「お前になんかにお姉様を譲ってたまるかぁ〜っ!!」

娘を嫁に出す父親のような台詞を祐樹が叫んだあの飲み会の数日たった。

アスマの眉間のしわは日がたつごとに深くなっていった。



今日も待機所のドアを開け、アスマは部屋の中を見渡す。

…いねぇ、か。

ったく、どこへ隠しやがったんだ。

アスマは眉間にしわを寄せ、ため息を誤魔化すように煙を吐き出した。



「あっほら。アスマ、やっぱ来た」

にやにやと笑みを浮かべるアンコ。



「あぁ?」

顔をしかめアンコのほうを見る。

その横にゲンマの姿を見止め、さらに渋面を濃くする。

てめぇ、アイツの目がこっち向いてるうちに祐樹の奴を出し抜こうて腹かよ。



「祐樹がを慌てて連れ出したからそろそろアンタがくるだろうなぁ〜って」

そう言って笑うアンコ。



また、か。

ここ最近、アスマはと会っていない。

正確に言えばあの日以来、会えないのだが。



待機所でも任務の受付所でもアスマが来る数分前まではそこにいたと訊いた訳でもないのに顔を合わせた者は口をそろえて言う。

祐樹がアスマが来る直前すごい勢いで彼女を連れ去ったのだとも。



「祐樹がに固執するのは今に始まったことじゃないが最近は異常だぜ。何やったんだ?」

何もやっちゃいねぇよ。

な〜んもやってねぇし、な〜んも言えてもいねぇよ。

クソッ。



八つ当たりと分かっていつつ、楊枝をくいっと上に上げたゲンマを睨みつける。

いつもだったらてめぇも俺と同じようにアイツに追い払われるだろうに…裏切り者め。



「敵も徹底抗戦の構えかぁ。手強いねぇ〜」

ひょいっとアスマの肩ごしに顔をのぞかせるカカシ。

ぽんぽんとアスマの肩を叩く。



「何だよお前ら」

全く胸糞悪い。



「アスマってば八つ当たりは大人気ないよん。」

軽い調子で言うカカシ。



「いっくらに会えないからってさ」

他には聞こえないようカカシはアスマの耳元で囁いた。



プツン。



それを聞いた瞬間、アスマの頭に一気に血が上った。



「何なんだっ。行く先々でって。いちいちいちいち」

怒鳴るアスマ。



「俺とアイツは別に何でもねぇし、例え関係あったとしてもお前らには関係ねぇだろっ!!」

「お、おい、アスマ?」

引きつった顔で言うカカシの言葉はアスマの耳には届いていない。



「会わない?上等じゃねぇか。むしろあの厚化粧のお局候補を見ないほうが毎日気分よく過ごせるってなもんだっ!!」

「ふ〜ん」

アスマが叫び終わった瞬間、後ろから冷え冷えした空気と共に声がした。



「厚化粧のお局候補ねぇ…アスマにそんな風に思われてたなんて知らなかったわぁ〜」

言葉の端々に刺を含んだその声に、怒りに潮したアスマの顔がさぁっと青く染まった。



視線をそらしているアンコ。

顔を引きつらせているゲンマ。

あちゃ〜…というように頭を抱えるカカシ。

アスマが恐る恐る振り返ると冷たい目をしたと目が合った。



「壁に耳あり障子に目ありってね。悪口、陰口はやっちゃいけないよなぁ〜」

の後ろには、してやったり、と人の悪い笑みを浮かべる祐樹の姿があった。










(fin.)





20040621










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