その人物は軽い足取りで人生色々に向かっていた。
黒の短髪、ベリーショート。
一見少年に見えるこの人物は、実は生物学上は女性に属する。
顔はそれなりに整っているほうではあるが、綺麗、とか、可愛いというより凛凛しいというほうが合っている。
胸のふくらみはさほどでもないが、背はこの年齢の少女にしては高く、鍛えられてきたその身体はしなやかでバランスが取れているものであるといえるだろう。
まだ幼く、発達途中のためか女性というより少年と言ったほうが言い当てているような身体。
彼女の名は。
一応、ここ木の葉の里において特別上忍とランク付けされているくのいちである。
「チィーッス!」
勢いよくドアが開きシュタッと手を上げは人生色々に現れた。
「いつも元気ねぇは」
「紅お姉様」
笑顔で迎えてくれた紅にガバッと抱きつく。
「たまには俺のこともかまってよぉ〜」
猫のようにごろごろと甘えてくるの頭を紅は笑いながら優しく撫でる。
一見美人のお姉さまが若いツバメを可愛がっているかのような図。
「あんまり甘やかさないほうがいいわよ」
紅の向かいに座っていたアンコはそう言って団子を口に運ぶ。
「アンコってばいいもん食べてんじゃん」
はヒョイッとアンコの手元の包みから串1本を奪う。
「あ〜っ何すんのっ。返しなさいよ」
がたっと音を立てて立ち上がるアンコを気にすることなくはそれを口に入れた。
「ん〜美味だね。流石アンコが選ぶもんなだけあって美味いねぇ〜」
シシシッと楽しそうに笑う。
「だ〜っアンタってばいつもいつも」
怒りにフルフルと震えるアンコ。
キッと睨みつけて本能の命じるままにの首を絞める。
「グッ…」
「だいたいなんで紅がお姉様で私は呼び捨てなのよぉ。敬意を払って態度を改めなさい〜」
アンコに首をもたれたまま揺さぶられ目を白黒させる。
「だってアンコってば年上オーラ0なんだも〜ん」
「何それ!?本当ムカツク」
紅はその光景を頬杖をつき、笑って眺めている。
「いつもみたく止めてやったらどうなんだ?」
アスマが紅の横に立って言う。
「いいのよ。今回は止めなくても。むしろ止めちゃダメなの」
くすくすと笑いながら紅は言う。
「はぁ!?」
わけが分からんというようにあんぐりと口を開けるアスマ。
煙草が落ちそうになり慌てて手を添え、それを防いだ。
「見てなさい。今日は止めなくったってすぐに収まるから」
確信を持って微笑んでいる紅。
アスマは紅曰くじゃれあっている2人に視線を戻した。
「あ〜わかった。俺が悪かったってごめん、アンコ。アンコオネエサマ今度、絶対何か奢るからっ。ドウカユルシテクダサイっ」
がそう叫ぶとアンコはようやくを開放する。
は座り込んでゲホゲホと咳き込み、息を整えている。
「…絶対よ。約束だからね」
真剣な目でを見下ろすアンコ。
「おう、約束だ」
にっとはアンコに満面の笑みを向ける。
アンコもふっと微笑んだ。
「もう1本食べる?」
「うん、ありがとう。だからアンコってば好き〜」
お互いが笑みを交わした後、2人並んで椅子に座り仲良く団子を食べ始めた。
それは仲のよい姉弟――もとい、姉妹のようだ。
「珍しいな、アンコのヤツが甘いもん人にやるなんて」
ぼそっと呟くアスマ。
「…、近いうちに長期任務に入るのよ」
紅の言葉にアスマは勢いよく紅のほうを振り向いた。
任務は極秘。
それは忍の鉄則だ。
特にA級S級任務にならばなおのこと。
「誤解しないで。直接聞いたわけじゃないわ」
アスマの眉間にしわがよっているのを見て苦笑する紅。
「姿が見えなくなる前、あの子いつもアンコのお菓子を奪って…ってまぁお菓子を奪うのはいつものことだけど、今度おごるって約束するの」
「…」
「絶対帰ってくるからってことなんでしょうね。忍としては優秀なんだろうケドね、あのこはまだ子どもなのよ」
「…そうか」
アスマは上方に白い煙を吐き、担当する下忍とさほど年が変わらない少女へと視線をやる。
「あ〜アンタ何食べてんのよっ」
アンコが叫んだ。
「団子」
にっこり笑っては持っていた団子を口に入れた。
「1本って言ったでしょっ。返しなさいよ」
「そんなこと言っても、もう食べちゃったも〜ん」
「アンタってヤツは〜」
「ぐっ…く、苦しい〜」
再びアンコに首を絞められ揺さぶられる。
「アイツラらしいなぁ〜」
口元に笑みを浮かべるアスマ。
そしてそれはすぐに、ん?と怪訝な顔へと変わった。
「紅」
横で微笑みながら喧騒を見守っている紅の名前を呼ぶ。
「ん?」
紅は視線だけアスマに向けた。
「…がアンコの菓子奪うのはいつものことなのになんでお前は今日だって分かったんだ?」
アスマは訊ねた。
「1週間以上の任務前ってあの子のいつも以上に激しいから」
くすくすと笑って答える紅。
「スキンシップがセクハラじみるのよねぇ」
やたら胸触りたがるのよ、とにっこり笑う紅にアスマは煙草を落としそうになる。
アスマは視線を騒いでいる2人に向け大きく息を吐き出した。
なんと言っていいかわからず、それを誤魔化すように頭をガシガシとかいた。
紅はそれを見て面白そうに笑った。
数日後、紅の言葉通りの姿は人生色々で見られなくなった。
20040214
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