頬杖をついて

溜息をついて

雑誌を見ている君





















「な〜に見てんの?ちゃん」

菊丸はひょいっとの顔を覗き込んだ。



「ん〜…ちょっとねぇ」

難しい顔で雑誌を眺めている

菊丸に返事を返すものの雑誌からは目をそらさない。

菊丸はの手元に視線を落とした。



バレンタイン特集。



なるほど、と菊丸はどこか自嘲的な笑みをこぼした。

だがそれはすぐに消え、いつもの元気な笑みを表に出す。



「うっわ〜おいしそ〜」

菊丸は雑誌を覗き込むようにしての机の横にしゃがみこんだ。

の眉間によっていた皺が消え、苦笑めいた笑みが浮かんだ。



「そうだね」

はようやく菊丸へと視線を向けた。



ちゃんは手作り派?」

机についた手の上に顔を乗せほんの少し首をかしげを見上げるようにして菊丸は訊ねる。



「ん〜…今年は作ってみよっかなと思って」

の頬がほんの少し赤く染まる。



「そっかそっか。うんうん青春だね〜」

菊丸は物知り顔でうなずきいた。



「手作りチョコレートっていいよねぇ〜。気持ちがこもってるって感じがするよん」

「そう、かな?手作りって重いとか思ったりしないかな」

「そんなことないって。喜ぶよぉ〜。大石甘いもの好きだし。俺が言うんだから間違いないよ」

はにかむように笑みを浮かべるに菊丸は満面の笑みで答える。



「いいなぁ〜手作りチョコ」

菊丸は再び雑誌に目を落とす。



「俺、ちゃんのチョコ欲しいなぁ…」

雑誌を見たまま小さく菊丸が言う。



「何言ってるの。菊丸君なら沢山貰うんじゃない?」

ふふっといたずらっぽく笑う



「チョコはいくらあっても困んないよ。俺甘いもの好きだもん」

菊丸も笑う。



「だからちゃんチョコ頂戴」

「ホワイトデー3倍返しね」

にやっと笑うに菊丸はえぇ〜っと非難めいた声を上げる。



「私から貰わなくたって菊丸君結構もてるからチョコ沢山もらえるわよ。大丈夫」

そう言っては笑った。



ちゃん冷た〜い」

ぷぅっと頬を膨らませた菊丸にはなだめるようにはいはい考えとくね、と軽く流すように肩をすくめた。















他の娘からじゃなく

俺は君からのチョコが欲しいのに

他の娘のじゃなく

俺が欲しいのは君の気持ちなのに















「あ〜ぁ…」

今日も空が青いなぁ〜なんて当たり前のことを考えて菊丸は空を見上げた。

知らず知らずのうちに溜息が漏れる。



「どうした英二?」

はっと横を向くと心配顔の大石。



「ん〜にゃ、どうもしないよん」

菊丸はそう言って笑う。

大石の顔がわずかに曇った。



「そう、か?」

「うん」

にっこり笑う菊丸。



「ならいいけど…何か悩みがあるなら話してくれよ。話すことで気持ちが軽くなるってこともあるからな」

心配そうに菊丸の顔を覗き込む大石。



「大石ってば心配性だにゃ〜。大丈夫だよん。…でも心配してくれてありがとね」

菊丸は笑って大石の肩を組むように軽く後ろから叩いた。



「そうか…杞憂ならいいんだ」

大石の顔にほんの少し笑みが浮かんだ。

目はどこか心配そうなままだったけども。



「ほらほらそんなことより練習練習。手塚にグランド走らされっちゃうよん…って大石なんか呼ばれてるみたいだよ」

菊丸の言葉に大石は手塚のほうに目を向けた。



「本当だ。ちょっといってくるな」

「うん、いってらっしゃ〜い」

手塚のほうにかけていく大石の背中にひらひらと手を振る菊丸。

コートの反対側で手塚と大石、それに乾を交えなにやらノートを見て話し始める。



「俺の方が大石よりずっとちゃんのこと見てるのになぁ…」

菊丸は目を伏せ小さく息を吐き出した。



「さてっと練習練習」

菊丸は軽くラケットを振りながらコートに入った。



「お〜い桃。勝負しようぜ、勝負。負けたほうが今日おごりな」

いつもの笑顔を浮かべラケットで桃城を指した。



「え〜っ今からっすか。俺今1ゲーム終わったとこなんすよ」

不満顔の桃城。



「え〜じゃにゃ〜い。先輩命令だぞ。ほらコートに入る。早く早く」

菊丸はすでに位置についている。



「へ〜い…」

菊丸の言葉に桃城はしぶしぶコートに入った。










■戻■