「火影様」

すっとその影は火影の前に現れた。

頭をたれ、小柄な身体がますます小さく見えた。



「…か」

火影の顔が険しくなる。

火影の前に現れたのは木の葉の里の特別上忍・



「やはりそうでした。近日中に動くかと思われます」

「…そうか」



ふぅっと火影は息を吐き出した。

その顔に苦渋の色がにじんだ。

顎に手を当て思案顔になる火影。



「報告ご苦労。、下がってよいぞ」

火影の言葉かけにもかまわずはその場を去ろうとはしない。

代わりに下げていた顔を上げ火影の顔を見上げる。



「火影様、この件はぜひ自分に」

「ダメじゃ」

即座に却下する火影。



「お前にはこの任はまだ重すぎる」

「お言葉を返すようですが、この任、自分以上の適任はありません」

口元に笑みを浮かべは言う。

その様は艶を含み、普段の子どもじみたその顔とは同一人物には見えない。



「私以上に敵の油断を誘える忍びはこの里にはいません」

は口元に笑みを浮かべたまま目を細めた。



「まだ重過ぎるとおっしゃいますが自分も特別上忍として席を置くものです。それに、子どもだからこそ他の者より情報を得やすいということもありましょう…」

火影が顔をしかめた。

は垂れていた頭を上げた。

きっと真剣な顔で火影の顔を見上げる。



「それに私は里の外のものです。里を裏切ってもおかしくない、でしょう?」

「…ワシはそうは思わん。お前はこの里で育った者と同様にこの里を愛しておる」

火影はの言葉を打ち消した。

がふっと視線を火影からはずした。



「…ですが、他の者はそうは思わないでしょう。勿論奴らも。だからこの任は私が行った方が成功率は高い」

「そんなことはない。、お前はこの里の忍びであり大切な里の住人じゃ。お前はまだ幼い。このような長期任務を与えることはできん」



火影の言葉には一瞬瞳を揺らした。

それを隠すようにそっと目を閉じる。

ゆっくりと息を吐き出し、顔を上げ火影の方を向いた。



「火影様。自分を里の者と認めてくださるなら、自分に里のために働かせてください。里のために働きたいという気持ちは他の忍びに負けるものではないと思っています。どうか、それをくんでください」

きっと火影に鋭い視線を向ける



「う、うぅむ…」

渋る火影にはたたみ込むように言葉を続けた。



「里のためです。火影様。私以外にこの忍は成しえません。今この時を逃せば里は再び危険にさらされますよ」

「しかし…」

「火影様っあなたはこの里を守らなければならない。そうでしょう?自分ならば大丈夫です。…それとも、はやり自分は信頼するには値しない人間ですか?」

半ば脅すようなその言葉に火影は大きく息を吐き出した。



「強引なところはそっくりじゃな」

火影の顔が引き締まる。



「…特別上忍、明日より任につけ。“敵のうちに潜入し情報を得よ”」



「御意」

返事をするとの姿はそこから消えた。



「…まったく」

火影は大きく息を吐き出した。



「頑固で自分の身を挺して無茶をしでかすのはお前にそっくりじゃな。同じ師につくと性格まで似るのかのぉ…そうすると諸悪の根源はワシ、か」

火影は部屋にかかっている写真を見上げ、低く呟いた。















は一旦人生色々に顔を出しいつもの儀式を終えた後、食事に行こうと誘う仲間たちの誘いを断り森へと向かった。

見張りの目をかいくぐり、壁を越えて森へと入る。



「見張りが甘い。ったく真面目にやれよな。何かあったらどうすんだよ。今日の担当は何処の馬鹿だ」

規則を違反する自分のことは棚に上げ、毒づきながら森の中を駆け抜ける。

1本の木の前で足を止めた。



そっとそれに近づく。

その木の幹に手を当てた。

寄りかかるようにして木に体を預け目を閉じる。



幹に頬を擦り付けるとざらっとした感覚がの皮膚に伝わった。

しばらくそうして木に身体を預ける。



「こんなことするって知ったらアンタはやっぱ怒るかな…」

息を吐き出す。



「でも、俺が行かなきゃアンコか紅お姉様にこの任がつくかもしれない。あの2人には行かせたくない」

は木から身体を離した。



「俺はまだ子どもだから大丈夫だとは思うけど…こんなことになるなら無理強いでも何でもあんたに抱いてもらっときゃぁよかったよ」

ふっと苦笑を漏らした。



「でもそうするとあんたは犯罪者になっちゃうか」

木の幹を手でなぞりながらふふ、と笑みを漏らす。

が、すぐその表情は哀しげにゆがむ。

「…こんなこと俺が考えるなんてアンタは微塵も思わないんだろうなぁ。あんたにとって俺はいつまでたっても子どものままだもんな」



木を見上げる。

葉の透き間から星が見えた。

小さく名を呼ぶ。



しかしそれは風に消された。

風が強くなりざわざわと木がなった。



ふっと短く息を吐き出したかと思うと、次の瞬間、の姿はその場から消えていた。










20040422










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