この里の全ての忍のトップにたつ『火影』の名を持つ老人はその日もいつもと同じく書類に向かい、依頼内容のランク分けを行っていた。

一区切りついたところで書類から目をあげ、軽く眉間の下を揉み、目を休める。

最強の忍とは言え年齢には勝てない、と思う。



視線はそのまま書類にではなく頭上に掲げられた写真へと向かう。

敬愛する2人の師と自分が技術を叩き込んだ部下が育て上げた心強き忍。



「…」

目を細めしばしそれらを眺めた後、火影は再び書類に向かおうと思ったが、



「遅い、な。何かあったか」

視界の隅でとらえた時計の針を見て低く呟くと、書類を机の隅に追いやり代わりに水晶を机の中央においた。

それを覗き込み目的の人物を探す。



「火影様っ」

そうするのとほぼ同時に部屋の扉から名を呼ばれた。

同時にどんどんと荒く扉を叩かれる。

いつもは礼儀は守りつつもどこか飄々としている上忍のいつになく切羽詰まった声に想像できうるあらゆる事態を頭の中でシュミレートしながら火影は扉の外へと声をかけた。



「アスマか。入れ」

「火影様っ」



勢いよくドアが開き男が飛び込んできた。

続いて黒髪の女も男と同じように部屋へと駆け込んできた。



「どうした?アスマ、紅。少し落ち着け」

いつもは落ち着いている上忍のらしからぬ行動に眉をしかめつついましめた。



「…

火影はアスマの腕に抱えられている小柄なそれに目を留め、小さくその名を呟くと顔をしかめた。

蒼白な顔で時折苦しげな声を漏らす少女。



「突然痛みを訴えて」

そういう紅の顔も真っ青だ。

首元が黒く染まっている。



「アスマよ、をそこに下ろせ。ゆっくりとな」

火影は部屋のソファを指差しそういうと仕事をしていた机を回っての横にしゃがみこんだ。

を下ろしたアスマは今度は紅の身体を支える。

火影は紅が顔をゆがませているのをちらりと一瞥してから、の首元に浮かびかがる呪印の模様を覗き込みますます顔を険しくさせた。



「これはっ!?」

その模様を凝視する。

自分をじっと見てくる視線にはっと気づき、火影は2人のほうを振り返った。



「…ご苦労。下がっていいぞ」

低く言う。



「あの、火影様っはっ!!」

「紅っ!!」

その場にい続けようとする紅をアスマが半ば強引に部屋から連れ出して行った。





パタン。





ドアが閉まり、部屋はが荒く息をする音のみ。

火影はそっとその頭を撫でる。

その顔は悲しげにゆがめられている。



「辛い任務を架してしまったようだな。全てワシの責任だ…すまん、

火影は視線をもう一度呪印に向ける。



「このような任務はやはりお前に課すべきではなかった。このようなことが起こることも予想すべきであったのに」

搾り出すような声で言う火影。



「お前がこのようなことを望んだはずもない…いずれこのようなこともあるにせよ、お前にはまだ早かっただろうに」

頭を垂れる火影。



「…すまん、

火影は項垂れた。















(Fin.)





20040515










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