「愛情たっぷりの特製ケーキ焼きあがりましたよぉ〜」
煙草の煙をハート型にし、くるくるとバレリーナのように回りながらサンジはケーキをナミとロビンの前に置いた。
同じように紅茶に続きケーキがの前に置かれる。
「ほら、クソ美味ぇぞ」
にっと笑ってサンジはテーブルから離れ、そばの壁に寄りかかる。
「さ、食べましょ。遠慮しなくていいのよ。サンジ君が作るのは本当においしいんだから。食べて損なし」
まだ戸惑っているにナミが声をかける。
「う、うん。いただきます」
紅茶を一口飲んで、ケーキを口に運ぶ。
「美味い」
そう小さく呟くと、大きめな帽子を押さえつつ一心不乱にケーキを口に運ぶ。
「食うのに邪魔なら帽子はとれ」
サンジはそう言っての頭からひょいっと帽子を取った。
帽子の下から現れたのは真紅の髪と真紅の目。
「なっ」
「えっ」
「あら…」
三者三様の声。
サンジは口から煙草を落としそうになって慌てて、手を口元に持っていく。
「あなた、女の子だったのね」
ナミがポツリと言葉を続けた。
肩より少し長い髪と大きな目をした少女。
ロビンはそれをただじっと見つめる。
「ん、俺は一言も男だなんて言ってないけどな」
そう言って最後の一口を口へと運び、はぁ〜美味かったぁ〜と感想を述べる。
「そう、よね。俺って言ってるから、てっきり…」
ナミは目を見開いて言葉の歯切れが悪い。
「別に女が俺って言っちゃ悪いなんて決まりないだろ」
はそう言って屈託なく笑う。
屁理屈じみた反論にナミはただ苦笑するしかできない。
本人としては素直にそう思っているだけで屁理屈をこねているつもりはないらしいのは見ていて分かる。
「小さなレディこちらもいかがですか?」
サンジが新たにケーキをの前に置く。
先ほどとはに対する態度は変わっているが、少女が幼く見えるためかメロリンラブ状態にはならないようだ。
「小さいって言うなよ」
は一旦サンジに鋭い視線を向けたが、すぐに目の前のケーキへと視線を移す。
「…コレも食ってもいいのか?」
「あぁ」
サンジの返事を聞いての表情がぱぁぁっと明るくなる。
「ありがとう」
はケーキを口に運び、幸せそうに笑った。
「で、どうして“疾風”さんがここに?」
ロビンが少女を見つめたままたずねる。
「ん?」
ケーキをほおばりながら、が顔を上げる。
「ハヤテ?」
ナミが聞き返す。
ロビンはナミの言葉には答えず、じっとを見ている。
「 “白ひげ海賊団”がこの辺りに現れたというのは聞かないけれど」
の手がぴたりと止まる。
にっこりと笑みを浮かべるロビンを見ては固まる。
フォークを口にくわえたまま、たらたらと冷や汗が流れている。
「白ひげ?」
ナミの目が大きく見開かれ、サンジはあんぐりと口を開けくわえた煙草を落としそうになる。
「名前を聞いたときはまさかと思ったんだけどね。手配書とは…少し、違うから。でも、その赤い髪と赤い瞳。あなた、白ひげ海賊団の“疾風の”でしょ?」
はゆっくりとフォークを皿の横に置くとすっと目を細めた。
先ほどの子どもの顔ではない。
いやに大人じみた、いや、侠気を帯びた目をロビンに向ける。
「だったら?」
声色も先ほどとは違う。
低く、それでいて艶っぽい声では訊ねる。
ぞくっとするような空気が辺りを支配する。
突然の変わりように――から放たれる空気にナミとサンジは固まったまま言葉を発することができない。
「…いい目だわ」
ふっとロビンが笑みをこぼした。
「ありがとう。で?どうしたいの?」
にぃっと口元にだけ笑みを浮かべる。
「…あなたは?」
の目を真っ向から受け止め、今度はロビンが訊ねる。
「ケーキ食べたい。けど運動したいって言うなら付き合ったげるよ。最近運動不足ぎみだし」
茶化すような軽い調子で言うが、の声色は低いままだ。
「遠慮しとくわ。ケーキをゆっくり味わって」
ロビンは静かに目を閉じる。
子どもの顔に戻り、はにっこりと笑う。
「よかったぁ〜、こんな美味いケーキなかなか巡り会えねぇし。…あっ手を出さないでくれるなら何でここにいるのかって質問についてはちゃんと答えるよ。でもコレ食い終えたらね。食事中に話したくないんだよなぁ。俺聞かれ方次第じゃ不機嫌になるかもしれないさぁ〜。そんなんで食ってても美味くないだろ?」
そう言って再びフォークを口に運び、ふにゃにゃ〜んと締まりのない笑みを浮かべる。
ナミとサンジの体から力が抜け落ちた。
そんな2人にが笑みを向ける。
「ま、ここで仕掛けては来ないとは思ってはいたけどさ。3人とも自分達の城でやるようなバカには見えないもん。ここで運動したら後で掃除大変だろ?」
頭のある海賊なら普通自分達の域じゃなく相手の域でやるよなぁ〜とケラケラと笑うを見て他の3人苦笑が浮かべ顔を見合わせた。
「ん?」
そんな3人の疲れ果てたような様子にわけが分からないというようにはフォークをくわえながら首をかしげた。
20040214
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