「英二先輩ゴチになります」
大きな袋を手にして嬉々としている後輩2人に菊丸は自分の財布にもう一度視線を落としため息をついた。
「もう今回だけだかんなっ。…あーぁ今月の小遣い」
「まぁまぁ」
笑ってなだめる桃城。
「あれ?3人ともこんな所でどうしたの?
3人は声がした方を振り返る。
そこに立っていたのは3年の。
「…あぁ。腹ごしらえってわけか」
各々が手にしている袋を見てことを察する。
「それ、全部食べるの?」
袋を指差し尋ねる。
「もちろんっスよ」
にっと笑って応える桃城。
「ふーん…英二君もよく食べると思ってたけどそれ以上だね、2人とも…特に越前、あんたそんなに何処に入るの?」
「育ち盛りっスから」
呆れ気味のに越前が淡々と応える。
「…ふーん。でも、ま、一杯おいしそうに食べる人っていいよね」
の顔が呆れ顔から笑顔へと変わる。
「そうなんスか?」
「うん、ちびちび食べるよりがばっと食べてもらった方が見てて気分よくない?」
「ん〜…まぁそれはそうかもしんないけど」
いやな予感がして、菊丸はちらっと桃城と越前の方を見る。
2人は食い入るようにの言葉に耳を傾けている。
「でしょ?男の子はちょっとくらい食欲旺盛のほうが3割り増しでカッコイイと思うよ」
その言葉に桃城と越前と肩がぴくっと動く。
が『まぁそれも限度ってもんがあるけどねぇ〜』と続けた言葉は彼らの耳には届いていないだろう。
2人は再び店へと駆け込んでいた。
「すいません、チーズバーガーとポテトのL追加で」
「じゃ、俺ビックバーガーとポテトのLとナゲット」
カウンターの少女に向かって叫ぶ2人。
「お、お前ら追加分はおごんないからな」
2人の背中に悲鳴に似た声を上げる菊丸。
「何言ってんスか」
「今日は英二先輩の奢りっスよね」
英二の言葉を簡単にそう返し注文を続ける2人。
「な、そんなに無理に決まってるだろ」
焦る菊丸。
「エビバーガー3つ追加」
「さっきのバーガーのセットに変更」
注文を続ける桃城と越前。
「…」
は2人の突然の行動に何が起こったかわからずポカーンと成り行きを眺めている。
「ふぇ〜…ん、ちゃ〜ん」
「キャッ」
に泣きつく菊丸。
抱きついてきた菊丸に驚きからの身体は一度こわばったが、慣れたものでそれはすぐに収まった。
カウンターの2人はの声に一瞬菊丸に鋭い視線を投げかけてきたが、注文するのに忙しくこちらにはこない。
「アイツラ鬼〜」
泣きつく菊丸の頭を撫でつつ苦笑する。
自分の発言のせいでこんなことになっているのを自覚して、ほんの少し罪悪感を感じる。
「はは…あ〜…え〜っと、一杯食べる人も素敵だけど、自分の分は自分で責任持つ人のほうが私は好きかもねぇ〜」
何とか2人に注文を止めさせようと、苦し紛れの言葉を発する。
ぴたっと動きが止まる越前と桃城。
それを見て涙目だった、菊丸がなにやら思案顔になったかと思うと、にぃっと今度は笑みを浮かべた。
二、三語、に耳打ちをする。
「そ、そんなんで上手くいくわけ…」
「いいから、いいから」
にっと笑う菊丸。
はふぅっと小さく息を吐き出し、菊丸に耳打ちされた言葉をそのまま繰り返す。
「…でも、一番好きなのは先輩とか後輩とか気にせず気前よくポポンッとおごってくれちゃうような人かなぁ〜」
やや棒読みの言葉。
注文する2人の動きがぴたりと止まった。
「今日ここでみんなに奢ってくれちゃうような男気見せてくれる人っていいかもねぇ〜」
棒読みの台詞を続ける。
「「先輩、俺、奢ります」」
ほぼ同時に振り返る2人。
「わーい、ほらちゃん」
の手を取って店に入る菊丸。
は大きく息を吐き出した。
(Fin.)
反省文
ただ、注文し続ける2人を書きたかっただけです。
当初は1年対2年ということで桃城対越前になるはずだったのですが…ある意味菊丸1人勝ち…ですねぇ。
2004.02.25.
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