「あ〜もう、イビキ〜ちょっと休ませて〜」
木の葉の拷問部屋の隣にある小さな個室。
通称・イビキ部屋。
実益とイビキの趣味に支配されたその部屋を訪れるのは彼と同趣味かよっぽどの変わり者。
よほどの事がない限り寄り付きたくない場所…というのが一般的な里の忍の見解、なのだがはひそかにここの常連だったりする。
「か?入れ」
部屋の主によってドアが開けられ招き入れられる。
「疲れたぁ〜。もうイビキ何とかしてよ」
「何を、だ?」
来客のためにお茶をいれるべくお湯を沸かしながらイビキは尋ねる。
「アンコだよ、馬鹿アンコ。本当しつこくってさぁ」
慣れた様子で部屋の奥に進み、は古いソファーへと倒れ込んだ。
「そうか」
「そうか、じゃないよぉ。顔合わせる度に…ってか暇を見つけては追いかけてきてうるさい、うるさい」
はぁ〜と大きくため息をつく。
イビキはそれを見て口元に笑みを浮かべた。
「話してやればいいだろう。下手に隠すからアイツもムキになって追いかけてくるんだ。逃げれば追う、そういうもんだろう?」
「簡単に情報を漏らせだなんて情報の機密の重要性を唱える拷問・尋問部隊長様のお言葉とは思えねぇ言い方だな」
ソファーにうつぶせに横になったまま顔を上げ、はいびきの顔を見上げる。
「重要機密というわけではないだろう」
「少なくとも禁術の巻き物以上だよ」
「大袈裟だな」
「大袈裟なんかじゃない。俺にとっては最重要機密と言っても過言じゃないの」
「昔は大声で叫んで公言していたじゃないか。好きだ、だの、絶対結婚する、だの」
「うるさい。昔は昔、今は今だろ。この年齢になってそんなんできるわけないだろっ。…あの頃はまだ子どもだったんだよ」
「今でも子どもだろ。思っていることを素直に口にできるのは子どもの特権だぞ」
「…イビキっていいヤツなのにあんまりモテない理由が分かった気がする」
ソファーに臥せったまま視線だけじとっと睨む。
「…」
からかいすぎたか、とイビキはそそくさ、と視線をからはずした。
それを見ては大きくため息をついた。
「昔はそうだったかもしれないケド今は無理だよ、そんなん」
ソファーにおいてある自分専用となりつつあるクッションをギュッと抱きしめる。
「…あの方以上の男を見つけたのか?」
「えっ?」
「言ってただろ。あの方以上のヤツを見つけない限り諦めるつもりはないから観念して結婚しろって。それ以上が現れて今度は公言するのが憚られる、ということではないのか?」
「違うよ…アイツ以上なんていない。何打そんな子と言うんだよ、イビキ」
「…根拠はない。何となくそう思っただけだ。…まぁあの方以上となると難しいだろうがな」
色々な意味で…と心の中で呟くイビキ。
「…アイツがさ俺をそういう風に見てくれないのは分かってる。俺自身恋愛ってヤツなのかそうでないのかよく分からねぇし。…年齢相応の恋愛しろってアイツは説教たれるけど…俺の一番はやっぱりアイツなんだ」
顔をクッションに埋める。
泣き出すのか、と思いイビキはに新平下に視線を向けた。
次の瞬間、クッションがイビキの顔面に向けて飛んできた。
「…危ないな」
イビキはそれをすばやく受け止めた。
「ムカツクよなっ。自分がそばにいろって言ったくせに置いていきやがって。あのときから俺はアイツ一筋だって言うのにっ。浮気すんぞ、浮気」
うがーっとソファーから勢いよく立ち上がり頭を抱え叫ぶ。
「…聞き飽きたぞ、その台詞」
イビキはクッションをソファーに放ると沸かした湯をカップに入れ少し冷ます。
「今度という今度は本気。イビキ、浮気しよう」
「断る」
「うわっ。俺ふられた!?俺結構イビキ好きなのにっ」
「それは仲間として、だろう?」
お茶をいれカップをに差し出した。
「…」
「ほれ」
「…」
は拗ねたように口を尖らせそれを受け取った。
「ヤバいよなぁ〜。このままじゃ俺、一生独身かも」
紅茶を一口のみはため息をついた。
「そうなる前に責任をとってもらうんだな、いい女になって。いい女になったら傍にいてもらえるんだろう?」
「無理。俺にはそんな要素全くねぇもん」
「そんな事ないさ。今はまだ眠ってるだけで」
「そんなもんかねぇ〜」
「…多分な」
「…」
イビキを恨めしげに睨む。
「冗談だ」
カップに口をつけイビキはすました顔で言う。
「どこら辺が?イビキどこが本気でどこがそうでないのか分かりにくい」
じたばたと手足を動かす。
イビキは軽く肩をすくめた。
「…。とにかく、そんなもんなんだよ。女ってのは化けるもんだって昔から決まってる。絶対変わるさ」
ふっと笑みをこぼすイビキ。
「化けるって…なんだよ、ソレ。訳わかんねぇ」
カップを近くの机に置くとは再びソファーに横になった。
20040422
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