「あれ?何かフラフラする…かも」

部活を終えて、制服に着替え終えて、後は帰るだけ、というときになって はそう呟いた。



朝から体調が悪かったのは自覚していたが、一日くらいならまぁ大丈夫だろう…と思って今日一日を過ごしてきたのだが。

やはり無理をしていたせいか、はたまた、部活を終えてもう家に帰れると気が緩んだせいか、一気に身体が不調を訴え出したようだ。



「ヤバ…早く帰って寝よ…」

はそう呟くとガンガンと痛みだした頭を左手で抱えながら、右手で鞄を持った。

しかし、一歩踏み出そうとして、一瞬目の前が暗くなる。



がしっ。



腕を掴まれ身体を支えられる。

そして、ふっと、視界に光が戻ってきた。



「…大丈夫か?」

が朦朧とした意識の中で声がした方を見上げると、そこには乾が立っていた。



「…うん…ありがと…乾?」

は焦点が合わない目でぼぉっと乾の方を見上げている。



「…大丈夫か」

乾は体勢を持ち直した の腕をそっと放した。



「…心なしか顔も赤いようだが…熱でもあるのか?」

そう言って乾は、 の額に手を当てやや、表情が強張った。



「…やはり少し熱っぽいようだな」

はそう言う乾を見上げていたが、視界がぐるぐると回し始め、立っていられなくなる。

そして、 の身体から力が抜け落ちた。



さんっ」



乾が を呼ぶ声が聞こえが気がしたが、そのまま の意識は闇に飲み込まれていった。















の中に再び光が戻ってくる。

光を感じて、 はゆっくりと目をあけた。

最初に の目に入ってきたのは黒ぶちの眼鏡。



「…乾?」

が視線を乾のほうへ向くと、乾は安心したのか優しく微笑んだ。



「目、覚めたか?」

「あ、うん…あれ?ここは…」

気付けば、ベットの上だった。

はベットから上体を起こす。



「保健室だ」

乾の言葉に は2,3回、目をパチパチとさせると確認するように周囲を見渡した。

薬の並んだ棚とファイルがたくさん並んだが目に入る。



「どうして、あたしここに?」

に不思議そうに見返されて乾は苦笑する。



倒れちゃったんだよ。だからとりあえずここに運んだんだ」

乾の言葉に、自分があの後どうなったかを理解する



「そっかぁ。乾が運んでくれたの?ごめんね、ありがとう」

にっこりと微笑む



「いや、たいした事はしてないよ…そんなに重くなかったし」

そう言うと、乾の口角が上がった。



「なっ!?」

それを聞いて、 の顔がカッと熱くなる。

それは具合が悪いせいではなく、女としての恥じらい。



運んでくれたって事は…。

駄目、考えないようにしよう。



「そ、そう言えば保険の先生は?」

話題を変えるように は焦った様子で口を開いた。

視線が宙を泳いでいる。



「会議だそうだ。目が覚めて大丈夫そうだったら帰って言いそうだ。…どうだ?立てそうか?」

「あ、うん、平気」

と言って はベットから立ち上がる。

身体が重くて力が入らない感覚が残っているが。



「あ、そうだ。ほら、これ」

薬が一錠とコップ渡される。



「…?」

「先生が起きたら飲ませろと言っていた。風邪薬らしい」

「薬は分かるんだけどさ、こっちは?」

おそるおそるコップを見る。



怪しいグリーン。



「俺特性のビタミンたっぷりの野菜ジュースだ」

「…」

その言葉に は乾をじと〜っと睨む。



「…何だ、その目は。」

「あたし、こっちはいいよ。薬はみずで飲むし」

コップを乾に返す

そんな の行動に憮然とする乾。



「…仕方がないな」

そう言って他のコップに水を汲んできて に渡した。



「ありがとう」

は乾から再びコップを受け取る。

そしてぽいっと薬を口の中に放り込み、コップの水を一気に飲み干した。



「薬も飲んだし、そろそろ帰ろうか。送っていくよ」

「えっいいよ。1人で帰れるし…」

は大丈夫だと示すように慌ててベットから立ち上がった。

が、体がくらっと倒れ掛かり再び乾に支えられる。



「…ごめん、ありがとう」

そう言って乾の腕から逃れる



「無理する事無いのにほら、足元がふらついている。こんな状態で1人で帰るのは無理だろう」

「で、でも…」

「いいから、ほら。」

どうしようかと迷っている様子の に乾は右手を差し出す。



「…」

一瞬その手を出そうとして出した手を は顔を伏せて引っ込めた。





乾に名前を強めに呼ばれ、おずおずと は乾の手の上に自分の手を乗せる。

と、ぎゅっと手が自分より大きなそれに包まれた。

顔をあげると乾が優しく微笑んでいる。

それを見て は安心感を覚える。



乾は左手で自分の鞄と の鞄の両方を持つと歩き出す。

はやや俯き下限でその後をついていく。



「もっと俺の事頼ってくれていいんだがな」

他の生徒が帰り静寂に包まれた廊下。

足音だけがいやに響くそんな空間で乾が静かに口を開いた。



「えっ?」

「そんなに俺は頼りないかな?」

「えっそんな事ないよ…ただ迷惑かけたくないって言うか…」

「お前の事で迷惑だ何て思わないよ、逆に頼られない事の方が俺は寂しいな」



は乾を見上げる。

いつもの読みどころのないあの表情ではなく、真剣な眼差しがそこにあった。



「今日は朝から様子がおかしかった。それなのにずっと我慢していただろう?…そういう強気に構えているところもいいが無理はして欲しくないな、俺は」

握られた手をそのまま引き寄せられた。

そのままは乾の腕の中に包まれる。



「…いつでも傍にいたいし、頼って欲しいんだ。俺がお前にとって必要な存在だって保障が欲しい」

そう、耳元で囁かれる。



「気付いてたんだ…私が朝から体調悪かったの」

「気付かないと思っていたのか?」



小さな事まで気付く。

小さなことまでチェックしている。

さりげなさ過ぎて気づかない事も多いけど、どんな時でも彼は視線の中に を入れている。

そうして集められたデータによって の行動は乾によっていつでも計算済みだ。



「じゃ、さっき部室に残っていたのも」

「…こんな時ばかり勘がいいんだな…新たにデータに加えておこう」

知られたくない事がばれてしまって、少し罰が悪い乾。

そんな乾に は自分から少しだけ身体を寄せた。



「素直だな、今日は」 

「…熱があるからね」 

乾はふっと笑みをこぼし、 の背中に回した腕にそっと力を込めた。





(Fin.)










反省文

初の乾夢いかがだったでしょうか?
今まで散々乾は登場してきましたが、乾夢は初だったりします。    
一度乾の甘い夢書いてみたいとかねてから抱いていた管理人のほのかな野望は叶いました。   
タイトルなんのひねりもなくそのままですね。 










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