里では“木の葉崩し”によって命を落とした者の追悼の儀が行われていた。
感情を表に出せる子どもと仮面のような無表情を保つ大人達。
“大切なもの”を失ってしまった人々の心には虚無感。
そんな中、遠くからその様子を眺める影がひとつ。
儀が終わり人々が里に戻ってくる。
そろそろ場所を変えねば、と自来也は思いつつそれを見下ろしていた。
「ん?」
ふと、自来也は里をかけていく小柄な影に目を留めた。
それは人気のない道を通り、里とは反対方向、すなわち“外”の方角へと向かっている。
「何やっとるんだアイツは」
ほんの少し呆れを含ませ自来也は呟く。
「全く、世話が焼ける、わっぱだ」
やれやれ、と肩をすくめ、自来也はその場を後にした。
は慣れた仕草で壁を軽々と飛び越え、森に入った。
「どこへいくんだ?あいつは」
その後を追う影には気づかない。
1本の木の前で足を止めた。
その木に抱きつくように腕を回す。
頬にはざらりとした樹皮の感触が伝わる。
ぽたぽたとしずくがの足元に落ちた。
「ごめん…ごめんなさい」
声を抑えようとするのだが、ひっくひっくと幼子のように肩が揺れる。
「俺がちゃんと覚えてたら、きっと、こんなことにはならなかった…」
がつんっと強めに額を機にぶつける。
「…里を守るって約束したのに」
誰と?
ふと頭に浮かんだ疑問。
泣きすぎて酸欠になったのか、頭ががんがんと痛む。
涙腺が緩んだままの瞳で抱きしめていた木から身体を離しそれを見上げる。
ざざざぁっと風で木が揺れる。
「火影様?…違う」
火影様じゃない。
何よりも大切な…。
肩に痛みを感じその場に座り込む。
何とか呪印を抑えようとするのだが、集中できず上手くいかない。
「誰、か、と…」
視界がゆがみ焦点が次第に合わなくなっていく。
「っ!!」
名を呼ばれ、何とか顔を上げそちらを向いた。
懐かしい。
暖かい光。
あぁ、この人だ。
来てくれたんだ。
は焦点が合わないまま微笑む。
その方向に手を伸ばそうとしたが上手く体は動いてはくれなかった。
「 」
なにやら小さく呟き、の身体はそこでぐらりと前に傾いた。
の身体は地面に着く前に力強いその腕の中に収められていた。
「…あまり心配をかけるな」
小さく呟かれたその言葉に返事はない。
ただ、眉間にしわを寄せ、息荒く苦しげに顔をしかめている。
「…」
自来也は呪印に手をかざし、少しずつその力を弱めていく。
模様は次第に小さくなり、の呼吸も穏やかになっていく。
「思い出したのか?」
返事がないと分かっていつつ自来也は尋ねた。
「忘れておればいいだろう?過去のことなど。忘れておる方が幸せになれるだろう?思い出さずともよいではないか。…ワシのことなど。」
自来也はほんの少し赤くなっている額をそっと撫でた。
の肩を抱くその手に力が加わる。
さわさわと木が揺れる。
自来也はそっとを抱きかかえるとゆっくりと歩き出した。
里の方角へ。
(Fin.)
20040520
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