編入試験から1週間ほどして、結果が の元に届いた。



結果は合格。



は祖父と一緒に編入の手続きを終えて、お弟子さんたちをまき、二人で祖父の行きつけらしい寿司屋に行った。

格式高い華道の家元というのではなく、ただのなじみ客の老人と言う事で食事ができる数少ない場所だとかで、お弟子さんたちには内緒にしていたいらしい。



仕事に追われた時の隠れ家の一つなんだな、と、は考えながら、祖父の横の椅子に座る。



「いらっしゃい、爺さん久しぶりだな、しばらく来ねーから、おっ死んじまったかと思ったぜ」

「なになに、ワシはまだまだ死なんよ」

いつもの気を張って威厳ある祖父とは違った一面を見せられは言葉を失う。



おっ死んだって……威勢のいい店の親父さんと、祖父との会話に内心苦笑する。



祖父がの肩に手を添える。

「ワシの孫のじゃ、しばらくこっちにいることになってのう。今日は、学校が決まったから祝いがてら寄らせてもらった。特別美味いのを頼むぞ」

「そーかい、そいつあ、よかったな。とびっきり美味いのを出してやるよ爺さん」

自分のことのように喜んで、おめでとうといってくれる店の主人にお礼を言い、は寿司を注文する。



「そういや、どこの学校に編入するんだい」

寿司を出しながら、主人が聞く。



「青春学園中等部の1年に編入します」

「ほほう、コイツは奇遇だ。うちの息子もおんなじ学校だよ、まぁ、学年はお前さんより1つ上だがな」

「そうですか」

この親父さんの息子さんなら、さぞかし騒がしいんだろうな、と思いつつ、は寿司を口に頬張った。



「ちょうどいいや。おーい、隆〜」

親父さんが奥に向かった怒鳴る。



声、大きいなぁ。



軽く耳を押さえる

祖父は楽しそうに笑っている。



「何?」

「いいからちょっと来い」

現れたのは大柄で温和そうな少年。



「親父、どうしたの」

「おぅ。この子今度青学に入るんだとよ」

「青学に入る?」

少し首を傾げる少年。



「編入するんだと」

「へぇ〜…」

少年は嬉しそうに笑う。



「よろしくね。えっと…」

です。よろしくお願いします。先輩」

「俺は河村隆。よろしく」

2人お互い笑顔を向けた。



「さて、祝杯と行くか。親父」

楽しげに声を上げる祖父。



「はいよっ爺さん」

新たな日本酒が差し出された。



「…お祖父様、ほどほどに」

の小さな忠告は祖父の耳には届いていなかった。















「すいません」

「いや、かまわないよ」

頭を下げたに河村はいつもの穏やかな笑みを向ける。



河村の背中にはの祖父。

可愛い孫の合格祝い、ということで少々は目をはずしすぎたらしい。

酔いつぶれてしまった。

年老いたとはいえ大柄な祖父をが背負っていけるはずもなく…。



最初、はタクシーを呼ぶといったのだが、近所なのにそんなことをすることはない、という親父さんのお言葉により河村が背負っていくこととなった。

河村の背でのんきに呼びつぶれてしまっている祖父の姿を見てはこんな姿をお弟子さんたちが見たら泣くだろうな、と1人笑みを浮かべる。



「ん?どうかした?」

「いえ、こんな優しい先輩がいる学校なら楽しみだな、と思って」

尋ねる河村を笑顔ではぐらかす。

河村は照れたように視線を上方にそらした。



「楽しくなるといいね」

ぽつり、と河村が言う。

首を小さくかしげたに河村は今度は笑顔で言った。



「学校生活」



「そうですね、楽しく、なるといいなぁ〜」

そう言っては視線を遠くに向ける。

河村は優しく微笑んでいた。










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