「手塚、おーい手塚ぁ」
名前を呼ばれ、手塚ははっといま自分が何をしていたのかを思い出した。
一緒に勉強をやろう、という事で、の部屋にきていたのだ、と。
の両親は共働きで、今この家にいるのはと手塚2人だけ。
信頼されている、と言うのは嬉しい事だが、それが時に手塚にとっては非常に苦しい事であったりもする。
「…何だ?」
手塚はそんな考えを振り切るように、何もなかった様に装うとする。
「何だ、じゃないよ。問5の答え、何になった?」
シャーペンをくるくると回しながらが尋ねる。
「あ、あぁ…x=12だ」
手塚は自分のノートを見ながら、出た答えを言う。
「ん、よしっと。終了ー」
どうやら、の方も答えが一緒だったらしい。
はノートを閉じるとバタンと後ろに倒れ、うーん、と伸びをした。
手塚はそんなをじっと見ている。
はフゥ〜と息を吐き出して全身の力を抜ききって天井を眺めていたが、ふっと手塚のほうに視線を向けた。
と手塚の視線が交差する。
手塚は反射的に視線をから逸らした。
「…やっぱ、最近の手塚変だよ」
は静かにそう言った。
「そんな事は…」
無いと手塚は続けようとしたが、それは口からは出てこなかった。
目の前には真っ直ぐに手塚を見つめる瞳があったから。
起き上がったが手塚の目の前にいる。
「無いって、私の目を見てちゃんといえるのか?」
「…」
真剣に自分を見るその視線に手塚は黙り込んでしまった。
「また、黙り込むのか…?」
静かにそう言ったの顔が一瞬歪む。
は顔を伏せ、手塚から離れようとした。
手塚は、そのまま気持ちまで離れていきそうな不安に襲われ、を強引に自分の腕の中へと引き寄せた。
「な、て、手塚!?」
は突然の手塚の行動に焦って、反射的に手塚の胸を押し返そうとするが、それはびくとも動かない。
「」
普段は苗字でしか呼ばない手塚に、下の名前で呼ばれは一瞬ビクッと身体を震わせたが、その後、手塚を押し返すのをやめ大人しくなった。
「…」
手塚は低い声でもう一度の名前を呼んだ。
「…」
は返事をせず、代わりに手塚の胸に頭を寄せた。
を抱く手塚の腕にほんの少し力がくわえられた。
「…手塚」
小さな声でが手塚の名前を呼んだ。
「ん?」
穏やかな声で聞き返す手塚。
「あの…腰、痛いんだけど…」
それまでの甘い雰囲気がぴたっと止まる。
手塚の視線がの腰の方へゆっくりと移動する。
手塚によって強引に引き寄せられたため、の身体は変な方向によじれていた。
「す、すまん」
慌ててを自分の身体から離す手塚。
「…ごめん、言おうかどうしようか迷ったんだけど、ちょっと辛くて…」
苦笑する。
「いや、俺の方こそすまなかったな」
の身体を支えつつ、視線を伏せる手塚。
「そんな…」
も視線を伏せる。
「…」
「…」
沈黙。
「じゃ、俺はそろそろ…」
から手を離し立ち上がる手塚。
「あ、うん…また明日、学校でね」
も顔をあげる。
「…あぁ」
手塚はの家を後にした。
次の日。
「手塚」
着替え終えた手塚に不二が声をかけた。
手塚が不二の方を振り返る。
「なんだ?」
手塚は不二を正面から見据える。
「ちょっといいかな?」
いつもの笑みを浮かべて不二は目線で手塚に外に出るように示し、部室を出る。
「…」
手塚も無言のままその後へと続いた。
「どうかしたのか、あの2人」
そんな2人の様子を心配そうに見送る大石。
「大丈夫。別に大した事じゃないと思うよ」
そんな大石に乾は口元に笑みを浮かべたそう言った。
一方、手塚と不二は人の少ない体育倉庫の方へと向かっていた。
校舎の影になっている所でぴたっと不二の足が止まり、手塚もその歩みを止めた。
「用件はなんだ?こんな所まで連れてきて」
心なしか手塚の視線が鋭くなる。
こういうときの不二は何ともいえないプレッシャーをその小柄な身体から発している。
不二はいつもの笑みを浮かべたまま、手塚に近づく。
身構える手塚。
「はい、これ」
そう言って不二は掌に乗るほどの小さな紙袋を手渡す。
その袋には有名チェーンドラックストアの名前が印刷されていた。
「これは?」
渡されたその袋を見て怪訝そうな顔をして首を傾げる手塚。
「乾によるともう2,3日経ったら使えるらしいんだけどね。手塚ってそういうの買えなさそうだから、僕からのささやかなプレゼント」
そう言って不二はふっと笑みをこぼす。
「不二…」
これは一体何だ?と尋ね、袋を開けようとした手塚の言葉を乾は手ですっと制する。
すっと不二の目が開いた。
