目を覚ますと見慣れた天井が目に入った。

ここがどこであるか、など考えるまでもなくすぐ分かった。

自分の部屋の自分のベッドの上。



左手の手の甲を額に当て大きく息を吐き出した。

そのまま腕を数センチ動かし目を隠した。



そのまま数分。



静まり返った部屋では時計の針の音がいやに大きく感じられた。



「よっ」

勢いをつけて腹筋を使い上体をベッドから起こした。

掛け布団が腿のところで二つに折り畳まれる。



ガシガシと後頭部を乱暴に頭をかき、それによって乱れた髪をかきあげた後頭を振って後ろへと流す。

そのまままたぼんやりと空を見つめた。



「…夢、だったのか?」

先程“彼”に向け伸ばそうとした手を見る。

届かなかったその手には当然感触も温かさも何も残ってはいない。



「でも夢ならどうして俺はここにいるんだ?俺は確かに森にいたのに。…夢、じゃないのか?」

その手を拳にし胸に当てそれを抱くようにしてもう片方の手を添え目を閉じた。

先程の光景を思い出そうとする。

が、頭に浮かぶのはぼやけた視界のみ。



「あ〜ぁ、やっぱりダメだ。わからねぇや。…見えなかったんだもんなぁ」

はぁ〜と大きく溜め息をつき俯く。



が、すぐ俯いた頭を上げ自嘲じみた笑みを浮かべる。

「らしくねぇなぁ。俺、いつからこんなヘタレになっちまったんだよ」

パンパンッと両手で頬を軽く叩いた。



「夢じゃないなら探せばいいだけの話だ。もし、あそこにいたなら今も近くにいるはずだしな」

足にかかっていた掛け布団を横に押しやりひゅいっとベッドから飛び下りた。



「とりあえずこの辛気臭いのを着替えるか」

着ている喪服を見て呟く。

服に手を掛け引き上げたまさにその時、





カチャッ。





小さな音がした気がして後ろを振り返る。



「おぅ目が覚めた、か…」

部屋のドアが開き、その人物は顔を覗かせた。



「…」

「…」



一方は服をまくりあげたまま。

もう一方はドアノブに手を掛けたまま。



「…」

「…」



一方の視点は相手の顔に。

もう一方の視点はさらしの下にほんの少し見える胸に。

そうしてしばし固まる両者。



「…」

「…人並みには成長したようだのォ」

「ハァッ!?」

ぼそりっと呟かれた言葉に頭に疑問符を浮かべつつ眉をしかめ聞き返す。



「あれだけペッタリ平面だったもんが一応形になっとるぞ。小振りだが」

「…」

相手の視線をたどり…顔が熱くなるのが分かった。



ばっと服を引き下げキッと鋭い視線を相手に向ける。

「テメェ!」

「うぉっいきなり何をするっ。危ないだろうが!」

常備しているクナイはもちろん、手当たり次第周りにあるものを男に向け投げ付ける。

が、男は紙一重でそれらを全てよける。



「五月蠅ェ!っていうか、何でテメェが俺の家にいるんだよっ!!」

「倒れたお前をワシが運んでやったんだろうがっ!」

「寝言は寝て言えっ!って俺に触りやがったのか、このエロ親父ィ〜ッ!!!」

一段と激しいクナイの雨が男に向かって降り注いだ。



「危ないと言っているだろうがっ!」

「五月蠅ェ!大人しく当たてイネっ」





ドガッ。

ガガッ。





激しい音が鳴り響いた。















「チッ逃げやがったか…今度会ったら絶対ヤってやる」

ゼィゼィと肩で息をする。



足の踏み場もなくなってしまった部屋。



ちらっと視線を下にやりワタリはペタンとその場に座りこんだ。

「…見られた」

熱い頬に両手を当て大きく溜め息をついた。



「…ちくしょ〜」

心臓の音が嫌に大きい気がしたのはきっと気のせい。










(Fin.)





20040523










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