「あっごめん」
目を開け、いつの間にか寝てしまっていたらしいことに気づき、アンコは目の前の相手へ謝罪の言葉を口にした。
ゆっくりと頭を起こす。
時計を見るとどうやら数十分寝てしまったらしい。
「…いや」
目の前のかわいい妹分は冷たくなってしまったつまみを箸でつついていた。
「そんなに飲んだつもりなかったんだけどねぇ」
照れ隠しのように笑みを浮かべるアンコ。
「…」
自分と視線を合わせようとしないにアンコは小さく首をかしげた。
「ん〜怒ってる?」
「…」
の顔を覗き込むアンコ。
は返事を返さない。
「悪かったって。ほら、なんか頼みな。飲み直しよぉ〜」
残っていたグラスを空にして新たに飲み物を頼もうとメニューを開く。
「…あ〜もう、本気、やめとけ」
はアンコの持つメニューを取り上げ、自分の後ろにそれを置いた。
「ちょっ…むぐぅ」
メニューを取り返そうとしたアンコの手をそのまま自分の方に引いて、反対の手で口を塞ぐ。
「しめてください」
の腕から逃れようとじたばたしながら恨めしげな視線を向けてくるアンコを無視しては店員にそう告げた。
アンコの口を封じたまま、当然のように、アンコの財布から数枚の紙幣を店員に渡し会計を済ませ、踏みとどまろうとするアンコを引きずるようにしては店を出た。
自分より頭ひとつ大きな相手を
夜風が頬を撫でてからはようやくアンコを解放した。
「何すんのよっ」
「っと」
開放するのとほぼ同時に飛んできた拳をギリギリのところでよける。
「まだ飲み足りないのにっ。次ぎ行くわよっ。次っ!」
「もうやめとけって」
「口応えすんじゃないのっ。行くわよ」
引きずられるようにはアンコに連行されていった。
店を出ると同時にはアンコから手を離した。
酔いがまわっていたアンコの体がゆらっとよろけた。
身体を支えるために傍の壁に手をついた。
「もうふらふらじゃん。明日も任務入ってんだろ?」
どこかとげを含んだの言い方にアンコは少し顔をしかめる。
そんな言い方するなんていい読経してるじゃないの、という意味をこめてアンコがをにらみつけると、珍しくもアンコを睨み返してきた。
てっきり謝ってくると思っていたアンコは少し驚いて、の顔をまじまじと見返す。
はその視線から逃れるようにふいっと顔を背けた。
これは本格的に機嫌を損ねてしまったらしい。
自分に背を向けてむすっとしているを見てアンコは考える。
未成年であるが居酒屋で一人暇を潰すのはかなり嫌だっただろうしもしかしたら周囲の人にいかぶしげに見られた…のかもしれない。
そう考えた時点で、アンコの頭の中ではそれらは仮定から確定へと変わっていく。
やはり、ここは年上の自分が折れてやらねばならないだろう。
よしっと気合を入れなおしてに歩み寄る。
「〜」
「うわっ」
がばっと後ろから抱きついた。
じたばたと暴れる頭に顎を乗せ、自分より小さな身体をすっぽりと腕の中に収める。
抱く腕にほんの少し力を入れるとは静かになった。
「寝ちゃったのは悪かったって謝ったでしょ。いい加減機嫌直しなさいよ」
上から覗き込むようにの顔を見るアンコ。
を抱えたままゆらゆらと左右に身体を揺らす。
はチラッと上目遣いにアンコに視線を向けたがすぐ視線をそらしてしまった。
「〜」
「…」
返事をしようとしないにアンコは小さくため息をつく。
「ほ〜らぁ〜」
はアンコを見上げる。
「アンコは…」
そう言っては俯き一旦口を閉じた。
アンコはせかすことなくが言葉をつむぐのを待つ。
「アンコは俺のこと好きだよな?どっかいっちゃったりしないよな?急に消えちゃったりしないよな?…ずっと、ずっと俺と一緒にいてくれるだろ?」
「馬鹿ね」
ぴんっとアンコはのオデコを弾いた。
が顔をあげた。
「な〜に当たり前のこと言ってるのよ」
「アンコ…」
「長期任務が入ってもちゃんと帰ってくるし、アンタが嫁にいってもずっと傍にいてあげるわよ。あんたは私の可愛い妹分なんだから」
ぐりぐりと乱暴に頭を撫でてやるとはようやく笑顔になった。
「…行こう」
はアンコの腕から出てアンコの手を取った。
「えっ?ちょっ…」
戸惑うアンコには笑顔で振り返った。
「飲みなおすんだろ?俺の部屋提供するからさ店はやめて部屋で飲もう?店でつぶれられたら連れてかえるのきついからさ。今日は俺の家に泊まってけ」
アンコはぽかんと口を開けてを見ていたが、にっと口元に笑みを浮かべた。
アンコもにいたずらっぽい笑顔を返した。
「部屋にお酒ストックしてあるの未成年?」
「あ〜…ない、かな」
「じゃ、たっぷり買ってかないとね。あんたの部屋ならそのまま寝ちゃっても平気だし〜」
「ほどほどにしとけよ。明日も任務入ってんだろ〜…?」
「大丈夫。私、二日酔いはめったにしないから。ほら、行くわよっ」
「…お手やわらかに〜」
はアンコに引きずられるように夜道を連れられていった。
(Fin.)
2004.10.10.
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