数日振りに紅を見た。

強い意志を宿した瞳。

艶やかな唇。

その身にまとう凛とした空気。



「あ…」

頬が熱くなるのがわかる。



「厚化粧のお局候補で悪かったわねっ。でもね、そんなこと、あんたみたいにもう既におっさん化してる奴に言われたくないわよ」

耳辺りの心地よい声。



「う…悪い」

何とか言葉を噤みだす。



「別に謝って欲しいわけじゃないわ。でもこう陰口みたいに言われるのは嫌いよ。言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ」

ずいっとアスマに詰め寄る紅。

紅の頬も少し赤い。

…アスマとは違い、紅は怒りのため、であるが。



アスマの顔から数十センチのところに紅の顔。

紅の瞳が真っ直ぐアスマを見つめる。

真っ直ぐと見上げてくる瞳の中にはアスマの姿があって。



うわっやべぇ…。

アスマの指先がぴくっと動く。



…抱きしめてぇ。

この際2,3発殴られてもいい気がしてきた。

抱きしめたい。

抱きしめてやわらかそうな紅の髪に顔をうずめて、それから形いいその唇をふさいでしまいたい。



…ってそんなことやったら致命傷。

完全に見込みなくしちまうじゃねぇか。



思考が暴走しそうになっていることに気づき、はっと我に返るアスマ。

瞳に宿ってしまった本能を必死に押さえ込む。



「ちょっとアスマ何とか言いなさいよ」

アスマの顔を覗き込むようにして睨んでくる紅。

紅よりアスマの方が身長があるためその目は…本人にその気はなくとも…どうしたって上目遣いをするのと近くなるわけで。



「…」

ぐっ我慢だ、忍耐だ、ここは耐えろ猿飛アスマっ。

紅から視線をそらすアスマ。



「ちょっとアスマっ。ちゃんとこっち見なさいよ」

見れるかっ。

紅の言葉に心の中で叫ぶアスマ。



「アスマ?」

明らかに様子がおかしいアスマに紅の顔が怒りから気遣うものへと変わる。



「ちょっと、アンタ変よ?」

ちらっと視線をやるとほんの少し首をかしげて見上げてくる紅の姿が…。



だ〜っそんな顔すんな。

再び慌てて視線をそらすアスマ。

…頼むから我慢してくれ、俺。



「どっか悪いんじゃない?大丈夫?」

紅の手がアスマの首筋に伸ばされた。

びくっとアスマの身体が震える。



「…熱はないようだけど、一度医務室行ったほうがいいわよ」

紅の手はすぐにアスマから離れた。



「…あ、あぁ」

歯切れ悪く答えるアスマ。

ゆっくりと紅の方を振り向く。

アスマが紅に向かって腕を伸ばそうとした瞬間。

その腕は紅に届く前に掴まれた。



「俺が医務室に連れて行く。行くぞ、アスマ」

腕をつかんだのは



「私も行こうか?」

「いいっ。行くぞ、アスマ」

紅の言葉を遮ってアスマの腕を掴んだまま歩き出す

2人はそのまま待機所を後にした。










(Fin.)





20040621










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