下忍指導を終えた紅は病院へとやってきた。
の呪印のことを思い、その表情はどこか暗い。
「夕日上忍っ」
叫びにも似たその声に紅は思考の世界から現実へと戻る。
声のほうを見ると今にも泣きそうな看護師が目に入った。
「どうし…」
「あのお2人を止めてください」
何があったか、と尋ねる紅の声は看護師の声と共に遮られた。
「アンタいい加減にしなさいよ!」
「ん、だよ。これは俺のだろっ!」
「誰がそんなの決めたのよっ!!」
奥のほうが騒がしい。
聞き覚えのある声に紅は軽く頭を抱えた。
「すぐ静かにさせるから」
そう言って紅は先を急いだ。
その病室のドアの前で一旦大きく息を吸い込んだ。
「静かにしなさいっ」
ドアを開けると同時に叫んだ。
組み合っていたであろう2人の動きがピタッと止まった。
「…」
紅はそれを見てふっと微笑んだ。
昔はよく見た光景だ、と。
「一体どうしたの?」
何があってまたこの2人はこんな風になったのだろう。
呪印が消えて記憶が戻ったということはないはずだけど。
紅は2人の間で何があったのか、と様子を観察しながら病室に入る。
「紅さんっ聞いてくださいよこの馬鹿アンコ…」
げしっ。
の言葉は途中で途切れた。
アンコがの頭にげんこつを落としたのだ。
「うう〜」
頭を押さえる。
「馬鹿とはなによ、馬鹿とは。それに紅さんじゃなく、紅お姉様」
「紅オネエサマ?」
「そ」
にっと笑みを浮かべるアンコ。
「紅オネエサマ」
ほんの少し涙目になって紅を見てそう言う。
「どうしたの、アンタ達」
呆然として言う紅。
その口元は戸惑いからか、少し引きつっている。
「教育中なの」
「教育中?」
アンコの言葉を反芻し聞き返す紅。
「記憶喪失なんてもんになっちゃったに色々教えてあげてるの」
にっこり笑うアンコ。
「そ、そう…」
戸惑う紅。
「この子記憶なくして何が本当で何を信じていいかわかんなくなってたんだって」
馬鹿でしょ、と笑いの頬をつつくアンコ。
は不貞腐れたように視線をそらしている。
「で、信じられない中であたしは信じることできそうだって思ったんだって」
人を見る目はあるみたいよね〜流石は私の妹分、と得意そうに笑うアンコ。
紅はそれを確認するようにに視線を向けた。
「アンコ、真っ直ぐで馬鹿で嘘つけなさそうなんだもん…でも絶対人選間違えたよね、俺」
ゴン。
再びはベッドに沈んだ。
「生意気」
ふんと鼻を鳴らすアンコ。
紅は苦笑するしかない。
アンコはと正面で向き合った。
「、紅――アンタにとっては紅お姉様なんだけど、紅は信頼置けるから大丈夫よ。紅の言うことはあたしのいうことだと思ってちゃんと聞くのよ。」
アンコの言葉にしぶしぶコクンと素直にうなずく。
それを見てアンコは満足そうに頷いた。
「紅、あたしが任務中で里を離れたりしたときはコイツの教育お願いね。、紅はアンタのことこれでもかってくらい甘やかしてくれるから思いっきり甘えていいのよ」
アンコは一度ちらっと紅のほうを見てから優しくに言う。
「…」
「甘える?」
「そ。アンタしょっちゅう紅に抱きついて甘えてたのよ。胸でもお尻でも揉み放題」
「…」
アンコの言葉にただ苦笑を浮かべるしかない紅。
「…俺ってセクハラ魔?」
の顔が少し引きつっている。
は伺うような視線を紅に向け、紅は軽く肩をすくめ微笑んだ。
「ま、そのうち慣れるわよ」
アンコはからからと笑っている。
紅はこんなアンコを見るのは久しぶりだと思った。
「だいぶ仲良くなったみたいね」
紅の言葉にアンコはまあね、と軽く返す。
応えるときにの頭をわしわしと乱暴に撫でた。
「で、そんな2人がどうして喧嘩してたの」
「コイツが悪いのよ」
アンコがの頭を撫でていた手で軽く小突く。
「何言うのさ、俺の見舞いに持ってきた団子を俺が食って何が悪いんだよ」
ぷぅっと頬を膨らませる。
「遠慮って言葉知らないの」
「その言葉そのまま返すよ」
「アンタ本当に生意気〜」
アンコがの両頬を左右に思いっきり引っ張る。
「痛い痛い痛い痛い」
ベッドの上で足をばたばたとさせる。
「いい加減にしなさい」
「「ぐっ」」
紅は軽く2人の頭をはたいた。
2人は恨めしげに紅を見上げた。
紅の顔がふっと緩んだ。
「ここは病室よ。元気なのは結構だけど場所をわきまえなさいね」
「「はーい」」
素直に返事をする妹分達に紅は優しく微笑んだ。
20040214
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