2人はすぐに仲のよい子猫のようにじゃれあい始める。
あまりにはしゃぐので看護師が心配そうに病室を覗きにいた。
「まったくアンタ達は…アンコ、ちょっとなんか飲み物買ってきて」
「え〜っ」
非難めいた声を上げるアンコを紅は一瞥し黙らせた。
「とアンタの分もね」
紅はアンコにお金を渡す。
「アンコ、俺オレンジジュースがいい〜」
の言葉にアンコはやれやれと肩をすくめて病室から出て行った。
「で?」
へら〜としまりのない顔でひらひらと手を振りアンコを見送ったは紅の方に向き直る。
その顔は先ほどのおちゃらけたものとは違う。
挑戦的な目。
「アンコに聞かせたくない話なんだろ?バレバレだよ、紅オネエサマ」
にっと人を食ったような笑みを浮かべる。
の変貌振りに紅は戸惑いの表情を浮かべた。
「驚いた?…アンコが信じろって言ったからアンタの言うことはまぁ信じてもいいとは思ってるけど」
でもまだ分からないことだらけなんでね、ちょっと警戒?とはいたずらっぽく笑った。
ただ、その目は鋭い。
の雰囲気にのまれそうになり、紅はゴクッと喉と慣らした。
「で?話は?早くしないと戻ってきちゃうよ、アンコ」
の言葉に紅は小さく息を吐き出した。
「、明日火影様が貴方にお会いになるそうよ」
「そう」
は紅から視線をそらす。
窓の外を見て眉をしかめる。
「…ねぇ、紅オネエサマ。アンコが戻ってくる前に訊いときたいことがあるんだけどいいかな?」
窓の外を見たままが言う。
「…私に応えられることなら答えるわ」
「ふ〜ん…じゃ、ホカゲサマってさ、美人?」
くるっと紅のほうを向き直る。
「紅オネエサマレベルなんて贅沢は言わないけどさ、それなりに美人?」
真顔で尋ねるに紅は戸惑いを隠せない。
「…」
まさかそんなことを聞かれるとは思わなかった。
窓の外を見つけるの表情から、あらゆる深刻な問いを想定していただけに、あまりに予想外の問いに開いた口がふさがらない。
「何かさ、ホカゲサマって人のこと考えると何かこう…つかえているような気がして、胸がきゅ〜ってなって、苦しくなるんだよね…」
恋してたりしたのかなぁ、と言うに紅はそれは絶対ないっと力強く否定をした。
そっか〜っと言って眉間にしわを寄せ考え込むに紅は何処まで本気なのだろうか、と苦笑した。
「でも、さ」
の声が真剣なものへと変わる。
「俺、きっと記憶なくす前ホカゲサマのこと考えてたんだ、きっと…」
の顔が苦しげにゆがむ。
「ホカゲサマって名前を聞くだけでなんか、ドキドキして苦しくて、切なくなって、じっとしていられない。…何でかはまだ分からないけど。」
は俯き、ギュッと自分の手を握り締めた。
「記憶をなくす前の俺はホカゲサマに何かをしたかったのかもしれない。何かを伝えたかったのかもしれない。もしかしたらただ、ホカゲサマに…会いたかったのかもしれない」
は独り言を紡ぐように言葉を発し続ける。
「ホカゲサマの名前を聞くと無性に泣きたくなるんだ」
「…」
名前を呼ばれたことでははっとして顔を上げた。
「しゃべりすぎたかな?」
くすっと自嘲的な笑みを浮かべる。
「アンコとは違った意味で紅オネエサマは気を抜きやすい存在、なのかもね」
やれやれ、と肩をすくめる。
「光栄ね」
紅はそう言って微笑んだ。
「紅オネエサマに懐いてたってのは本当なんだねぇ〜」
うんうん、と頷く。
「アンコの言葉信じてなかったの?」
いたずらっぽく紅が訊く。
は一瞬目を見開き、ぷっと吹き出した。
「俺、紅オネエサマも結構好きみたい」
にっと笑みを浮かべる。
「あら?嬉しいこと言ってくれるのね」
紅もくすくす笑う。
「ねぇ…」
が上目遣いで紅を見る。
「甘えてみちゃったりしてもいい?」
小首をかしげが尋ねる。
紅が答えるより先に紅の腰に腕が回された。
がぎゅっと紅に抱きつく。
「ん、何か落ち着くかも」
「そう?」
紅はかつてのように優しくの頭を撫でる。
「ん…」
に腕に力が加わった。
「…俺、ホカゲサマのことも好きだったのかな?」
ぽつり、とが言う。
「嫌いではなかったと思うわ。里の忍であの方を慕わないものはいないもの」
紅は優しく言った。
「そっか…」
ふっとの顔に笑みが浮かんだ。
ガチャ。
「あら〜?ずいぶん仲良くなったみたいね」
病室のドアが開いて飲み物を手にしたアンコが入ってきた。
紅とは顔を見合わせ笑みをこぼした。
「まあね。紅お姉様のことも好きだって体が覚えてたみたい」
がそう言って嬉しそうに笑った。
紅の顔にも嬉しそうな笑みが浮かぶ。
「よかったね」
そう言ってアンコは2人に飲み物を差し出した。
「オレンジジュースなかったから外まで買いに行ったんだからね」
嬉しそうに悪態をつきながら。
20040214
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