突然に倒れられ、青学レギュラー一同は焦った。



「とりあえず、ソファーに運ぼう」

桃城が運ぼうとを抱き起こそうとした瞬間…。



ぷにっ。



「……?」



ぷにぷに。



「……(汗)」



ぷにぷにぷにぷに…。



「うわっ!?」

あわてて手を離す。



「何を遊んでるんだい、桃」

「えっと、不二先輩なんかこいつ胸のあたりがぷにぷにしてるんですけど」

「えっ」



ぷにぷに。



「…本当だ」

顔を見合わせる二人。



「と、とりあえず、ソファーに運んでよ」

「う、うっす」



とりあえず、無事に運ばれたのだが、胸ぷにぷにのことが全員に伝えられる。





「本当に女の子なのかな」

「うん、たぶんBだね」

「おいおい不二」



「いいなぁ、不二と桃。俺も触ってみたかったニャー」

「……でも本当に女の子なら、なんで、この子男の格好してんのかな、学校でも男子生徒としてでしょ」

「実に興味深いね」

「…でも、隠してるってことは知られたくないんじゃないんすか?」

「じゃ、知らない振りする?」



「……」



「…んっ」



何とも論点がずれた議論の中が意識を取り戻した。





「大丈夫か」

頭痛がするのか軽く頭を抑えつつは上体を起こした。



「あ、すみません……急に立ちくらみがして……」

「いや、」



『……』



き、気まずい。



重い空気が空間を支配する。



「…、お前……」

女なのか?とストレート過ぎる問いかけをしようかとした手塚だったが……。



「なんでしょう?」

ちょっとつらそうに目を細めては手塚を見上げる。

その儚げな仕草にその場にいた者は全員目を奪われる。

手塚も問いかけをそれ以上続ける事はできなかった。



「……いや、何でもない」

やや、頬を赤らめて、手塚はから視線をそらす。



「?」

そんな手塚を見ては不思議そうに首を傾げる。



『か、かわいいかも』



全員が思った。



「立ちくらみ?大丈夫?」

そんな状態からいち早く行動を起こしたのは不二。

不二は、にっこりといつものスマイルをに向けさりげなく肩に手をまわす。



『アァッ!!』



と不二以外が声にならない叫びを発する。



「え、あ、はい。ありがとうございます。もう平気みたいです」    

突然肩に手をまわされ、ビックリしつつもは、身体を支えてくれている不二にお礼を言い、笑顔を向ける。      

相変わらず、顔色は悪いが。



「そう?よかった。でももうちょっと休んでた方がいいかも。遠慮なくよりかさってくれていいからね」

ニコニコと笑顔を向ける不二に次第にプレッシャーを感じ笑顔が引きつり先程とは別の意味で冷や汗をかき始める



微妙な雰囲気が流れる。



その雰囲気を壊したのは



「ねぇねぇ、さっきの話だとさぁ。えっと…………君は、怪我は治ってないのかにゃ〜?」 

英二だった。

英二の問いかけにの肩がピクッと震える。



「……一応、医者からは完治したと言われてますけど。……後は俺の気持ちの問題で」

言いにくそうにが視線を伏せる。



「にゃ!?ごめんねぇ!?俺別に責めてるわけじゃないんだよぉ〜。……ただ何かさぁ、テニスできない興味ないとか言ってるけど、さっき一度もテニス嫌いだっていわなかったから、ちょっと気になって……」

後半声は段々小さくなる。

英二としてはに悲しい顔をして欲しくなくて慌てて謝る。

その言葉を聞いては驚いたように英二を見上げる。



自分でも気付いていなかった気持ちを言い当てられたような不思議な感じがした。

確かに自分はテニスが嫌いだとは一言も言っていない。

むしろ今もテニスをやりたくてたまらないのだ。



でも……。



「……怪我への恐怖心の克服さえできればテニスをやってもいい……むしろやりたいということか」

乾が眼鏡を上げつつに尋ねる。



「……」

沈黙が肯定を示す。



「……でも、それがなかなか難しいから、悩んでいるんじゃないかなぁ?」

控え目に河村が発言する。



「無理はいえないけど、完治しているなら、少しずつでもテニスに慣れていく事で復帰できるんじゃないかな」

と、大石。



「……」



沈黙を続ける。  



俯いたままのに手塚が話し掛ける。

「……俺とやったとき、お前は夢中でテニスができただろう?……怪我の事も忘れてテニスができたんだろう?……だったら、俺がテニスをお前に戻してやる。怪我の事なんて忘れさせてやる。俺がお前に夢中にさせてやる」



