「そろそろ里ですね、特別上忍」
斜め後ろを走っていた中忍が言う。
「あぁ。急いで帰れば間に合うかもな、中忍試験の本選」
は視線だけチラッとそちらに向け、走りながらそう言う。
「あっやっぱり特別上忍も気になってました?今回はあの“うちは”の生き残りも出るんですもんねぇ〜」
楽しそうに笑う中忍。
「…そう、だな」
「俺も見たかったんですよねぇ〜“うちは”の試合。間に合いますかねぇ?」
「 “うちは”“うちは”だな。“うちは”以外にも面白いのが結構いるぞ、今回の試験は」
何人かの下忍の顔を思い浮かべては言う。
「でも今年の目玉はやっぱり“うちは”でしょ」
ドォンッ!!
地響きと共に大きな音が鳴り響き、は足を止めた。
続いて後ろを走っていた中忍も足を止める。
「何だっ!?」
辺りの気配を探る。
どこかで感じたことがある嫌な空気。
「特別上忍ッ見てくださいっあれ!」
中忍が指した方向をすでには目を向けていた。
「あれは…」
大蛇。
爬虫類特有の感情の読めない冷たい目。
『…』
何やら聞こえた気がした。
ざわざわと胸が痛む。
「なんだありゃ…」
隣りにいるはずの中忍の声がいやに遠くに感じた。
代わりに別の声が頭に響く。
『近いうちに木の葉はなくなるわ』
ゾクッ。
全身に震えがはしった。
『三代目は私が殺してあげる』
それは確かにそう言っていた。
あの蛇と同じ冷たい目をもった男。
『木の葉はなくなるわ』
アイツは確かにそう言っていた。
ちらりと赤い舌を出して笑みを浮かべて。
「特別上忍…?ッ!!特別上忍、呪印が」
中忍の叫びには意識を現実に戻す。
「…大丈夫だ」
「で、でも…」
『ふふ、いいざまね』
「黙れっ。…いいか、今から指示を出す」
肩口を押さえ一度大きく息をつき言葉を続ける。
『憎いんでしょ?私が』
「見張りについている者が何らかの対処をうっているばずだ。今すぐそちらの援護に向かえ。現場ではそこの責任者の指示に従え。指示がない場合は各自の判断に任せる」
困惑している中忍の顔にはできうる限りの笑顔を向けた。
「俺もすぐ行く。里の危機だ。木の葉の忍びとしてしっかり働け…でもな、死ぬんじゃねぇぞ、お前ら」
「…特別上忍」
『無理よ。貴方の力は所詮そこまで』
「行けッ!」
が怒鳴ると、中忍達は顔を見合わせ姿を消した。
『だいぶ具合よくなってきたじゃないの』
あの声が頭に響く。
「…クッ」
ずりっ。
傍の木に寄り掛かるようにしてその場に座り込む。
じわり、と嫌な汗が身体から吹き出した。
汗ばむ肌が不快でベストを脱ぎさってしまいたい衝動に襲われる。
『素直じゃない子にはおしおきが必要よね』
身体を汗がつたう。
「チッ。こんな時に役立たずかよ、俺」
呼吸の乱れによって酸欠になりかけているのかガンガンと頭が痛みだす。
空気が重い。
次第に視界がぼやけ始めワタリは意識を保とうと頭を振った。
『木の葉を消してあげるわ』
「…行かなきゃ」
焦点の合わない視線を里へと向け立ち上がった。
『今のあなたを見たら…アイツはどう思うかしらね』
「これ以上お前に手は出させねぇぞ…傷つけさせねぇ」
よろけながらも1歩を踏み出した。
『あの子は私のものよ。アレは私を忘れられない。口ではなんと言おうともね』
「今度こそ…ケリ、つけてやっからな」
『守るために里においてきたあなたが、私にこうされていると知ったアイツの顔を見るのが楽しみだわ』
大蛇丸。
は先ほどよりしっかりした足取りで歩き出す。
その首元と顔半分は黒く染まっていた。
(Fin.)
20040624
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