「いい返事、期待していいよね?」
そう言って微笑んでを見つめる不二。
「えっあっ…」
そんな不二の視線に赤面し戸惑うは、顔を伏せて不二から視線を逸らした。
そんなを見て不二は優しく微笑む。
そしてそんな 悠樹に向かって手伸ばし、の頬に触れた。
その手によっては顔をあげさせられる。
が顔をあげるとそこには、がこれまで見た事のない真剣な表情の不二がいた。
そんな不二の鋭い視線にまるで金縛りにあったかのように、囚われて動けなくなる。
は不二から目が離せなくなる。
不二の顔がゆっくりと近づいて来る。
は目を見開いたまま不二からいまだ視線を逸らせない。
不二がゆっくりと目を閉じた。
途端に、は全身を縛っていた金縛りから解放された。
次の瞬間、は不二の腕から逃れて、ベットから飛び出していた。
そして鞄を持つと猛ダッシュでその場から駆け去って行った。
後にはベットの上に片足を乗せた不二と廊下から響いてくる足音。
「…ちょっと急ぎ過ぎちゃったかな」
不二はの出て行ったドアの方を見つめて小さくため息をついた。
「でもこうなったら、もう逃がさないよ、さん」
そう言って意味ありげに微笑んだ。
その頃、は言い知れぬ恐怖感と、混乱に陥っていた。
「な、なんなんだよぉぉ〜一体」
そう言って放課後誰もいない廊下を全速力でかけていった。
先程の状況を思い出しかぁぁとますます顔を赤くする。
そして、そんな光景を頭から振り払うようにブンブンと大きく左右に頭を振った。
そのまま昇降口に行き、急いで靴をはくと自宅へ向けて再び全速力で駆けて行った。
あの日以来は悩んでいた。
あの不二の言葉は、果たして本気だったのだろうか、と。
あんな事があったというのに次の日もその次の日も不二の態度は相変わらず。
それまでとどこも変わった所は無い。
あの日の返事を自分に求めてくるわけでもない。
こちらは、あれ以来不二を意識してしまってどうしていいのか分からないのに、変わらず余裕たっぷりといった感じの不二を見ていると腹立たしささえ覚える。
どう返事しようか、自分はこんなに悩んでいるというのに。
やはり、あれは本気じゃなかったのかな。
そんな事を思い始めた頃は後輩の女の子に声をかけられた。
その娘は以前から、差し入れと称した手作りお菓子をしばしばに渡してきていたので、の記憶にも残っていた。
「…先輩、ちょっといいですか?」
泣きそうな顔でそう言われ、は少女に言われるまま体育倉庫の裏にやってきた。
…また、かな?
気持ちが暗くなる。
ここは、過去に何度かが告白を受けた場所でもある。
「…あの、先輩。」
次に来るであろう言葉を予想して息を飲む。
「不二先輩と付き合ってるって本当ですか?」
「えっ?誰と誰が?」
予想外の言葉に思わず訊き返す。
「あの、先輩と不二先輩…違うんですか?学校中その噂で持ちきりですけど…」
そんなまさか、学校中の噂って…固まる。
そうなった理由で考えられる事はただ1つ。
あの現場を誰かに見られたんだ。
かぁぁと赤面する。
そんなを見て彼女は誤解を深めたようだ。
「…やっぱりそうなんですね」
俯く彼女。
だが、自分の思考に囚われているはそんな彼女の変化に気付けなかった。
「…わかりました。不二先輩とだったら諦めもつきます。…先輩、お幸せに…でも、誰と付き合ってても私は、変わらず先輩のこと大好きですからっ!!」
そう叫んで駆けさっていく少女。
「えっあっちょっと待っ…」
が誤解を解こうと、彼女を引きとめようとしたときにはすでに、彼女の姿は見えなくなっていた。
「何でこうなっちゃったんだ?」
呆然としながら、は小さく呟いた。
「と、とりあえず不二にどうしようか聞いて見ないと」
はそう考えると、もう1人の当事者がいるであろう教室へと駆け出した。
は教室につくと目的の人物を捜してキョロキョロと上がりを見回したが見当たらない。
「あれ?どうしたの、ちゃん」
そう声をかけてきたのは菊丸。
「あぁ、菊丸。不二知らない?」
「えっ知らないけど…」
気まずげに視線を逸らす菊丸。
「何だよ?」
そんな菊丸を不審げに見る。
「あのさぁ…ちゃんって不二と付き合ってるの?」
「へっ?」
菊丸の問いに間の抜けた声をだす。
「…違うの?噂になってるよ」
そんなの様子に心配そうにそういう菊丸。
やっぱりかなり広まってるんだ…と固まる。
