「はぁ〜極楽極楽〜」
そう言って湯の中で思いっきり手足を伸ばす。
「やっぱ流石にこの時間は空いてるなぁ〜」
時刻はようやく昼過ぎ、というところだろう。
は温泉にいた。
店の名前は、旭日楼。
木の葉の温泉地の中でも評判の温泉である。
温泉の効能は肩こり、腰痛、疲労回復。
神経痛、リマウチ、冷え症、荒れ性、あせも、しっしん、にきび。
ひび、しもやけ、あかぎれ、打ち身、くじき、痔に産前産後の冷え性。
エトセトラ、エトセトラ…
とにかく身体にいいのだ、この温泉は。
貸しきり状態の温泉に気分をよくしたの口からは知らず知らずのうちに鼻歌が流れていた。
「アンコや紅お姉さまもこれればよかったんだけどねぇ〜」
ふと、思い出したように呟く。
「今も仕事に追われてんのかなぁ〜」
現在、里は中忍試験を控え、その準備に忙しい。
もちろんが愛してやまない2人、紅とアンコも例外ではなく…紅は部下である下忍の最終調整の指導のため、アンコは試験管としての事務処理のため、かなり忙しい。
一方、長期任務に出ていたには試験管としての任務は与えられなかったため中忍試験には直接的にはあまりかかわっていない。
もちろん、試験の補助は行う予定だが、それは当日のみで事前準備では大して忙しくもない。
リハビリ期間として特別上忍としての忍も与えられていない。
リハビリとして加えられていた下忍たちとのスリーマンセルの任も試験直前調整のため停止状態。
正直、今、はすることもなく暇を持て余している状態なのだ。
で、たまたま買い物をした八百屋さんに貰った割引券を機に時間つぶしと気分転換をかねてここを訪れていた。
「のぞき?」
湯上りの一服とばかりにフルーツ牛乳を腰に手を当て飲んでいたは一旦その手を止め番台に座っていた恰幅のよい女性の方を振り返った。
髪からは拭ききれなかった滴がぽたぽたと肩に落ちる。
「そうなのよぉ」
相当困っているのか頬に片手を当ててため息をつく女将。
それでもあまり深刻そうに見えないのは普段は本来の彼女の…かなり…おおらかな人柄のせいだろうとは内心で思いつつ、脱衣所のベンチに腰を下ろし、軽く頭を拭いた。
滴が一旦止まる。
「本当なのか?それ」
番台を見上げるようにして尋ねる。
「本当。お客さんからの苦情も出ちゃってるのよ」
「へ〜、そりゃ大変だなぁ〜」
そう言っては手に持っていたフルーツ牛乳の最後の一口をコクンと飲み干した。
「そうなのよ」
台詞は同じだが先ほどよりの強い調子で女将はそう言い、番台で立ち上がり身を乗り出す。
「でね、ちゃん捕まえてくれない?」
「はぁ!?」
空になったフルーツ牛乳のビンを手には目を見開き聞き返した。
「だ・か・ら、捕まえてほしいのよ、のぞき」
にっこり微笑む女将。
断りつらいオーラをかもし出している。
「…俺、今仕事休業中みたいなもんなんだけどな〜…なんて思ったてみたりしたり…?」
しばし呆然とお上の顔を眺めていただったが何とか言葉を噤みだす。
「だったらなおのこといいじゃない」
の言葉を途中でさえぎる形で女将が言う。
「え〜っ。だったら火影様通してきちんと…」
「ダメ。そんな事にしたら噂になっちゃうでしょ?覗きが出るなんて広まったら商売あがったりよ」
相変わらず笑顔を崩さない女将。
「…う〜ん」
は困ったように眉を寄せた。
「だからね、こそっと。ね、ちゃん」
の顔を覗き込むようにして言う女将。
「でもなぁ〜…」
居心地悪げに女将から視線をそらす。
「ね、お願い。ちゃん」
女将がぱちんっとに向かって手を合わせた。
「あ〜…」
は女将を見て再び横に視線をそらした。
「ね、ちゃん」
手を合わせにこにこ微笑み続ける女将。
「えっと…」
今度は上方に視線を向け、はちらりっとお上の顔を窺う。
にこにこと笑う女将の顔には大きくため息をついた。
「…わかったよ」
諦めたようには言った。
つくづく自分は女に弱い、と思いつつ女将の頼みを受ける。
「ありがとう。ちゃん」
「…他には内緒だからね。本当は任務以外でこんなことしちゃいけないんだから」
そう言ってはがしがしと洗いざらしと頭をかいた。
(Fin.)
20040526
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