駅に行く途中。
「うわ〜そんな風に作ってるんだ」
聞き覚えのある笑い声に、手塚は足を止めて振り返った。
「あれ?ねぇあそこにいるのってさんじゃない?」
通りの向こう側を歩いているの姿を見つけて不二は手塚の方を振り向いて指をさす。
不二は、手を振って声をかけようとしたが、悠樹が一人で歩いているのではなく、連れがいると知り、背伸びをして、その存在を確かめようとした。
『と一緒に居るのはもしや…?』
見覚えのある長身を見て、手塚の胸中は穏やかではない。
「あれ?さんと一緒にいるの、乾だよね?」
「ああ、そうみだいだな」
不二の問いに仏頂面で手塚はそれだけ呟くと、食入るように、二人を視線で追った。
『なんで、あの二人が一緒に居るんだ?』
手塚の不機嫌さは隠しようもない。
眉間のしわがこれ以上ないというくらい濃くなる。
「手塚、どうしたの?顔色が悪いみたいだけど」
「何でもない」
顔に出てしまったかと、反省したが、2人が気になるのは事実である。
2人というよりも楽しげに笑うが。
「どうして、あの二人が一緒にいるのかなぁ」
「…さぁな?」
不二の問いにますます表情を険しくする手塚。
そんな手塚の様子を見て、手塚に気付かれないようにこっと微笑む不二。
「いいだろう、不二。そんな事より行こう」
これ以上2人を見ていたくないと、手塚が不二をせかす。
「2人の後をつけよう、手塚」
不二は真剣なもの持ちで手塚に言う。
「…何?」
手塚は驚いて目を見開く。
「不二、何を言って…」
「手塚は気にならないの?」
言い終わらないうちにそう不二に力説され、手塚は言葉を詰まらせる。
気にならないはずがない。
こうして不二と言い合っている間もあの2人の事が気になって気になって仕方が無いのだから。
「行こう、手塚」
そう言って不二は手塚の腕を掴み、人ごみに隠れるように歩き出した。
車道を挟んで、2人は達の後を追う。
車の通りが激しく、歩道には人通りも多いので、見つかる危険は低いが後をつけるのはかなり骨が折れた。
尾行に前を行く2人は全く気付かないようだった。
「俺はただ部員の健康のためを思っているだけなんだがな」
「誰のせいで、みんなが練習中にコートから駆け去ってると思ってんだよ!この前は自分でも飲めないモノ出してきてさぁ」
大声で笑い合っている、二人は周りからかなり注目されていた。
特に乾は長身のためか、周囲から突出していて目立っている。
ったく、本当にこいつと歩くと目立つなぁ。
涼しげな顔をは、しげしげと眺めた。
「どうした?俺の顔に何かついてるか?」
「いや、眼鏡以外は特に突出したものはついてないよ」
「それは、どういう意味だ…とここだ」
ちらりと乾は視線を後ろに向け、それからすっと指をさす。
そこは可愛らしい雑貨屋さんだった。
「へぇ、乾ってこんなお店も知ってたんだぁ」
意外と大きく顔に書いて、は驚いた。
横にいる長身の男からはこんなファンシーな雑貨屋を知っているとは思えない。
『やっぱ乾って謎が多いな…もっと分かんない奴もいるけど…』
ある人物の顔が頭に浮かんできて、の顔がちょっと暗くなる。
その顔を思い出して、は小さくため息をつく。
『…今頃アイツ何やっているんだろ。』
部活が休みである今日、は手塚に電話をしようかとどうか悩んでいた。
それでも、行動に移す勇気が出せず、買い物に付き合ってほしいと言う乾の誘いに乗ってしまった。
でもそれは理由がないわけではない。
乾の誘いを受けたのは、このあいだの答えを教えてもらいたかったから。
"簡単に分かったら面白くない"と乾は言ったが、あの答えが分かれば今の手塚との気まずい状態を何とかできるとは本能的に感じとっていた。
手塚が気付いてほしい事に気付ければ、今の気まずい状態も無くなるのでは無いかと。
この間自分が言った事を彼は気にしていないだろうか。
無表情で情緒が欠落しているように見えて、彼は案外繊細で傷つきやすい所もあるから。
自分の言葉が彼を傷つけていないだろうか。
何となく、手塚の様子が気に掛かる。
は、まさか自分のすぐ後ろに居るとは、微塵も思っていない。
「なにしてるんだ、行くぞ」
「あっ悪い。ボーとしてた」
2人は雑貨屋に入っていった。
「よかったね、いいの見つかって」
「あぁ今日は付き合ってもらって悪かったな」
「いや、結構楽しかったよ」
2人は先ほどの雑貨屋の近くの公園に入ってベンチに座る。
「で、俺に聞きたいことって言うのは?」
「この間の答え。ヒント貰ったけどやっぱりわかんなくてさ」
「なるほど」
キランと乾の眼鏡の置くが光る。
「でも、俺から言うのはどうかと思うし」
「…」
「そんな顔するなよ。答えはそこにある」
