の姿が里から消えて約3年がたった。

木の葉の里の近くの森に小さな影。

それは猿のように、猿よりも早く、木から木へと飛び移る。



「…あと少し」

小さく呟き、それは大きく木の枝を蹴った。



小柄な影。



木の葉の特別上忍



子どもの成長は早い。

木の葉の里を離れてから数年ほどしか経っていないというのに、里を離れたときの彼女とはやはりどこか違っている。

男女の差がなかった身体は、徐々に女性の丸みを帯び、十センチなかったその髪は肩よりも少し長く風になびいている。

本人の意思とは別に少年から女性に変化していた。



一緒に任務についた中忍の姿は彼女のそばにはない。

彼女1人里へと帰る。

敵の目を欺き、かい潜り里へ戻る。



とめどなく腕や足から流れ落ちる血の感覚には小さく舌打ちをしたが足は止めない。

今足を止めては危険なことをは知っている。

少しでも早く安全な場所へ。

血を出しすぎたためか、自分から発せられる血の臭いのためか、はそれにたいする反応が遅れた。



「しまっ…」

気づいたときには辺りにはその匂いがたちこめていた。

慌ててそれから逃れようとしたが、すでにはその匂いに侵されていた.

は闇へと取り込まれた。















突然視界が明るくなった気がして目を開けた。

先ほど感じていた以上の眩しさに一度目を細め、その明るさに慣れるようゆっくりと目を開けた。

目を開けると白い天井。

さほど広くない白の部屋。



「ここは…?」

ゆっくりと上体を起こしては自分がベッドの上で寝ていたことを知った。

窓があり、その横にある台の上には花が活けられている。



病院、か。

窓の外に広がる見慣れた風景に目を細める。



また生きて帰ってこれたみたいだな。

口元に笑みが浮かぶ。



がすぐに口元は引き締められた。

この里を二度と壊させはしない。

早くアノコトを火影様に知られなくては。

立ち上がろうとベッドのふちに手をかけた。



「目覚められましたか」

感じなかった気配に慌てて声のほうを振り返る。



閉じられたドアの前にいつの間にか白衣に身を包んだ男が1人そこに立っていた。

医者、だろうか。

見覚えがないけれど、自分がいないうちに新しく入った医者か?

男を観察する。



医者に、しては不自然に気配を消しすぎる。

忍、か?



「はぁ…」

そんな警戒心など表に出さず、起きたばかりでぼぉっとしているように返事を返す。

手元にクナイを忍ばせる。

男はベッド脇に置いてあった椅子に腰を下ろした。



「どうされました?」

男がにっこりと微笑む。



「いえ…どうもお世話になりました。後日またお礼に伺います」

軽く頭を下げる。



「ちょっと急ぎの用があるので…」

ベッドから立ち上がろうとしたが、身体に力が入らずベッドから崩れ落ちる。

床に身体が落ちる直前心の中で大きく舌打ちをした。



「無理をなさらないでください。まだ回復しきっていないんですから」

男の穏やかな声が耳元でした。

床に落ちる前に男に支えられていた。



「しかし行かなければならないんです」

男の腕に治まった状態で男の顔を見上げ、睨みつける。

男の身体から離れようと試みる。



「駄目です」

うっすらと笑みを浮かべた男の顔。

崩れないように添えられていた手に力が加わった。



「我々としては今、木の葉に知られるわけにはいかないですよ」

素早く手元に隠していたクナイを男の喉下に突きつけたが、クナイは男をすりぬけていた。

男の姿は消える。





カツーッン。





クナイは手から滑り落ちた。

身体から力が抜け落ちる。



「くっ…」

片膝をつき崩れ落ちようとする身体を何とか保つ。



「お前、は…」

気配だけを頼りに男のほうを睨みつける。



「我々のことに勘付いてしまうような方が木の葉側で生きていられると厄介なんですが」

眩暈がした。



「殺すには惜しい、とおっしゃるんですよ」

視界がぼやける。



「自分のものだから手を出すなと言われているのですが」

身体が崩れる。



「貴方は知りすぎました」

視界がどんどん狭くなっていく。



「このままにはしておけないんです」



駄目だ。

火影様にあのことを、知らせなければ…。

火影様の、元に…。

火影、様…。



は朦朧とする無意識に近い状態で印を結んだ。



「なっ」

驚くような男の声が聞こえた気がした。

だがそれと同時にの意識は完全に暗闇へと飲まれていった。















激しい地鳴りと共に白い光の柱が森から上がる。

その日見張りについていたゲンマは光のほうに目をやる。



「何事だっ」

「慌てるな」

動揺し騒ぐ部下達を一喝し、ゲンマはすばやく次の指示を出した。



「1班はこれより俺と共に現場確認に向かう。2班と3班はこのまま待機。見張りを続けろ。30分以内に戻らないときは火影様に連絡」

指示を出すとゲンマは現場へと向かった。

半径3メートルほどの木々が焼けてプスプスと音を立てておりその中心には小柄な少女の姿があった。

額には見慣れぬ鉢金がつけられている。



「コイツは…」

仰向けになっている少女の姿にゲンマは少し眉をしかめ近づいた。



「危険ですっ」

そう言う部下の声を無視してゲンマは少女の横に身をかがめる。

肌蹴てしまっている衣類のすそから見慣れた木の葉の鉢金とクナイが太腿に忍ばされているのが目に入った。



「…」

ゲンマは少女に息があるのを確認しする。

破れた衣服の間からかすかに見えたそれに気づき表情を険しくする。

すぐに部下からはそれが見えないように衣類をすばやく整えるとそっとそれを隠し、そっと少女を抱き上げた。



「任務帰還者だ。俺が病院へと運ぶ。お前らはこの辺りに火の粉が残ってないか確認後、引き続き見張りに戻れ。俺もコイツをおいたらすぐに戻る」

ゲンマの姿がふっと消えた。










20030214










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