「ほら、グラス空でしょ。ボケッとしないでついで注ぎなさいよ」

上機嫌にグラスを突き出すアンコ。



「…そのくらいにしとけよ」

絡まれつつもアンコに酒をついでやるゲンマ。



「わはははは」

笑い続けるガイ。



「ん〜…結構いける口だったんだねぇ〜。もう1杯いっとく?」

にっこり笑って祐樹にグラスを差し出しているカカシ。



「う〜…もういい〜…眠い〜…」

酒に飲まれ睡魔にものまれつつある祐樹。



「…」

我関せず、とばかりに傍観者の立場を決め込み手酌で酒を呑んでいるアスマ。



「…何やってるのよ」

遅れてきたは店内の状況を見て呆れたように呟いた。



「あっ。遅かったねぇ〜任務お疲れ〜」

ひらひらと手を振るアンコを無視して、は祐樹とカカシの間に割り込むようにして入りグラスを取り上げた。



「こら、カカシ。何やってんのよ、この子まだ未成年なのよ」

カカシに向かって怒鳴る



「ん〜でも飲みたいっていうからさ〜」

飄々と答えるカカシ。



「だからって飲ませないでよッ」

「止めて〜…お姉様〜…頭に響くよぉ〜…」

怒鳴るの後ろから弱弱しい声。



「ん〜…お姉様〜…俺、もう帰りたいぃ〜。部屋連れてってぇ〜」

テーブルに突っ伏している祐樹。



「帰りたいって…」

は大きくため息をついた。



「どうすんのよ?コレ」

カカシを睨み付ける



「あっアスマが運んでくれるって」

「はぁ!?俺はそんなこと言ってねぇぞ」

カカシの言葉にアスマが非難の声を上げる。



「そうだっけ?まぁいいじゃん。運んでよアスマ」

「運ぶんならお前が運べばいいだろうがっ」

「まぁそう硬いこといわずに」

「お前なぁ〜…」

言い争いを始める2人。



「あ〜いいわ。私が肩貸して何とか歩かせるから」

争う2人をなだめるようにが言った。



「駄目駄目。女だけじゃ夜道は危険でしょ」

「心配ないわ。私も一応上忍よ」

「ダ〜メ。酔った祐樹抱えて何かあったら反撃できないでしょ。それにも黙ってればそれなりだし〜」

「…アンタ、喧嘩売ってんの?」

「ん〜そんなつもりないんだけどねぇ。…とにかく、夜道を女だけで歩かせちゃ駄目でしょ、男として。だからアスマ、よろしく〜」

「〜〜〜ッ」

カカシは黙り込んだアスマをぐいっと引き寄せひそひそと耳元でなにやら囁いた。



今なら祐樹酔いつぶれてるから邪魔されないよ。チャンスじゃない



「…」

口をへの字口にし、黙るアスマ。



〜、アスマが運んでくれるって〜」

「そ?」

不振な2人の行動に本当にそうなのか、とはアスマの顔を窺う。

アスマはガシガシと頭をかいから立ち上がり、祐樹を担ぎ上げた。



「う〜…気持ちわりぃ〜」

「おいおい、吐くときは先に言えよ」

不吉な言葉を言う祐樹にアスマは顔をしかめる。



「いいの?」

どこか不機嫌そうなアスマに…まぁ強引に仕事を押し付けられたのだから当然だろうが…紅が尋ねる。



「…あぁ」

の方を見ずにアスマが答える。

本当に嫌なら嫌だと言うだろう、とは考え、アスマの厚意に甘えることに決める。



「じゃ、送ってくるけど…アンコ、あんたも程ほどにしときなさいよ。祐樹送ってきたら今度はアンタを部屋に送り届けるのなんてゴメンだからね」

は盛り上がりすぎている場に声をかけ、祐樹とアスマと共に店を出て行った。















「ほら?水飲める?」

祐樹の部屋に着くとはグラスに水を入れ祐樹に差し出す。



「ん〜…」

しかし、運搬途中で寝てしまった祐樹は目を覚ます気配はない。

気持ちよさそうに声を出した。

は小さくため息をつく。



「せっかく気持ちよさそうに寝てんだ。寝かせといてやれよ」

アスマは居心地悪そうにベッド脇に立っていた。



「本当、世話が焼けるんだから」

そう言っては祐樹の髪をそっと撫でる。



静かな室内。



「なぁ…」

声をかけられ振り返ると普段の彼らしからぬ真剣な表情のアスマの顔があった。

ドキッと心臓が大きく音を立てたが、は内心の動揺を表に出さずにアスマの方を向き直った。



「ん?何?」



名前を呼ばれた。

の手にアスマの手が添えられた。



「ア、アスマ!?」

「…話がある」

は驚きその手を振りほどこうとしたが、逆に大きなアスマの手の中にすっぽりとそれは収められた。



「ちょ、酔ってんの?」

「…酔ってねぇよ。こんなんで酔うか。真面目に聞け」

確かにいつもの酒量に比べれば少ないが、アスマの様子は明らかに普段とは違う。





もう一度、先ほどより少し低い艶やかな声で、アスマに名前を呼ばれ、ビクッとの肩が飛び上がった。

頬に熱を感じては顔を伏せる。



「…俺は、俺はお前が…」

アスマの顔が次第にに近づき、の頬を髭が撫でた。

の身体が再びビクッと飛び上がったまさにそのとき、



「ア〜ス〜マ〜〜〜〜」

地の底より…と表現されるおどろおどろしい声に2人は後ろを振り返った。

そこには口元に笑みを浮かべ冷たい目でアスマを見下ろす祐樹の姿があった。



「てめぇっな〜にしてんだぁ〜?」

祐樹の言葉にはっと我に返ったの手がアスマの手の下から消えた。



「チッ…もう起きちまったか」

大きくため息をつくアスマ。

あからさまに肩を落とす。



「確信犯かっ!?このエロ髭熊っ!!」

叫ぶ祐樹。



「…何だ?そのエロ髭熊ってのは…?」

疲れ果て、うんざりしたように言うアスマ。



「テメェだっ。イネっ。このエロ髭熊親父っ!!」

怒声と共にアスマに向かってクナイが乱れ飛んだ。



「だーっこんなとこでむやみやたらに武器を使うんじゃねぇっ」

慌ててそれをよけるアスマ。



「ムキーっこっちは気持ち悪いし頭がんがんしてだるいんだから避けんな、馬鹿っ。ちゃんと急所狙ってやるから安心して逝けっ!!」

「…無茶苦茶なこと言うな、お前は」



騒がしい室内。

そんな中ただ一人、静かに俯いているの姿があった。

彼女の長い髪の下が赤く染まっていた。










(Fin.)





20040620










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