「…オイ」



夜分遅く荷物片手に甲板を歩いている影に声をかけた。



「やれやれ、見つかっちまったか」



奴は足を止め、ぼりぼりと頭をかく。

口ではそういうものの反省していると言う雰囲気は微塵もない。



「どこ行くんだよ?」



いつもより低い声でたずねる。

奴はゆっくりと俺の方を振り向いた。



「ちょっとな」

口元には人を食ったようないつもの笑み。



「アイツのとこに行くんだろ?」



「分かってるなら聞くなよ」

ごまかした意味がないじゃないか、と奴は続け、小さく肩をすくめた。



「…俺も行く」

「ダメだ」



俺の言葉が即座に却下された。

先ほどのただ面白がる目とは違う。

戦闘の時のそれに近い奥に侠気を宿した目。



「俺は親父に許可を取ってある。お前はどうだ?」

「…」



悔しさが表に出ていたのだろう。

奴は再び面白そうにいつもの笑みを浮かべ、そして、俺に背を向けた。



「じゃ、ちょっと行ってくらぁ」



そう言って後ろ手にひらひらと手を振り、ひょいっと下の小船に飛び移った。



「俺も行くってばっ」



そういった俺を見上げて口元だけにっと笑った。



「これは俺の仕事だ…ガキは大人しく待ってろや」



そして小船はどんどん小さくなっていった。



「…大人しく待ってろって言われてハイ、ソウデスカ、なんてできるわけねぇだろうがっ」



下唇をかみ締める。



「親父ぃーっ!!」



俺はその名を呼びながら風に乗った。