「では、次の方、お入りください」



世間一般が間近に迫ったクリスマス一色に染まっている時期。

由美子が副収入気分でやっている占いの館は大盛況だ。

その筋ではかなり名前が売れている彼女の所には連日多くの人間がやってくるのだがイベント前というのはいつも以上に多い。



「お願いします」

入ってきた少女の顔に、由美子は見覚えがあった。

どこでみたのかしら?と内心思ったが、そこはプロ。

そんな個人的な感情は表に出さず、にっこりと少女に微笑む。

薄い布を通してその表情の変化が表に出る。



「どうぞお座りください」

「あ、はい」

由美子の微笑に魅了られてか、この場の雰囲気になれていないせいか、彼女はほんのり頬を染めながら戸惑いがちに由美子の正面の椅子に腰を下ろした。

顔を覆った布の間からじっくり彼女を観察する。



あぁ、そう、そうだったわ。



そこにきて由美子はようやくどこで彼女を見たのかを思い出す。

布に隠れた口元にだけ先ほどとは違った笑みが浮かぶ。

そんな由美子の姿はとても艶やかだ。

薄い布ごときでは彼女のその布雰囲気は隠れない。



「まずは、お名前をお伺いしてよろしいかしら? 」

「あ、です」

慌てて答える

初々しいその様子を好ましく思いながら由美子が彼女に笑顔を向けると彼女―は一瞬目を見開き、ぱっと顔を伏せてしまった。



「そんな緊張しないでいいのよ、さん。気楽〜な感じでいきましょ。で、今日はどんなことを?」

くすくすと笑いながら、由美子はに尋ねる。



「あ、あの…れ、恋愛について占ってほしいんですけど…」

の声は恥ずかしいのか語尾が次第に小さくなっていく。



「そう…じゃ占う前にちょっとお話聞かせてもらってもよろしいかしら?」

にっこりと笑うその由美子の笑顔に促されるように口を開きだした。



どうして自分がこんなことをしているのだろう?と思いながら。















話は数日前までさかのぼる。





「ねぇねぇ悠樹〜」

「ん?何?」

「見て見て、コレ」

仲のいい友人が持ってきた一冊の雑誌。



「ここの占いメッチャクチャ当たるんだって。3組の伊藤さんと彼が上手くいったのもこの占いの館のおかげらしいのよ」

「へぇ〜」

興味半分でも差し出された雑誌に目を落とす。



「でね」

がしっと両手をつかまれた。



「一緒に行こう、占いの館」

友人の迫力に気持ち身体が後ろに下がる。



「えっいいよ、私は…」

「何言ってんの」

の言葉が友人によってさえぎられる。



「好きなんでしょ、不二君のこと」

小さくささやかれた言葉にかっと頬が熱くなる。



「な、なんで!?」

「あんた、わかりやすからねぇ」

明らかに挙動不審なその態度に友人はうんうんと頷いてみせる。

は緩んだ口を慌てて引き締める。



「もてるよ、彼」

きっと真剣な目で友人はの顔を見つめる。



「…知ってる」

俯きがちに小さな声ではつぶやく。



「いつまでも片思いって訳にもいかないでしょ?だったら占いにアドバイスしてもらって背中押してもらって玉砕してきなさい」

びしっと人差し指でを指して何気にひどい言葉を吐く友人。



「…玉砕って…私は別に今のままでもいいし」

「ま、とにかく今度の日曜付き合ってよね」

少し傷つくの心を知ってかしらずか、友人は独りでそう決めてしまった。















「ありがとう」

「…はぁ」

由美子の話術によって、ほとんど全てと言っていいほど洗いざらい吐き出し、なんとも居心地悪くなっては由美子に苦笑を向ける。

この部屋に入ってきたときのがちがちの緊張は抜け落ち、だいぶリラックスできているようだ。



そんな彼女に由美子はまたくすっと笑みをこぼして、ようやく占いの道具に手を伸ばした。



「そうねぇ…明後日の午後。駅の南口のバス停で拾う南瓜が幸運を呼び寄せるわ」



「か、南瓜、ですか?」

具体的すぎる、かつ、不思議な結果に戸惑う



「そう、南瓜よ」

きっぱりとそう言って由美子は再びあの艶やかな笑みを浮かべた。



「明後日、駅の南口で絶対南瓜を拾ってね。忘れないで。絶対よ」

「…はぁ」

が部屋を出て行くのを見送って、彼女は顔を覆っていた布を取る。



「面白くなってきたわ」

そこには心底楽しそうな笑顔があった。









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