青春学園中等部3‐6組。
「進路なんてまだ考えられないよぉ」
先ほど分けられた進路希望の紙をピラピラとさせながらそう言って机にグダッと伏せってしまった菊丸を見て、不二とは苦笑する。
「確かに、今はまだ、部活で関東大会を勝ち抜いて全国に行くってこと以外考えられないよね」
不二はそう言って菊丸の頭をぽんぽんと叩いた。
「だ〜にゃ〜。それ以外なんて考えられないよぉ」
某アヒルの口真似英二アレンジバージョンをして、机に顎をつけたまま、菊丸は顔を上げた。
「だが、そんな事ばかりも言ってられないだろう?部活をまだ引退していないとはいえ、一応、私達も受験生だからな」
は口では厳しい事を言っているが、部活で次々と仕事をこなしている時と違ってその目はどこか優しげだ。
「うにゃ〜」
菊丸は再び拗ねたように顔を机に伏せてしまう。
「そんな事言うって事はさんは、外部受験するの?」
不二がに訊く。
その言葉に菊丸は顔をバッとあげてを見る。
「いや、少なくとも今の所は高等部に進学希望。あんた達は?」
は首を左右に振ってそう言うと、逆に2人に訊き返す。
「僕達もこのまま上に行くつもりだよ」
「で、また高校で一緒にテニスやるんだぁ」
そう言う二人には微笑む。
「…そう言えばさ、知ってる?」
不二が口を開く。
「手塚、ドイツに行くんだって」
『…えっ』
固まる。
「えぇ〜マジで!?」
『手塚が』
「うん、この間の跡部との戦いで肘またやっちゃったでしょ、治療のためらしいよ」
「ふーん、そうにゃんだぁ」
『ドイツに…?』
「やっぱあっちの方が医療進んでるしさ」
「すっごかったもんね、あの試合」
『じゃ、あたしは…』
ガタッ。
椅子から立ち上がる。
「ちょっと、トイレ」
教室を出て行く。
「…」
「…」
そんなの後ろ姿を見つめる2人。
「不二ぃ、ちゃんがこの事まだ知らない知ってて言ったんでしょ」
「あっわかった?」
「分かるよぉ」
「そう言う英二だって知ってたのに、今はじめて知ったような振りしてたじゃない」
「うっ…」
言葉に詰まる英二を面白そうに不二は見ていたが、窓の外に視線を移した。
「…あまりに進むのが遅いからさ、ちょっと背中を優しく押してあげたんだよ」
「どこが優しくだよ。背中を優しく押すって言うより、背中を思いっきり蹴り飛ばしたって感じだったけど」
「勢いついたんじゃない?」
くすくすと笑う不二に恐ろしさを感じ菊丸は1歩後ずさった。
「…不二、仲良くしようね」
不二は敵に回してはいけない。
そう強く感じた菊丸であった。
それから彼女は、毎日笑顔で過ごしている。
友達と話したり、笑ったり、部活中もその雰囲気は変わらない、きちんとマネージャーとしての業務を果たしている。
一見、何も変わらない。
しかし、
「最近、さんの様子変じゃないか」
部活中そう言ったのは乾。
「「えっ?」」
固まる不二と菊丸。
「何か、無理をしてるっぽいというか、元気がよ過ぎるんだよ」
そう言ってノートをペラペラとめくる乾。
『『恐るべし乾データ』』
不二と菊丸は、雷を打たれたような衝撃を受けた。
乾のデータ収集能力が高いのは知っていたがこれほどとは。
同時に自分たちのデータももたれている事が恐ろしくなる。
「何かあったのかな」
乾のその言葉に菊丸は不二をちらっと見る。
そんな菊丸を見て不二は苦笑した。
「ちょっと強く蹴りすぎちゃったかな」
「何の事だ?」
「秘密vv」
不思議そうに聞き返す乾に口元に人差し指を当てて笑顔でそう言う不二。
そして、コートの方へ視線を移す。
その視線の先には一見笑っている様に見えるの姿があった。
「…しょうがないなぁ、もう一人のほうもちょっと背中蹴ってこようかな」
そう、不二は小さく呟いた。
■戻■