「家に帰ってから見てくれる?…気をつけた方がいいよ、女の子ってあっという間に表情が変わっちゃうんだ。男はすぐに理性を奪われる。暴走してもね、ちゃんと守るべき所は守らないと…」
不二の言葉に手塚は目を見開く。
「好きならきちんとしないとね…今の僕達じゃまだ守りきれない事も沢山あるんだから」
「…」
手塚は黙って不二を見つめる。
「ま、頑張って」
不二はいつもの笑顔に戻ると手塚の肩をポンと軽く叩き、1人部室の方へと戻っていった。
「…」
家に帰った手塚は今日不二から貰った包みを開けて固まっていた。
袋の中から出てきたのはいわゆる避妊用具。
「…どうしろというんだ」
手塚は深くため息をついた。
どうやら自分の理性が限界に近いことに不二…と乾には感づかれているらしい。
嫌なやつらだ、と心の中で毒づく。
自分の事をよく知っているからこその行動だと分かっているだけに、何とも言いようもない悔しさを感じる。
手塚はそれを引き出しへとしまうと、ベットに寝転んだ。
両手を上にかざして、この間、を腕に収めたときの感覚を思い出す。
正直、あの時は制御がきかなくなりそうだった。
あのまま欲望のままに自分のままにしてしまいたい、という気持ちが自分の中にあったことを否定はできない。
の気持ちを無視して事に及ぼうと言う気持ちは無い。
だが、しかし、早く自分のモノにしてしまいたい。
自分だけがにとって特別なのだと言う証がほしい。
誰よりも自分がの近くにいるのだという証がほしい。
自分に対して自信が持てる証がほしい。
「…くっ」
手塚は低く声を漏らすと自分の頭を抱え込んだ。
3日後、手塚は勉強を一緒にするという事で再びの家を訪れた。
「」
「えっあっ何!?」
手塚が声をかけるたびにの身体がびくっと跳ね上がる。
「…この問題なのだが」
「あ、そこ?それはねぇ…」
明らかにこの間とは違う雰囲気が2人の間に流れていた。
手塚はの横顔をじっと見つめ、すっと手を伸ばしその顔にかかった髪の毛を上げた。
は、驚いたように手塚の方を見た。
手塚はそんなを見てふっと微笑んだ。
「何て顔をしてるんだ?」
「へ?」
ははとが豆鉄砲をくらったような顔をしている。
に背を向け、声を殺して笑い肩を震わせる手塚。
「な、手塚!?」
は手塚の行動に戸惑う。
手塚はなおも、肩を震わせている。
「手塚、笑い過ぎっ」
そんな手塚の様子を見て、もふっと笑みをこぼし、笑い出した。
「お前はその方がいい」
手塚が再びの頬に触れた。
今度はは震えない。
静かに手塚の顔を見上げている。
手塚はの顔を上に向かせながら、ゆっくりと自分の顔を近づけた。
最初は唇を合わせるだけだったが、角度を変えてそれが次第に深くなっていく。
手塚は位置を移動し、の背中にもう片方の腕を回した。
が手塚の服をきゅっと握りしめる。
手塚はそこで一旦口づけを止めての顔を見た。
「嫌だったら言ってくれていい…」
の様子を伺うように言う。
はやや開いた唇をきゅっと噛み締めると小さく左右に首を振った。
手塚はほっとしたように微笑むと再びの唇を塞ぎ、の身体をゆっくりと後ろに倒していった。
その後しばらく2人は、角度を変え、深く口付け続けた。
次第にの身体から力が抜けていくのを察した手塚が頬に当てた手を下へ移し、ふくらみを包み込む。
手塚の手がそこに達した時の身体がビクッと一度跳ね上がったが、の手は手塚を振り払わない。
「…本当にいいのか?」
再び手塚が尋ねる。
はこくんと頷くと、静かに目を閉じた。
(Fin.)
反省文
知らぬは本人達ばかり9いかがだったでしょうか?
携帯版視点α5000Hit突破です。
これも皆様のおかげです。ありがとうございます。
さて、リク内容は前回の裏続きと言う事だったのですが、どうでしょう?
シリーズの1から読み返したところまだ2人はキスもしてない清いお付き合いだったですよ…てっきりもう書いていたような気になっていたのですが、まだでした。
…結果2人の初チュー…そのまま勢いで…。
若いな、手塚。
手塚が本当に彼女を大切にしている雰囲気を出したかったのですが…どうでしょう?
この後…?
この後はぁ…アダルティーギャグに走りそうなのでやめときます。
ご想像にお任せします。
書き逃げ状態です。
だって綺麗に終わらせたかったんですよぉ。
続きは気が向いたら…気分次第で…もしくはリク頂ければ…って事で…。
書き終えて個人的に彼女視点で書きたいかもかも…と思ったり。
どっちかというと手塚視点ですからねぇ…
う〜ん…それも気分次第で…。
読んでいただきありがとうございました。
感想などいただけると嬉しいです。
2003.0913
■戻■