「今日も起きなかったね」
ふぅっと大きくため息をついてアンコは椅子から立ち上がった。
がここに運ばれて以来アンコは沈み込んでいる。
「外傷はたいしたことないって言ってたし、きっともうすぐ…」
「そんなこと言ってもう1週間も目覚まさないじゃない」
気遣う紅の言葉をアンコは強い口調でさえぎった。
「あっ…ごめん」
八つ当たりだね、とアンコは紅に謝る。
そう言って笑う彼女のそれはいつもの元気一杯の明るいものではない。
「結構きつい任務だったみたいだしさ、体力の回復にちょっと時間がかかってるのよ」
紅は幼い子供を諭すように優しく言った。
「うん」
アンコは頷き、ベッドで静かに眠る彼女に視線を向ける。
「アンタここんとこ寝てないでしょ?そんなことじゃ任務にも差し障るわよ」
紅はそっとアンコの背中を押す。
「うん」
ゆっくりと歩き出すアンコ。
「今日はもう帰って寝なさいよ」
いいわね、と続ける紅。
「…」
無言のままうつむいてしまうアンコ。
「アンコ」
紅は心配そうにアンコの顔を覗き込む。
アンコは気まずげに視線をそらした。
しばしの沈黙が部屋を支配する。
「ねぇ紅」
先に口を開いたのはアンコ。
泣きそうな顔で紅を見上げる。
「、本当に目、覚めるのかなぁ〜…」
「アンコ…」
大丈夫よ、と言って紅はアンコの頭を撫でた。
「あれ?」
アンコは大きく目を見開き、紅の元を離れてベッドに駆け寄った。
「どうし…」
紅の目も大きく見開かれた。
先ほどまでベッドに横になっていた人物がゆっくりと上体を起こし、そして、ゆっくりと顔をこちらに向けた。
「〜」
アンコが勢いよくに抱きつく。
「生きてる。ずっと寝っぱなしだからどうしようかと思ったよ。よかったぁ〜」
アンコははしゃいでバシバシと彼女の肩を叩く。
紅はその光景を見てほっと安堵の息を漏らした。
が、違和感を感じ眉をひそめる。
が先ほどから一度も笑っていないのだ。
その顔はひどく冷たい。
ただ無表情にアンコを見つめ、なされるままになっている。
アンコはが目覚めたことが嬉しくてまだそれに気づいていないようだ。
は無言のままベッドから降りようとする。
「動いちゃダメ」
アンコはをベッドに押し戻した。
はぴたりと行動を止め、アンコに視線を向ける。
「骨とか折ってたりするかもしれないじゃない。じっとなさい」
は小さくため息をついた。
「…」
「大人しく寝てなさいって」
はそれでもなお起き上がろうとしてアンコにベッドに押し付けられている。
骨を心配してるなら叩くな、と紅は内心苦笑する。
「今先生呼んでくるからちょっと待ってなさいよ」
アンコはそう言うと部屋から飛び出していった。
はベッドに寝たまま視線を紅に向ける。
「1つ訊きたい」
は静かに口を開く。
「何?どうしたの?」
紅は笑みを浮かべの言葉に耳を傾ける。
「私は誰だ?アンタは?ここはいったい何処なんだ?」
「…」
あまりに予想しない質問に紅は固まった。
「な、何言って…」
「、というのが私の名か?」
疑問符を再び口にする。
乱れた服の間から黒い印がちらりとのぞいた。
紅は目を見開きただを見ることしかできなかった。
20040214
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