、下ろしてくださいぃぃ」
恥ずかしさのあまり半泣き状態になる 。
「歩ける?」
「歩けますっ、歩けます!だから下ろしてくださいっ!!」
そう叫ばれて河村は、 の体をそっと下ろした。
の足が地面につく。
地面の感覚に はほっとした表情になったが、力が入らず、河村のほうに体重を預ける感じてもたれかかってしまった。
「大丈夫、 さん?」
河村の心配そうな顔が予想以上に近くにあって は頬を赤らめてうつむいた。
そんな につられるように河村も頬を赤くし、視線を上方へとそらした。
「…すいません」
「…いや、かまわないよ」
何とも言えない空気が2人の間に流れる。
「どうでもいいが、早く日陰につれてやったらどうだ?」
そんな雰囲気を壊した人物。
「うわっ!手塚っいつからそこに!?」
2人は声のした方を振り返る。
眉間にしわを寄せて2人の横に立っているのは手塚。
「…俺は最初からここにいるが?」
手塚は眼鏡の位置を直しつつ冷ややかにそう言った。
「あははは…じゃ、 さん、と、とりあえず日陰の方に行こうか?肩、貸してあげれば歩けるよね?」
ごまかすように乾いた笑いを浮かべ、手塚の方から の方へと視線を移す河村。
「…はい」
小さく返事をし、赤くなって俯いている 。
2人はぎこちない雰囲気でゆっくりとベンチのある木陰の方へ歩いていった。
「もぅ、何やってんだよぉ、手塚ぁ。せっかくいい雰囲気だったのにさ」
手塚の方に駆け寄ってきた菊丸が2人の背中を見送りながらそう言う。
「今は練習中だ」
淡々とそう言う手塚。
「固いんだから手塚は。ちょっと位大目に見てあげればいいのにさ」
ぷぅっと頬を膨らませる菊丸。
「…グランド走ってくるか?」
静かに手塚が言う。
「やっだよーん。もう知らない。手塚なんか馬にけられちゃえ」
菊丸はべぇっと舌を出してそういうとコートの方へ戻っていった。
「…傍であんなふうにされてみろ、居心地が悪いだろうが」
小さくつぶやく手塚。
小さくため息をつくと手塚もコートの方へと足を向けた。
彼の小さな言い訳が聞こえたものはいなかった。
(Fin.)
反省文
河村夢いかがだったでしょうか?
奥手でありながらも、ほんの一部で周囲を驚かすほど積極的…本人はもちろん意識していないというのがイメージです。
自分は夏場よく貧血を起こすので…でも今年は調子いいですね、まだ3回くらいしか起こしてません。
つらいですね、貧血…。
自分にしては珍しい菊丸と手塚の会話。
何となく面白かったのでまた絡んでほしいです。
読んで頂きありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう
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