「ねぇ、いいでしょ」
「駄目だ」
「何で?」
「何でもだ」
「何でもって何で?」
「何でもって言ったら何でも、だ」
「…」
「…」
「…お兄ちゃんのケチ、意地悪」
「…」
「もう、何で駄目なの。いいじゃん、この前と違ってちゃんと許可取るなら」
「許可してないだろう…とにかく駄目なんだ」
ぷぅっと膨れて拗ねたように手塚に背を向けてしまう。
そんなを見て手塚はちょっぴり悲しくなってしまう。
手塚兄妹がもめている事とは、が青学に行きたいといっている事についてだ。
一度青学に練習を見に来て以来、は手塚にまた遊びに行きたいと毎日の様にねだっていた。
しかし、手塚は決してそれを許そうとはしない。
理由は1つ。
『可愛い妹に変な虫をつける訳にはいかん』
という事らしい。
しかし、そんな事を手塚が考えているとはが知るはずもなく、ただ手塚が自分に意地悪をしているのだ、と思い込んでいる。
「…どうしてそんなに来たいんだ?」
膨れて、背を向けてしまったに手塚はため息混じりに尋ねる。
「…だって、テニスしてる時のお兄ちゃんってかっこいいんだもん」
ふてくされたようにボソッという。
『あと、あの、優しい大石さんにまた遊んで欲しいし、他の部活の人も面白そうだから』
とは思っているが、以前大石を理想のお兄さんだと言って手塚の機嫌を損ねた事があるので、そっちは口にはしない。
一方手塚は、がいったかっこいいというフレーズが頭の中をリフレイン中。
思わず口の辺りが緩む。
「そ、そうか?」
ちょっと…もとい…とっても嬉しそうな手塚。
その様子は、普段眉間にしわを寄せて部員たちをグラウンドを走らせているのとは同一人物とは思えない。
「かっこいいお兄ちゃんもっと見てみたいのに…」
駄目押し。
「…仕方ない奴だな」
と兄の威厳をかもし出すように、わざと眉間にしわを寄せて手塚はそう言った。
しかし、内心は、それとは違い、ぱぁぁと花が咲き乱れているような心境である。
「…その代わり、俺の言う事はきちんと守るんだぞ」
そう言って、手塚はの頭をポンと叩いた。
「行っていいの?」
嬉しそうに手塚の方を振り向く。
「あぁ…その代わり…」
「もちろん、ちゃんという事聞くぅ。ありがとうお兄ちゃん」
大好き、といって飛びついてくるに困ったもんだと思いつつも、顔が緩みっぱなしの手塚であった。
次の日曜日。
嬉しそうにぴょンぴょンはねていると、今更ながらに後悔をしている手塚。
「…、何度も言うようだが…」
「部活の人達にはあまり近づかない。話し掛けられたり、どこかに連れていかれそうになったらすぐにお兄ちゃんを呼ぶ事でしょ?」
「…そうだ」
「もう、耳にたこが出来ちゃうよ。大丈夫、おとなしくして練習の邪魔なんかしないから」
にっこりと笑うを見て、そんな事じゃないんだがなぁと複雑な心境の手塚。
何にせよ、今日一日、妹を守り通す事を固く誓う手塚であった。
■戻■