「…俺、不二は辞めといた方がいいと思うよ」
言いにくそうに口を開く菊丸。
「…不二、悪い奴じゃにゃいけど、たまにもんのすご〜く…」
怖いからと続けようとして青ざめて固まる菊丸。
「もんのすご〜く、何なのかな?」
不二出現。
そのままふふふと笑いながら、菊丸のほっぺたを左右にキュ〜っと引っ張る。
「いひゃいひょぉぉ〜(訳:痛いよぉぉ)」
「あ、この間より伸びるようになったね」
涙目の菊丸と満面の笑みの不二。
「…不二、話があるんだけど」
そんな2人の雰囲気に口をはさんでよいものかと戸惑いながら声をかける。
不二がの方を振り向く。
「いいよ…場所かえる?」
不二の言葉にこくんと頷く。
教室を出て行くと不二。
「…」
菊丸はひりひりと痛い頬を両手で抑えてそれを無言で見送った。
「…で話って?」
屋上につくと、不二が口を開いた。
「…噂になってる」
搾り出すような声でそう言う。
「?」
何のことかと首を傾げる不二。
「あたしとあんたが付き合ってるって噂になってる」
先程より声を大きくする。
「…そう」
静かにそう言って不二はに背を向けてグラウンドの方を見下ろす。
「この前のきっと誰かに見られてたんだよ」
「…」
「ねぇ、どうしようか不二」
そう言っては不二の制服の裾を掴んだ。
「…僕と噂になるの、そんなに嫌?」
真剣な不二の声。
「えっ」
「僕と付き合ってると思われると困る?」
そう言って振り向いた不二の顔にはいつもの笑顔はなかった。
「…そんな」
そんな不二を見てはまた金縛りにかかる。
「そう言えば、この前の返事もらってないよね」
に1歩近づく不二。
「…あっ」
不二から1歩退く。
「聞かせてよ、今。さんが僕の事どう思ってるのか」
「…」
「ねぇ…」
「…分からないんだ」
「…」
「不二の事嫌いじゃない…と思う。でも、付き合うとか、付き合わないとかっていうのは…まだよく分からない」
「…」
「だからどう言っていいのか分からない」
そんなの答えを聞いてクスッと笑う不二。
「そっか。じゃあさ、僕とこう話すのって嫌?」
ブンブンと左右に首を振る。
「…好きだよ、」
不二にそう言われかぁぁと赤くなる。
「な、何だよ、突然」
「今ドキドキしてる?」
「あ、あぁ」
心臓を抑えて後ずさる。
「じゃ、さんは僕の事好きなんだよ。じゃなきゃそんなにドキドキしないよ」
満面の笑みを浮かべる不二。
「…そう、なのか?」
「そうそう」
不安げに不二を見るとニコニコと笑っている不二。
「そうか…あたし不二が好きなのか」
訳がわからないままなぜか納得してしまう。
そんなを楽しそうに見ている不二。
「付き合うって言うのが分からなくて不安なら、まだ付き合おうなんて言わないから…その代わりさんの一番近くに常に僕がいていいんだって許可が欲しいな」
「そんな事だったらかまわないよ、別に」
そう言うににっこりと微笑む不二。
「じゃ、もうこれでさん僕のだからね。これからもヨロシク」
「あ、あぁ」
「かわりに、僕はもうさんのものだから」
「あ、あぁ」
微笑む不二と何か違和感を感じるでした。
「噂だったのかなぁ」
部活中、大石にそう尋ねる菊丸。
「さぁな」
にっこりと微笑む大石。
「でも、あの噂ってさぁ…」
辺りをキョロキョロと見て警戒しつつ、小さな声で言う。
「不二が率先して広めてたよね」
「でも、あれ以来、女の子に騒がれなくなったんだろう、彼女」
苦笑する大石。
「あっそう言えば」
「だったら、よかったんじゃないか、たぶん」
「そう…なのかなぁ」
その時何なら殺気を感じて、冷や汗をかきつつ、それ以上この話題に触れる事を避けたゴールデンペアでした。
(Fin.)
反省文
第2弾☆いかがだったでしょうか?
今回あまりギャグありませんねぇ…と、いうのも私の頭の中で不二が『…僕の邪魔しようなんて考えていないよね』そう言ってクスッと笑うからなのです。
…逆らえませんでした。
私も命が欲しいんです…ごめんなさい…。
だんだん私の中の不二像が"僕が法律キャラ"になりつつあります。
フェミニストのイメージが…。
いや、あんな事をしたのも彼女のためなのです。
きっと彼女の事を思って…あぁごめんなさい。
でも書いてて個人的には楽しかったです。
駄目人間です。
不二にのまれないよう精進精進です。
■戻■