そう言って乾はすぐ傍の茂みを指差す。
「あっ」
指差された方を見て、は大声を出してしまった。
「手塚っ!それに不二っ!何でそんな所にいるんだっ!」
驚いて、3人の顔を見比べる。
『乾、知っていたのか』
気まずげに視線をそらせる手塚。
「ひょっとしたら、最初から居たのか…?」
そんな手塚の雰囲気に事を察する。
「ああ…」
気まずい雰囲気に手塚は、の方を見られない。
そんな手塚を見ても固まっている。
『本当にビックリした。まさか、こんな所に手塚がいるなんて考えもしなかったから』
「答えは、本人に直接聞いた方がいい」
そう言って、乾はの頭をポンと叩きベンチから立ち上がる。
「えっ…」
「ついでにちゃんと仲直りもして来い。行こう、不二」
そう言って乾は歩き出す。
「ドキドキしたでしょ?ちゃんと捕まえておかないと、チャン誰かに取られちゃうよ」
去り際に不二が手塚の耳元で囁いた。
「!?」
『お前ら、最初っからそのつもりで!』
去っていく2人をキッとを睨み付ける手塚。
「手塚、ごめん、あの、この間は言い過ぎたと思ってる。悪かった」
ぺこっと頭を下げる。
「いや、俺のほうこそ…」
突然謝られ、勢いがそがれる手塚。
「…あの、さ。あたし色々考えたんだけど、やっぱり分かんないんだ。手塚が、何に気付いて欲しいのか…」
驚きに目を見開く手塚。
「…教えて、欲しいんだけど」
きっと手塚を真剣な目で見つける。
「それは…」
その真剣な目にたじろぐ手塚。
「それは」
詰め寄る。
「部活以外では、お前にあえないだろう」
「だから?」
「…鈍いな」
「はぁ!?訳分かんないよ」
「…つまり、俺は、その、お前気になって仕方ない、という事だ」
「それって…」
「もう、分かるだろう」
「はっきり言って欲しいんだけど」
「言えるか、そんな事」
「ふーん」
「そう言うお前はどうなんだ?」
「えっ」
「お前は俺の事をどう思っているだ?」
「そ、それは…」
「それは?」
「その、私も」
「私も?」
「もう、分かるだろうが」
「はっきり言って欲しいんだがな」
そういって手塚が笑う。
先ほど自分が言った事と同じ事を切り返されて反論できずには膨れる。
「よかった」
手塚の腕の中にすっぽりとおさめられる。
「ちょ、ちょっと、手塚」
慌ててそこから抜け出そうとするが、なかなかそうはさせてもらえない。
そのうち抵抗を諦めて大人しくなる。
「…ところで、今日は何故乾と?」
耳元で囁かれ、の体がビクッとする。
「…母親への誕生日プレゼント選ぶのに付き合ってくれって言われたから」
小さく答える。
「そうか」
ほっと小さく安堵のため息をつく。
やはり、そこが引っかかっていたらしい。
「…なんか手塚性格違うよぉ」
そう言って腕の中から真っ赤になって手塚を見上げる。
「嫌か?」
「…嫌、じゃないです」
やはり、青学NO.1は強かったらしい。
次の日。
「…結局あの2人って上手くいったのかな?あんま変わんない様だけど」
グランドを走らされながら不二が言う。
コートから喧嘩腰の2人の声が聞こえる。
「さあな」
隣で走っている乾がそう言う。
「だが、今日の2人の目は今までと違って穏やかだったし、手塚も普段に比べて表情が豊かだ。の鼻歌を口ずさむ回数も多いかったから」
「じゃ、上手くいったんだね…だったか僕らは走らせなくてもいいと思わない?」
「まあそこが手塚の手塚たる所だからな」
そう言いながら、2人のキューピットはグラウンドを淡々と走っていった。
(Fin.)
反省文
さてリク第3弾☆いかがだったでしょうか?
もう少しギャグを盛り込みたかったなぁと言うのが心残りですが、これ以上長いのもどうかと思ったり…。
何か1の方とキャラが色々変わってしまっていますね、ごめんなさいぃ。
自分は書くときのテンションがもろ文章に出るタイプであると言う事が発覚いたしました。
当初不二と乾が配役逆でしたが前作で 悠樹ちゃんが乾に相談していた事もあり変更…で今回乾が美味しいとこもってってます。
いいお兄ちゃんって雰囲気をかもしまくりです。
今までギャグ担当だった分いいかなと…。しかし結果、設定上計画発案は不二のはずがその辻褄が合わなくなった感が…。
精進精進ですね。
手塚遂に彼女に言いましたが彼は素直にいえないんですよ、で両想いと分かったら途端に強気。
大人びて見えてもまだまだ中学生ですから恋愛に付いてはまだまだ不安いっぱいなお年頃ってことで…まあ、幾つになっても恋愛に不安はつきものかもしれませんが。
もしよろしかったら感想なんぞお待ちしております。
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