大石がいい奴だって言うのはきっと俺が一番よく知ってる。
優しくって頼りがいがあって心配性でお節介で時々青春モードで突っ走って周り巻き込んで…でも憎めなくて。
周りのことには細かく目がいくのに自分のこととなると鈍いから…ちゃんが見つめる視線にも気づかなくって。
ちゃんはそれにめげることなく、いつも大石の姿を眼で追っている。
大石を見るときだけ恋する少女に変わる。
その姿が
彼女の横顔が
俺はとても綺麗だと思う
「菊丸先輩」
移動教室。
移動途中で廊下で菊丸は呼び止められた。
呼び止めたのは見慣れない下級生。
一緒に歩いていた友達は菊丸を軽く小突き先に行った。
「ん?何?どうしたの?」
ちょっと首を傾げつつ菊丸が訊ねる。
「あ、あのこれ…」
かすかに震えた声。
差し出されたのは綺麗にラッピングされた小箱。
「あっチョコ?」
嬉しそうに訊ねる菊丸に少女はコクン、とうなずいた。
「ん〜…でも俺お返しとかちゃんとできないかもしれないよ」
ホワイトデーって卒業式の後だから…と言ってその場にしゃがみこんで菊丸は申し訳なさそうに少女の顔を見上げた。
「あの、いいんです。受け取ってもらえるだけで…」
消え入りそうな少女の声。
「そっか…ん…ありがとね」
にっこり笑ってそれを受け取る。
菊丸は立ち上がり少女の頭を軽く撫でた。
少女は大きく頭を下げると弾かれたように廊下をかけていった。
少女の後姿を菊丸は小さく息を漏らし自嘲的な笑みで見送った。
「やっぱモテるんだねぇ菊丸君って」
その声に菊丸は後ろを振り返った。
「、ちゃん…」
「よっ」
は軽く手を上げ菊丸のほうに歩み寄る。
「どうしたの?…あっ大石にチョコあげた?」
上手く笑わなければ、と思うのだが上手く笑えていない自分を自覚する菊丸。
「うん。ありがとうって受け取ってくれた。最後の年勇気出してよかったよ」
はにかむように、幸せそうに笑う。
「そっか…よかったね、ちゃん」
上手く笑えないまま菊丸は引きつった笑みを浮かべる。
「ありがとう。で、はい」
菊丸に1つの包みが差し出された。
「えっ?」
菊丸は戸惑ったようにの顔を見る。
「チョコ」
包みを差し出しにっと笑みを浮かべる。
「…俺に?」
包みを見つめ菊丸が訊ねる。
「そうよ、自分で欲しいって言ったのに忘れちゃったの?」
くすくすと笑う。
「…」
呆然と包みを眺めている菊丸。
「あっもしかしていらない?いらないなら…」
「いるっいるよっ。俺、ちゃんからのチョコ欲しい」
の言葉をさえぎり引っ込められそうになった包みを慌ててつかむ菊丸。
「そう?ならよかった。菊丸君には3年間特に後半2年間はお世話になったからね」
菊丸の勢いに驚いただったが菊丸が包みを受け取ったことを確認し、にっこり笑った。
半信半疑のまま手元の包みを見つめる菊丸。
「…あ、ありがと」
何とか言葉をつむいだ。
「どういたしまして。ホワイトデーよろしくね」
明るく笑うの顔が菊丸の前にあった。
「ねぇねぇちゃんホワイトデーのお返しって…」
どんなんがいい?と続けようとした菊丸の言葉は途中でさえぎられた。
「そうだねぇ…とりあえず5倍返し?」
ん〜…と考えつつぼそっと言う。
「え〜この間より増えてない!?」
叫ぶ菊丸。
「そう?」
にやりっと笑う。
完全に確信犯だ。
「そうだよ。増えてるっ増えてるっ…って大石にもそれ言ったの?」
「言えるわけないじゃんそんなんっ。大石君はいいの…受け取ってもらえただけで幸せなんだから」
ほんのり頬を染める。
「え〜何それ〜俺ばっかし5倍返し?ずるっい〜大石ばっかし〜」
ぷぅっとほおを膨らませる菊丸。
キーンコーン…
チャイムが鳴った。
「ヤバッ遅刻!?走るよ菊丸君」
はスカートを翻し駆け出した。
「ちょっ待ってよっちゃん」
慌てての後を追う菊丸。
その手の中には小さな包みが2つ。
君が大石を好きなのを俺は知ってる。
大石の前だと君は一生懸命で
大石の前だと君は幸せに笑うから
俺は大石が好きな君が好き
だから今は
俺は君の横顔を追う
「チョコありがとうちゃん。俺ちゃん大好きだよん」
「お世辞言ってももう何もないよ」
「え〜…残念」
いつか君の横顔が俺の方を振り返ってくれるまで
(Fin.)
反省文
菊丸夢いかがだったでしょうか?
どうも笹間が書くと菊丸悲恋ちっくです。
きっとあの天真爛漫な笑顔の下に色々隠しているのではないかと思ってしまい…。
切ないほうへ切ないほうへいってしまうのです。
バレンタイン設定なのにねぇ。
いつかラブラブハッピーなのも書きたい菊丸夢です。
20040203
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