「じゃ次の練習に移ろう。ボールの準備をしてくれるかな」
乾が少女の方を向いてそう言った。
いつもの何か策略めいた笑顔では無く、本当に優しそうな笑顔を彼女に向けている。
「はーい」
少女は元気にそう返事をするとコートの反対側へと駆けて行った。
すると、
ガッシャーン。
壮絶な音と共に波紋状に辺りが黄色に染まっていく。
その中心には派手に転んでいる1人の少女――男子テニス部マネージャー・ 。
「いったぁ――…」
そう言ってあげた顔には少し土がついているが、かなり整っていて、特に大きな瞳が人を惹きつける。
「…おい、大丈夫か」
一番近くにいた海堂がそう言って に手を貸そうとしたが、2人の間に不二がすっと割って入ってくる。
「大丈夫? さん」
そして、すっとの手を取って立ち上がらせる。
海堂の行き場を無くした手がしぶしぶと引っ込んでいく。
「あ、はい。ありがとうございます不二先輩」
助け起こしてもらってが不二にお礼を言っている間に周囲には青学レギュラー陣が集まってくる。
「さん、大丈夫?」
大石が心配そうに の顔を覗き込む。
「あ、はい、大丈夫です。すいません、あの、何かまた、ボールぶちまけて練習中断させちゃって…」
周囲に散らばるボールを見て苦笑する。
そしてしゃがみこんで、ボールを拾い始める。
それをみて周りにいた部員たちもボールを拾い始めた。
「気にすんなよ、ボール集めんの俺らも手伝ってやるしさ」
そうすりゃ、あっという間に終わっちまうよ、とにっと笑う桃城。
「…すいません」
また迷惑をかけてしまったとはしょんぼりうな垂れる。
「みんなでやればすぐ終わるし、そんな顔をしなくても大丈夫だよ」
河村が励ましにはこくんっと頷いたが、の表情は曇ったままなかなか明るくならない。
そんなを見て、
「すまない、俺があんな事言ったばかりに」
と、言うのは乾。
以上に落ち込んでいる。
「いえ、ちゃんと仕事がこなせなかったのは私の責任ですから」
いつもは淡々としている乾の落ち込む姿をを見ては慌てて手と首を左右に振る。
「気にする事は無い。ミスは誰にもあるものだ」
ボールを拾いながら、やや、視線とそらしつつ手塚はそう言った。
「はぁ…でも…」
自分を見ようとしない手塚に怒っているのかなと思っていると、菊丸がの後ろからひょいっと顔を出した。
「気にしにゃい、気にしにゃい、ね、ちゃん」
にっこりと笑う菊丸につられて、の表情もようやくほっとしたように笑顔になる。
「「か、可愛いぃ〜」」
そんな に目を奪われる青学レギュラー陣。
ただ1人を除いては。
「…まだまだだね、マネージャー」
ぼそっという
「こんなんじゃ、いつまでたっても練習できないじゃん」
「うっ…」
言葉が詰まる。
「「え〜ち〜ぜ〜ん〜」」
そんなを見てブラックはいる先輩s。
「何スか」
それを見て不敵に笑みをこぼす越前。
今にも喧嘩が始まりそうな勢いに慌てて留めに入る。
――部活後。
「はい。これ、よかったら…」
そう言っては○ァンタを越前に差し出す。
「…くれんの?」
そう訊く越前にこくんと頷く。
そして、越前がそれを受け取ると、消え入りそうな声で
「ごめんね」
と言った。
「?何が?」
「…練習中断させちゃって」
俯いてしまうを越前はちらっと一瞥し○ァンタを1口飲む。
「あぁ…別に気にしてないし」
いつものことじゃん、と付け加える越前。
「…」
その言葉にますます小さくなってしまう。
「…あんたさ、みんなの面倒一度に見るなんて向いてないんだよ。色んなとこ目向けれるような視野してないし」
そんな越前の言葉を聞いて、は、出てきそうになる涙を必死に堪えていた。
「あんたは俺だけを見てればいいんだよ」
えっ!?
驚いて顔をあげる。
目の前には、ちょっと上目遣いの越前の大きな目。
「ねぇ、俺だけのマネージャーになってよ」
唇に何かが触れる。
固まる。
しかし次の瞬間。
「っ痛」
派手にしりもちをつく越前。
は顔を真っ赤にして越前を思いっきり突き飛ばしていた。
「♀/売t∧φ☆!!!」
顔を赤面させ、意味の分からない言葉を発する。
「…まだまだだね」
そう言っていつもの余裕たっぷりの笑顔を見せて越前は鞄を持って歩き出す。
「待ってッリョーマ君!!」
「何?」
呼び止められて、足を止め振り向く。
「あの、今のって」
「告白のつもりだけど」
かぁぁとますます顔を赤くする。
「…あ、あの返事は…」
「いいよ。分かってるから」
さらりとそう言う越前。
「え?」
「あんた、俺のもんだし」
ニッと笑う越前の顔を見て、頭のてっぺんからつま先まで真っ赤になる。
「じゃ」
越前はすたすたと歩き始める。
「ま、一歩リードかな」
そんな事を呟きながら。
まだまだ気が抜けない。
手強いライバル達がいるから。
(fin.)
反省文
いかがだったでしょうか
私にしては珍しい掛け合い漫才無しの作品です。
うぅ〜越前いまいち行動がどう出るか読めません。
流石はルーキーです。
でも越前絶対好きな子いじめると思うんですよね…それで独占欲も強いの。
先輩達に「アレは俺のですから」とか宣言したり「何他の奴の面倒見てんだよ」って拗ねたり。
最初は気が強い女の子設定だったのですが…優しい先輩達の中で他と違って意地悪をする越前。それが原因で喧嘩…何でこんなに自分に構うんだ、気になる…みたいな…でも越前氏がそんな風に動いてくれませんでした。
精進精進です。
いつかまた、チャレンジしたいっすね、越前夢!
それでは、また。
■戻■