強い視線。



手塚は言葉を続ける。



「だから、一緒に思いっきりテニスをしよう。俺はお前とまた戦いたい。お前は俺と戦いたくないか?」

それを聞いて、の顔色が明らかに変わる。



「な、何を言って」

正直言えば、また手塚と戦いたい。

はじめて手塚のフォームを見たときの感じ。

アメリカにはもっと強い奴は大勢いたけれど、手塚と戦った時は、アメリカにいた頃には感じられなかった独特の感覚を味わった。



「……テニスが好きなんだろう?だったら迷う事は無い。今この手を取らなかったら、きっと、甘えは一生テニスに戻れないぞ」

「……」

「俺達と一緒にテニスをやろう。俺がお前にテニスを戻してやるから」

手塚がに手を伸ばす。



周囲の人間が息を飲む。



手塚はいつもマジメで真剣だが、これ以上真剣な手塚は誰も見たことがなかった。



臭い台詞連発だが、誰も口をはさめない。



は深くため息をついた。

そして、憂いを含んだ瞳で、手塚に微笑みかける。



「……俺は、プレイするのが怖い。でも、本当はそんな気持ちを転換するために、僕は日本に来たんです。でも、なかなか一人ではその一歩を踏み出す勇気がなくて……」

「怪我は完治してるんだろ?あとはお前の気持ち次第だっていうなら、お前が手を伸ばせば、引っぱりあげてやる。……幸いうちには行き過ぎないようブレーキをかけてくれる奴も細かい点に気付く奴も健康管理にうるさいのもいるしな。お前が行き過ぎて過剰リハビリなんてことになったら調整もしてくれるさ」



「テニス、やるよね」



「……」



「どうするんだ、決めるのはてめぇだぞ」



「……」



「俺達もできうる限り君のフォローをするし」



「……」



「無理はさせないから」



「……」



全員の視線が集中する。





「……分かりました。」





は、ようやく顔を上げた。



手塚の手を取り立ち上げる。

「よろしくお願いします」

その顔は先ほどとはうって変わってどこか晴れ晴れとしていた。















帰り道。





「でも、女の子なのになんであんな格好をしているのかな?」

ふと、河村の口から出た言葉。



説得に夢中ですっかり忘れていたが、は、確かに女の子だった。

しかも、かなりかわいい部類の。



「……」

だれも答えることはできない。



「でもさぁ、あそこまでして隠しておきたいことなら、秘密にしておいてあげようよ」

菊丸が言う。



「でも、そのうち他にもばれるんじゃないっスか?どうしたって女が男の振りするのって無理がある」

いつになく饒舌な海堂。



「確かに。思春期に入って体系も男女の差が出てきて次第に変わっていくわけだしな」

めがねを上げつつ乾が言う。



「そう言えば手塚、彼女に女の子じゃないか?って聞こうとしてたんじゃないのか?あの時なんできかなかったんだ」

大石が手塚に尋ねる。



「……」

気まずそうに視線をそらす手塚。



「彼女かわいいもんね、あんな顔されちゃきけないよね」

不二がにっこりという。



「……」

ますます気まずそうに視線をそらす手塚。



「……夢中にさせるのはテニスだけにしておいてよね、手塚」

開眼した不二に冷や汗をかき、視線をそらす手塚。        



「ねぇねぇ、じゃあ、こうしようよ。何でかはわかんないけど、ちゃんは女であることをまわりに知られなくないんでしょ。でもそれを一人で隠し切るのはきっと不可能だよ。だったら、俺らをそれを隠すのを協力しようよ。何か秘密組織みたいで面白そうだしぃ。その方がきっと彼女も助かるんじゃない?」

英二が提案した。





"のために"





全員の目の色が変わりが同意する。



「……でもばれたりしないかなぁ」

「練習だけならともかく、試合とか、規定違反だからな、ばれたら公の場で彼女のことが発表されてしまう」

心配そうなのは、大石と河村。



「そんなこと心配しても始まんないっすよ。大丈夫。きっとばれたりしないっすよ。だってあの子は表向き男子生徒なんすから」

と桃城が笑う。



「俺達がフォローにできる限りまわる。そうすれば大丈夫だろう」

と手塚が続けた。



「ただ、彼女にも俺たちが女だって事を知ってると気づかれないようにしないと……」

乾の指摘。



「一致団結して、ことに望むぞ。明日から気を抜くなよ」

手塚がしめて、解散となった。





「さて、明日から、お姫様を守ってやんないとな、いけね―な、いけね―よ」

そう言って桃城は大きく伸びをした。










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